街頭での決斗!?
ある日、僕は道場宣伝のために空手着に着替え、宣伝のチラシを携え、マーゲ―ト近くのラムズゲートという街に行った。いつもと違って公園ではなく街中なのだ。さすがに勇気が要ったが、公園でのデモンストレーションの成功経験がこの街頭デモンストレーションを後押ししてくれていた。街頭の交差点辺りで僕はチラシを配り始めた。僕は空手着を着ているせいか多くの通行人に凝視されるが、ほとんどの人達はチラシをすんなり受け取ってくれた。すでにこの格好でのチラシ配りはだいぶ慣れていた。チラシを配りながら、適宜、飛び後ろ回し蹴りを何本か行い、通行人の視線をさらにこちらに惹きつけた。この日は僕一人だけだったので、吊るしボールなしで行った。すると中には、
「空手はいいね!」と、声を掛けてきた30代くらいの男性がいたが、
「俺は松濤館流空手の3段だ」と、逆にアピールされてしまったこともあった。そんな中、また1人の若い男が僕の所に近寄ってきた。僕がチラシを渡すと、
「おい、おれに喧嘩売っているのか?」「やるか?」と、いきなり喧嘩を売られたので僕は驚いた。呂律が回っていないので、どうやら少し酔っている様子だった。僕が驚いているとさらにその後ろから、今度は身長が185くらいでより背が高く、30歳前後のガタイが良い男達が2人やってきた。どうやらこの男の友人達らしい。僕はさすがに緊張し、3人を相手に身構えなくてはと心の準備をしていた。すると、
「おい、お前は馬鹿か、彼の黒帯を見てみろ!殺されるぞ!来い!」とその大柄な2人は酔っぱらったその男に言うと、その男の両腕を両側から引っ張って、男が僕の方を見ている状態のまま引きずるようにして連れて行ってしまった。
僕はこの束の間の出来事に肝を冷やされたが、事なきを得て正直ほっとした。でもなぜか面白いことに同じような出来事が後日も起こったのだった。僕に喧嘩を売り、同じように仲間に腕を引っ張られて連れて行かれた酔っ払いがいた。もちろん別人である。