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物理的な空間という意味での「場」のコントロール


レストランのスタッフは、相手を見て案内する席を決めているらしい。

良く言えば「その日、誰と、何のために食事をするのか」に合わせて最適な席を決めてくれるということでもあるし、悪く言えば「うちにふさわしくない」と思われた客はしょぼい席に案内されるということでもある。

…ということを本で読んで知ったのだが、実はこれ、一流のビジネスパーソン(オフィスワーカー)にも当てはまるなと思った。仕事ができる人は、訪問者をどの部屋に案内するのかを、ちゃんと考えているのである。

高級なソファーが置いてある応接室が「いい会議室」とは限らない。

アイデア発散の場なのか、それとも何かを詰めて決めていかなければならない日なのか。後者の場合、地下にある天井が低くて窓がない部屋の方が適していることもある。

他にもホワイトボードはあるか、内線電話が置いてあるか、空調の微調整がしやすい部屋か、ホストが資料を取りにいきたい時に自分の席に戻りやすい場所にあるか、ゲストとホストが向かいあわせに座るのか、向かいあわせだとしたらその距離はどれくらいか……。こういった物理的な空間という意味での「場」を決定づける要素はたくさんある。

どれが「いい」とは決まっていなくて、どの要素も、その日、誰とどういう場を作っていきたいかで決まるものだ。何も考えずに(せいぜい人数だけを確認して)あいている部屋を押さえておく人もいれば、たかが「会議室を押さえておくこと」でも、ここまで考えて仕事をする人もいる。

デートでもよく「向かいあわせの席はよくない」「カウンターかL字に座れるところがいい」と言われているが、実際はそうとも限らないと思う。その人とのそれまでの関係性や出会い方、デートが決まるまでの流れなどによって、最適な席というのは異なる。(まあ、大まかな指針としてはたぶん向かいあわせじゃない方がいいのでしょうけど)

なぜこんな話をしたのかと言うと、場を作ることをもっとすればいいのにと思うことが多いからだ。もちろん「場を作る=コミュニティを作る」ではない。ここまで書いてきたように、場を作るというのは最適な物理的空間を用意するということだ。

例えば上司との関係がうまくいっていない時、親や恋人に言いにくいことを言う時、プロジェクトのミーティングを行う時、昔からよく知っている先輩に何かを相談したい時……。それぞれに適した「場」というものがあり、これをいかにセッティングするかで相手のモードがかなり変わってくる。

基本的に「何かのついでに言う」とか「こっちの願望をちょい出しして気づいてくれることを期待する」のは悪手だと思う。そういうやり方でうまくいった例はほとんど聞いたことがない。逆に、改めてちゃんと「場」を用意し、そういうものだと(無意識にでも)相手に知らしめた上で伝えると、意外とあっさり関係が改善したり相手の本音を引き出せたりすることがある。

なんかちょっと困っていることがあるなら、物理的な空間という意味での最適な「場」を用意してみてはどうだろうか。もちろん部屋(閉じた空間)である必要はなくて、場合によってはカフェの広いテラス席で、あるいは散歩しながらというのも悪くない。

僕たちは相手の脳みそを直接触ることはできないけど、物理的な空間をコントロールすることで相手の脳みそに何かを働きかけることくらいはできる。そういう小さな作用の積み重ねが人生を大きく変える…みたいなことはよくある。



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