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脳腫瘍が見つかった日。

「問題ないよ。」と帰るはずが。

日の出とともに目覚めた息子に起こされ、息子を遊ばせながらリビングのソファで横になって早朝の情報番組を見ていると、突然視界がピカピカ・チカチカして、テレビが見にくくなった。

目を瞑って少しだけ落ち着いたかと思えば、次は何もできなくなるレベルの偏頭痛。いわゆる「閃輝暗点」という症状だということが、のちに調べて分かった。

夫を仕事に送り出す時もしんどくて動けなくて、いつもは玄関まで見送りに行くのに行けなかった。幸いにも、そのあとは息子の朝寝の時間と被ったから、私も一緒に寝たらだいぶ体調が良くなった。

元々頭痛持ちでもなんでもないから、鎮痛剤を飲んで少し寝たら治まったけど、それが数日間続いた。

閃輝暗点をネットで調べるとほとんどの原因は睡眠不足やストレスとあり、「きっと原因は産後の睡眠不足やろうなぁ」なんて思っていたけど、【脳梗塞の可能性がある】なんて言葉を目にしたから不安になって、脳神経外科を受診することにした。

Googleの口コミを元に選んだ、初めましての綺麗な病院。
親しみやすそうなゴリゴリ関西弁ドクター(私も関西人)から、一般的な頭痛の原因の話を聞いて、いざMRI検査へ。
「このあと夫と息子と何して過ごそうかなぁ」「お昼ご飯何食べよっかなぁ」なんて考えながら、約20分の検査を終えた。


そして検査の結果、まさかの脳腫瘍が見つかった。


え、嘘やろ?私まだ30歳やで。
しかも、昨年11月に生まれたばかりの7ヶ月になる息子がいる。

MRI検査して、「問題ないです、綺麗な脳してますよ〜。」と診断されて、頭痛に効くお薬を処方してもらって、夫と息子が待つ車で一緒に帰るはずやったやん。


診断された瞬間からの記憶が正直曖昧で。
素人目でもわかるくらいはっきりと写った腫瘍の影を見ながら、すごく冷静を装って話を聞いてたけど、マスク越しでも表情が全て消え去った顔をしていたと思う。

先生からは大きな病院で造影剤を使用したMRI検査を勧められて、紹介状を書いてもらうことになった。
診察室の中で響く、「ごめんなぁ。急でほんまびっくりしたやろ。ごめんな。」という先生の声掛けだけを覚えてる。

診断を受けて。

息子と買い物して待っててくれる夫に、「ちょっと大事になってしまった。腫瘍が見つかった。」とだけ連絡して、迎えに来てもらった。

夫と息子の顔を見て、正直すごくホッとした。さっきの出来事は夢ちゃうかな?と思いたい。
話を聞きながら、「大丈夫、大丈夫。」と運転しながら後部座席の私の手を握ってくれる夫。

キラキラした笑顔で私を見てくれる息子の顔を見ると泣きそうになったけど、グッと我慢した。

車中が深刻な雰囲気にならないように、あえて明るく夫に話しかけた。

「なんか、ごめんな。こんなことになるとは思わへんかったわ!」
「脳腫瘍ってなんで出来るんやろな?!」
「早く見つかって良かったわ、早期発見早期治療やな!」

そんなことを言いつつも、心の中では「なんで私なん?」という考えで頭がいっぱいやった。予想外すぎて怖くて、不安でたまらなかった。

お昼ご飯に好きな定食屋さんのお弁当をテイクアウトして、軽くドライブしながら帰路に着いた。


一人になると。

なかなか都合が合わず、次の検査の日までは少し日が空く。
一人になるととてつもない不安が襲ってきて、笑顔でいられなくなる。

家族計画のことや、引越しのこととかいっぱい考えないといけないことがあるのに、なんで今なん?!
ずーっと、うっすらため息をついている。

診断を受けた日の夜はなかなか寝付けなかった。

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