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春はリルケで始まる

3月になった。暖かな日と冷たい日が交互にやって来て、少しずつ空気が湿り気を帯び始めた。約束された生命が踊り始めるこの季節になると思い出す、一編の詩がある。

おののくに先立ちて  ひたすらに聴き入りて  静かなり  沈黙の中に 吾は繁りて  あまたなる梢もて  花咲かんとす  ものみなとリズムなして  舞い狂い歌わんがため 〜

大学生の頃に母からもらった手紙にこの詩が書いてあった。母の手紙には、続けてこんなことが書いてあった。

これは、志緒と拓緒(弟)の誕生に際し、耳もとに響いていたリルケの詩です。二人の名前もこの詩句に由っています。もし赤子が、たんじょう以前に自分の意志をもてたとしたら、このような覚悟と準備でこの世にうまれ、生の百態を展開させようと思うに違いありません。

・・この詩と母の言葉のおかげで、私はこれまで随分力づけられてきたと思う。冬の静けさも好きになり、春も大好きになった。そして生まれることや生きることって、期待と意欲に溢れたことなんだと、この先には太陽みたいなものがあって、力を与えてくれるんだと、それには、覚悟と準備が必要なんだと思うようになった気がする。

春は森羅万象、私たちもむくむくとしなやかに動き始める季節。これからの一周りがとても楽しみ。


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