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風雲篇(Ⅲ)

筆者‐大芝太郎(2006年-志信会公式サイト「大西信弥物語」に連載)】

>>>前号より続く

26.言葉の力

 言葉の持つ力は時に、メッセージをやり取りした時点では、発した人間にもそれを受け取った人間にも想像もできないほど、大きく人の生き方を変えてしまうことがあります。そして、運命を変える力を持つのが、言葉の力なのかもしれません。

小池さんの一言は、大西が日本を飛び出してからずっと、自身でも気づかないうちに探し求めていた使命そのもので、大西の心の真ん中に飛び込んできました。大西は自分が何かに突き動かされるような不思議な感覚を抱きながらも全身に力がみなぎり、快感と充実感に満たされていました。

大西は、『小池さんの孤独な戦いを支えることができるのは、「あなたには何ができるのよ!」という問いを真正面から受け止めることのできた自分しかいない』と一人意気込んでいました。
小池さんを精神的にも、実際の政治・選挙活動をも支える「機動する組織」の立ち上げを決意します。そして、大西が震災以来自分の使命を求めて所属した組織の中から志を持った信頼できる若手経営者を自宅に招き、「小池百合子後援会青年部」構想を朝まで話し合います。
大西がこの組織を立ち上げるにあたり、どうしても参加してもらいたかった人間が木挽司氏です。

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-写真- 木挽司氏と共に(2000年・41歳)

 木挽氏は、それまで政治に関しては、自分自身の個人的な信条や好みを鮮明にしないことが自らの最大の強みであると信じていたし、公言していました。
(地方で地元密着型の会社経営をしている経営者にとっては、政治的スタンスを明確にすることは会社運営上のリスクを背負い込んでしまうことにもなりかねないのです。)
大西も環境事業という地方自治体と深い関わりを持つ仕事を家業としていたため、木挽氏の心情はいたいほど分かっていました。
しかし大西は木挽氏の中に、あきらめることで自身を納得させ均衡を保とうとしている「大切なもの」を感じ取ります。大西はその大切なものを横に置いたままにしている木挽氏の中に、いつ崩れ落ちてしまってもおかしくない均衡の危うさを感じていました。
そして、木挽氏の器用に何でもこなせてしまう恵まれた才能を自分に、小池百合子後援会青年部で発揮してほしいと心から願っていました。
大西は木挽氏をサブリーダーとして擁立するため、何度も自宅に招き、根比べの様な話し合いを延々と続けていきました。
(大西は「良い」と信じたことをあきらめることはなく、木挽氏も最後には「やらせてください」と言うまで青年部構想に心酔していきました。被害者の会、初期メンバーの誕生です。)

27.渦の中で

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-写真- エルコンドルパサーの制作でウースター社へ(2000年)

 後援会青年部設立総会の日取りも決まり、ゲストには当時小池さんが所属していた自由党の党首、小沢一郎氏を招聘することに決定しました。

大西は昂揚した気分のまま、ロイヤルウースター社他数社との交渉のため欧州に向かいました。 一週間の欧州出張を終え、関西国際空港のバッゲージクレームに向かう長い回廊の途中で、大西がいつものように携帯電話の電源を ON にしたとたん、着信音が突然なりだしました。大西はその偶然に、なぜか悪い胸騒ぎを感じながら電話を受けました。

「今朝、小池さんが自由党を離党して、 新党に合流することになったのよ」 小池さんの秘書に告げられました。

「どういうことですか?」

「どうもこうも、そういうことだから・・・説明は今夜行われる役員会でいたします。」

事態が飲み込めないまま大西は、急遽開催された役員会に空港から直接かけつけていました。

「衆議院で解散総選挙があります。小池はこの選挙にあたり、与党候補として出馬し小選挙区で勝つことで発言権を得ることで自身の政治信念・政策を国策に反映したいと考えています。」

小池事務所からの説明にその日集まった面々は納得と安堵の表情を浮かべていました。与党で戦うことは、選挙戦を優位に展開しやすいことは事実ですし、自身のビジネスとの接点を見いだしやすいという経営者としての当然の計算も成り立っていたのだと思います。
しかし、小池百合子という代議士の『信念のために孤独な戦い挑む』姿に突き動かされていた大西は、「筋論かも知れないけれど、小沢党首と行動をともにすべきではないか」と意見を述べますが、すでに大勢は決した後で、議題にもならず冷たい視線を受けただけでした。そしてその日の議題は、小沢党首の代わりに誰を総会のゲストスピーカーとして招聘するか、が主題となっていました。

新世紀総会2

-写真- 小池百合子後援会青年部を発足(2000年・41歳)

 小池百合子後援会青年部の発足から2ヵ月で選挙活動に突入し、大西は小池さんと一緒に兵庫6区各地区の事務所開きや各種団体主宰の会合に顔を出します。徐々に独自のパフォーマンスを発揮していった大西は、小池さんを伴い、地元有力企業のトップをアポなしで訪ね、挨拶を重ねていきます。

次号に続く>>>


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