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デジタルトランスフォーメーションの実現には、チェンジエージェントの存在が重要

ここ最近話題のデジタルトランスフォーメーション。その実現には、企業内における、チェンジエージェントの存在が重要だと考えています。

思うように進まないデジタルトランスフォーメーション

経済産業省のDXレポートが起点となり、デジタルトランスフォーメーション(以降DX)の必要性が国、企業双方において認識されるようになりました。

経済産業省のガイドラインを要約すれば、DXとは「デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるように自社の競争力を高めていくこと」と定義され、そのガイドラインの中では、経営トップのコミットメントや働き掛けといった、マネジメントの側面と、それを実現するIT基盤の在り方の側面が指摘されています。

しかし、2019年11月のIDC.JAPANの報告では、国内企業の2割で推進意欲が減退するなど、決して順調に推進が進んでいるとは言い難い状況です。

多くの企業がビジネス変革の必要性を感じ、その一つとしてデジタルトランスフォーメーションに取り組む中、何故思ったように推進が進まないのでしょうか?

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?

本来、DXとは、「企業のプロセス全体をデジタル化し、新たな付加価値を創出する活動」という、全社レベル、企業そのものの在り方を変革する概念となります。
しかし、実際の現場では、「既存サービスの付加価値強化や、生産性の改善など、部分的なデジタル化」である、デジタライゼーションも、DXと同義として捉えられている状況があります。

実際2019年7月の経済産業省レポート「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」においても、「推進企業の約 8 割の企業が「業務の効率化による生産性の向上」を挙げており、DXに取り組む本来の危機意識である「新規製品・サービスの創出」への取り組みは 5 割弱に留まっている」と報告しています。

DX以前にデジタライゼーション自体の推進が必要な状態となっており、企業としては、これらもDX推進の一部として、活動に取り組んでいる状況です。

デジタルトランスフォーメーション推進を阻む障壁

経済産業省のDX推進ガイドラインにおいては、経営トップのコミットメントやリーダーシップなど、トップの強力な関与と推進を求めているわけですが、それは必要条件の一つであり、現実的には以下の3つの障壁がある事で、推進が困難になっているのでは?と個人的には考えています。

・そもそもデジタルの専門家ではない経営トップが、デジタル化による具体的な顧客体験や企業の在り方を創造する事は困難と思われる。

・実際にそれを体現するのは「現場」であり、そこには「企業文化や過去の成功体験」という大きな壁が立ちはだかり、トップダウンだけでは突破できない。

・DXにより何が変わるのか?を関係者の誰も体感・想像できず、取り組み自体に疲弊していく。

デジタルトランスフォーメーションが、単なる「経営戦略」や「企業統治論」ではなく、企業の根本的な体質そのものの変革を目指す取り組みであるが故に、企業で働く人材の意識や行動様式そのものの変革が求められます。

このため、高名なコンサルタントに絵を描いてもらったとしても、また、「DX推進組織」なるものを設置したとしても、思うような成果が出ない。つまり「トップダウンだけでは限界がある」と考えています。

チェンジエージェントの必要性

経営トップの皆さんは、我々では想像もつかないようなプレッシャーの中で、自社の変革を強く意識しているものです。だからこそ、DXといった取り組みにも着手されてるのだと思います。

重要な事は、経営者だけでなく、現場を含む組織に所属するメンバーが、「デジタル化による顧客体験の創出とはこういう事か」という体感を共有する事であり、また、その取り組みが「現実の生産性や収益に直接インパクトを持つ」という納得感です。

そして何よりも、それらを生みだせる状態になるまで、トップダウンと同時に、「現場や経営陣の意識を変革していく、触媒となる役割」の存在が重要です。この触媒となる役割、すなわちデジタルトランスフォーメーション推進のエンジンとかるのが、「チェンジエージェント」という存在であると考えています。

チェンジ・エージェントという言葉が日本で使われるようになってきたのは、ピーター・ドラッカー氏が、著書『ネクスト・ソサエティ』で、「組織が生き残り、かつ成功するには、チェンジ・エージェントとならなければならない。」と説いたことがきっかけと言われていますが、現在では、「企業に変革をもたらす触媒の役割」と言い換える事ができます。

デジタルトランスフォーメーションへの変革のリーダーは経営トップである事は間違いないのですが、そのトップを支え、ボトムアップで現場の意識を変える触媒となり、デジタル化による顧客体験と企業利益創出の、具体的な事例を示し、トップと現場が、共通イメージとしてデジタルトランスフォーメーション後の姿を共有できるようにするのが、DX推進におけるチェンジエージェントの役割であると考えます。

デジタルマーケターはチェンジエージェントの役割を果たす必要性

私を含む、事業会社における「デジタルマーケター」の役割は、まさにこの、「チェンジエージェント」としての役目を、DX推進の中で担う事ではないでしょうか?

経営トップとの信頼関係や、DX推進に対するトップのコミットメントはもちろん重要ですし、必須の条件にはなると思いますが、DX推進を阻む壁としてよく言われる「経営幹部の理解」や「現場の理解不足」、「POC疲れ」といった事に、「経営トップの関与が足りない」「経営トップのリーダーシップが不足している」と嘆くのでは無く、我々が、長期的な目線で、地道に少しづつ現場関係者の意識を変える働きかけを行っていき、小さな成功ループを創出していく事で、組織風土を変革していく事が、重要であると考えています。

デジタルトランスフォーメーションは、抜本から組織風土や経営の在り方を変革する、大きな企業改革です。その改革が一朝一夕で実現する事はありません。

3年、5年といった長期の取り組みが必要となる中、経営トップだけでは無く、現実的にその取り組みの中心人物の一人となる、デジタルマーケター自身が、チェンジエージェントとなるという覚悟を持って、推進の担い手になる事が求められると思っています。

・・と、未だデジタルトランスフォーメーションの道半ばにあり、チェンジエージェントとしての役割も果たし得ていない中、偉そうに書いてしまいました。自分を叱咤する意味で書いておりますので、「お前が語るな!」と思われる方は、そっとスルーして下さいまし。

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