近所の町中華は心安らぐ

 自宅の近所に、よく行く中華料理店がある。店内はこざっぱりとした清潔な雰囲気であるが、驚くほど安くて、そこそこ美味しく、かなりの分量がある、典型的な「町中華」のお店だ。ラーメンや炒飯、カニ玉といったお馴染みの中華料理だけではなく、カツ丼やカレーなどの料理も揃っていて、ますます町中華らしい。

 この店の料理は、横浜中華街の満漢全席や台湾の屋台料理のように、とても感動した美味しさではない。おそらくミシュランガイドに掲載されることはないし、わざわざ遠方から訪れるほどの価値もないだろう。しかし、感動するような美味しさではないが、毎日食べても飽きがこない美味しさがある。料理を作るのが面倒になったときによくお世話になっており、どの料理を注文しても安心する美味しさがある。そこで、ほっと一息をつくことができる。

 この店はどの時間も賑わっている。お昼に行くと、現場職のおっちゃん達が大盛りのラーメンや丼をかき込むように食べていて、夕方に行くと、家族連れが唐揚げやオムライスを囲みながら団らんのひとときを過ごしている。それぞれのグループが、談笑したり、美味しそうな料理を食べながら楽しい時間を過ごしていた。そしてどちらの時間にも、スポーツ新聞を読みながらちびちびとお酒を飲んでいるお爺さんがいる。その楽しそうな様子を見て、こんな晩年も悪くはないと感じた。

 こんなご時世だから、なかなかお店に行き難くなってしまった。一人で黙々とラーメンか炒飯を食べるくらいなら大丈夫ではないかとは思うが、なかなか行くことをためらっている。この騒動が過ぎた後、また訪れようと思うが、どうか閉店しないで欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?