見出し画像

机上で広がる友達の輪

 まだ園児だったころ。父方の祖父母の家へ連れていってもらったときのふたつの記憶が写真みたいに切り取られ、鮮明に残っている。

 ひとつは、おじいちゃんが和室に私を招き入れてくれた場面。部屋の中央に座卓があり、卓上にはいくつかお菓子が並んで置かれていた。それは商店で自分がよく見ていたお菓子とは違い、幅広のマチがついた15cm×8cmくらいの透明な袋に詰められていて、すっくと立ってみせていた。
 おじいちゃんは膝の上に私をのせて、私に「どれがいい?」と聞いた。なんだか手では触れてはいけないような気がして、一生懸命にのぞき込んで、そのうちの一つを選ぶと、おじいちゃんはゆっくりとその封をあけてくれた。ひとつめの記憶はこのあたりで途切れている。お菓子の形状や味はまったく覚えていない。

 もうひとつの記憶は、おじいちゃんと行った近所の商店街へと飛ぶ。商店街には雑貨屋があった。おじいちゃんはにっこりと微笑んで、なんでも好きなものをひとつ選んでいいと言った。私は店内の目が届く限りの範囲を、ゆっくりと見て回った。ふだん、両親に何かを買ってもらうなんてことはなかったから、きっと長いこと物色していたろうと思うのだが、おじいちゃんはまったく口を挟まず、にっこりと微笑んで待ってくれていた。
 これだ!と決めたのは、記憶が正しければ、2cmほどのカラフルなキティちゃん(?)の形をしたクレヨンの詰め合わせ。これをおじいちゃんに差し出すと、おじいちゃんは目尻を垂れ下げて「よすがちゃんは、細かいものが好きだねぇ」と言って笑った。

 このエピソードを思い出したのは、机の上がにぎやかになってきたからだ。過去のnoteにも記したが、はじめにピンポン玉サイズのプラモデル(機動戦士ガンダムの「ハロ」)を2体作って机に飾った。そこへ、ガチャガチャで購入したエジプトにまつわる人フィギュアを2体、以前ツタンカーメン展を見に行ったときにもらったツタンカーメンのフィギュアを1体飾った。どれも4cm程度と小さいが、机の上がわちゃわちゃしはじめた。そしてこのたび、あたらしい仲間が増えた。

画像1

 自粛が続いて退屈な息子のため、私の姉が贈ってくれたもの。頭に種が敷き詰められていて、水を得ると髪の毛が生えるように草が生えてくる。水をやりだした翌日には短い草が生え始め、3日もすると数cmに伸びる。成長のスピードが速いので、変化が面白い。ヘアカットも楽しめる。ときどき頬っぺたや目の脇から草が生えてしまうので、それも丁寧にカットしてあげる。

 細々したものを机に並べだしたら、なんだかほっこり。癒される。そういう感覚は、大人になっても変わらない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?