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マーケターとして事実を正しく捉える事ってやっぱり重要だなと思った話

1年ほど前に『FACTFULNESS』という本が大変話題になりました。その本を読んだ時にも感じたのですが、マーケターとして前提に囚われず事実を正しく捉える事が本当に大事だなと、最近あらためて思いましたので、その事を書きたいなと。


『FACTFULNESS』の衝撃

みなさま、『FACTFULNESS』はお読みになりましたでしょうか?自分は1年程前に読んだのですが、その際、結構な衝撃を受けました。

その衝撃とは、「自分、思ってたより、全然、世界の事わかってない!」という衝撃です。作者の言葉を借りれば「チンパンジー並み」にしか、わかっていませんでした。正直、マーケターとして少し凹みました。

『FACTFULNESS』の冒頭では、次のような、世界の事実に関するシンプルなクイズが13問紹介されるのですが、これが全く当たらないんですよね。世界の事実を自分は全く見えてなかった、その事を思い知らされます。

質問1:現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A 20%
B 40%
C 60%
質問9:世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A 20%
B 50%
C 80%

書籍をお読みになった方にとっては、「あー、これね。」という質問なのですが、初見で自分は全く当てる事ができなかったです。

書籍の中では、2017年、日本を含む14カ国に住む1万2000人を対象にこのクイズについての調査を実施したところ、平均正解数は12問中たったの2問。すべて三択式なので、仮にチンパンジーへ同じクイズを出題したとしたら、正解率はおよそ3分の1、つまり、12問中4問程度は正解できるはずだと作者は指摘しており、人間の正解率はチンパンジー以下。そして自分の正解率もチンパンジー以下という結果でした。

ちなみに、上記の質問の答えは、質問1も9も共に「C」でした。世界は自分が思っているよりも素敵な世界のようで安心しました。全ての質問はコチラでお試しできるので、ご興味のある方はぜひ一度、テストをしてみる事をおすすめします。

思い込みや前提を疑う事の重要性

『FACTFULNESS』のクイズに、自分も含め何故多くの人が正解できないのでしょうか?それは当然ですが、そこに何かしらの思い込みがあるからです。自分の中での常識がアップデートされておらず、モノゴトを考える際に、思考停止に陥ってしまっているとも言えます。

そしてマーケターとして一番危険だなと感じるのが、「自分は顧客の事をわかっている、知っている」という思い込みです。「そんな思い込み、自分はしないよー」という自信がある方なら幸いですが、自分自身は正直あまり自信がありません。

そう感じたきっかけの一つが、2017年頃に新しいサービスの展開をトライアルしようという事があった際に、結構な先進的なサービスなので、情報リテラシーや、新しいテクノロジーの生活への需要性が高い県で実施しようという話になったのですが、真っ先に思い描いたのが「東京」や「大阪」といった都市でした。

そこで、そもそも情報リテラシーや、新しいテクノロジーへの需要性が高いってどういう事かをチームで話し合った結論として、「スマートフォンの普及率がきっと高いはず」という仮説を立てたのですが、その結果調べてみると、「あれ?」という結果に。

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「滋賀県、福井県、意外に高い・・・。」正直全くノーマークの存在でした。しかも福井とかだったら、CMの放映も単独県でできるので、テストマーケするにはうってつけかも。

単に自分たちが勉強不足なだけだったかもしれないのですが、真面目に調べて見るまで全く知らない事実でした。

そしてもう一つ象徴的だった出来事があります。

アプリのプッシュ通知の許諾率を上げるには?

これももしかしたら、アプリ界隈のマーケターの皆さんにとっては常識なのかもしれないのですが、新しいアプリをリリースするにあたり、プッシュ通知の許諾率が結構な生命線でして、そのUXを構築するにあたり、アプリのUXについて書かれているブログサイトを読み漁り、UX専門のコンサルにも散々ご相談し、自信を持って世に送り出したのですが・・・。

アプリのプッシュ許諾率が、どうやっても「40%」を超えず。

Androidはもちろん強制許諾なので100%なのですが、iOSさんの許諾率が40%以上にビタ一文上がらない。

自分たちが作成したUXは、まさに「王道中の王道」を行ったつもりでして、以下の鉄則を愚直に体現したつもりです。

鉄則① アプリ初回起動時に、何も考えずに許可ダイアログを出すのはダメ
鉄則② プッシュ通知によって得られるメリットを明示してから出す
鉄則③ 一度アプリを体験させてから許可ダイアログを出す

「アプリの初回起動時にプッシュ通知の許可ダイアログをいきなり求めても、メリットが分からないのでプッシュ通知をオフにしまいがち」という、各ブログや解説記事のおっしゃる事は最もでして、肌感覚的にもピンとくるモノだったので、その点は疑うべくもなく、様々なABテストを繰り返したのですが、残念ながら数値は悲しい程動きませんでした。

で、ある日・・。「一回、何も考えずに、アプリ起動時に、いきなり許可ダイアログ出そうぜ」という話になりました。

なぜなら、許諾率の目標設定を行う為にも、一度「プッシュ通知許諾率の最下限値」を知りたかった事が、理由の一つです。その結果・・・。

iOSのプッシュ通知許諾率が「40%」から「60%台後半」に爆上がりしました。

「あれ?そんなバカな・・・」と思い、「うっかり許諾しちゃったのかも?だったら、プッシュ通知の開封率や返信率も下がっちゃうよね」と思ったのですが、開封率や返信率は殆ど変化しませんでした。

もちろん、アプリの性格によっては、異なる結果になる事もあると思いますが、ここで感じた事は、「マーケティングで常識と言われている事も、自分達に直接当てはまるという訳ではない」という事です。

全ての常識や前提を疑う事は、コスト的にもヘルシーでは無いですし、先人の知恵は最大限活用していくべきです。が、自分達にとって重要なポイントについては、やはり前提や常識を鵜呑みにせず、自分の目で確かめてみる、事実をちゃんと把握する事が重要だと、強く思った出来事でした。

「顧客の事実」の把握にはデータと行動観察がある

マーケターとしては、まず自分達は思ったよりも顧客の事がわかって無いかもしれないという謙虚な気持ち、すなわち「無知の知」を持つ必要があると思うのですが、その上で、「顧客の事実」を把握するには、データと行動観察の両面を意識する必要があると思います。

たしかに数値やデータは、グウの根も出ないほどの「ファクトデータ」で、客観的な事実であり、「顧客の事実」を把握するためには最も重要ではあるのですが、一点だけ課題があります。

それは、「数値やデータは、結果としての情報である」という点です。

行動ログであろうと、購買データであろうと、それらは、顧客が何かしらの活動を行った「結果」としての情報であり、「顧客が何かしようとして、実際には行わなかった行動」に関する情報は与えてくれません。

そして、顧客の行った活動結果は、ある意味、自分達のサービスが「顧客にそうして欲しい」と思って設計した結果であるとも言え、「顧客の事実」を把握するにおいては、片手落ちかもしれないと思うのです。

なので、「行動観察」を行う事が重要では無いかと考えています。

なぜなら、「行動観察」では「個」にフォーカスして観察を行う事で、その「個客」が行おうとして、実際には行わなかった事に対し、マーケターの「直感(洞察力)」を使って気付く事ができると思うからです。

そして、数値やデータ等の「定量データ」と合わせて使う事により、洞察力がより働きやすくなり、「顧客の事実」により迫れるようになるのではないかと、自分は考えています。

この考え方は、既にnoteでも「右目・左目分析」として紹介させて頂いているのですが、より正しく「顧客の事実」を把握するためには、たとえ多少の手間が発生したとしても、時折、セルフチェックを行って、自分達の前提や常識を疑うサイクルをPDCAに取り入れるべきでは無いかと思います。

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世界をより正しく理解するために

『FACTFULNESS』は我々に、世界をより正しく見る「地図」を与えてくれました。ただ、本当の意味で世界を正しく見るためには、定量的な事実と共に、やはり直接世界を見る事が重要では無いかと考えています。

人は自分の持っている「思い込み」というフィルターを通じて、実際には世界を見ていると思います。よって、正しい「地図」を持っていれば、同じ世界を見ても、また違った世界が見れると思うのです。

そして、体験や体感は、データ以上に多くの事実を与えてくれると思っています。

マーケティングにおいても、これは同じかなと思っており、社内の常識や、これまでの経験、セミナーで聞いた鉄板ネタ、といったモノを、ある時は一旦忘れて、データと観察の両面から見直す事で、新しい発見が得られるかもしれません。

最後に

今回は、ちょっと考察の薄いペラペラの内容になってしまいましたが、最近の感染症の騒動を見て、事実をもっとちゃんと見た方が・・・。という思いもあり、書いてみました。もし共感が得られましたようなら、大変ありがたいです。ついでにマガジンにも登録頂けますと嬉しいっす。ではでは。


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