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コブダイに竿をふっ飛ばされた話

たまには釣りについて書こうと思います。今日は1弾目です。かなり長いです。



長かったテスト週間も今日の午前中で終わったので、午後は久しぶりに釣りに行くことにした。 とは言っても、広島でまともに釣ったことがあるのはマハゼかちびチヌくらいなものだ。

大物を釣りたいという気持ちもある。しかし、2月という時期だし難しいかなぁ?と思っていた。この時はまだ…。


広島県はコブダイの魚影が濃いと聞く。さらに、ご当地釣り的なものとして「かぶせ釣り」なるものがあるらしい。牡蠣を殻ごと使う釣りで、餌取りに強いという。
しかし、牡蠣を割るハンマーも無いので剥き身の牡蠣をそのまま使うことにした。

持っている仕掛けの中で1番強い糸とリーダーを装着し、竿もいつものへにゃへにゃの安竿ではなく釣り好きな親戚から貰った磯竿をセットした。
これならイナダがかかっても上げられるだろう、という仕掛けだ。
針は魚に触れる部分なため、万全を期して18号の、見た事ないくらいごついやつを購入した。

餌はスーパーで特売だった剥き身の牡蠣。8個くらい入ってて400円。普段牡蠣を食わないので分からないが、多分安いのだろう。賞味期限が一日切れていたが、私が食うわけじゃないので無視。


相棒のスーパーカブを走らせ、釣り場を目指す。ネットで近所のコブダイが釣れそうな釣り場を検索にかけてヒットしたところだ。もっと近いところにもポイントはあったがなるべく人里から遠そうな所にした。
その方が魚の警戒心が薄いのではないか、という浅はかな期待である。

始めて来る釣り場である。人気は全くない。コブダイを釣るには若干水深が浅いような気もしたが、まあ息抜きの釣りだしあまり期待はしていなかった。
綺麗なロケーションを長めながら、本でも読みながら海辺でのんびりしたい、的な目的の方が大きかった。


牡蠣を針に着け、投入する。若干の抵抗を感じて巻くと、コンブみたいな海藻が上がってきた。投げてまも無いのに牡蠣はもう取れている。ここで気付いた。「牡蠣、餌持ち悪すぎでは?」

気付いてももう遅かった。どんなに優しく投げても沈む時にトロッと身が崩れてしまう。さて、どうしたものか。
もう2切れほど牡蠣を無駄にしたところでようやく、ヒダヒダのような所に縫い刺しをすれば幾分ましになるということに気づいた。

ここまで当たりが全くなかったので、狙うポイントを深い場所から、沈みテトラの上に変更した。ここなら牡蠣が針から外れてないか水面から見えるし、コブダイは堤防沿いを回遊しているため目立つところに餌を落とした方がいいと聞いたことがあったからである。

沈みテトラの上に牡蠣を投入して5分。テトラの周りは底が見えないほど深いが、テトラの上は水深1.5メートルほど。正直、釣れる気が全くしなかった。堤防沿いを回遊していると言う割には全くなんの魚影も見えないし。

遠くの砂浜では親子連れが遊んでいる。こんな寒いのによくやるものだ。楽しそうな声が聞こえてくる。置き竿にしていたものの5分で飽き、竿から20メートルほど離れたところのテトラを覗き込んでカサゴがいたりしないかとのんきに歩き回っていた。

ふと、「そういえばちょっと目を離した隙に竿を持っていかれるなんてよく聞く話だよな」と思った。まあ、私の適当な仕掛けに魚が掛かるなんて思ってもいなかったが何となく、少しだけ気になったので竿の方に目をやった。
さっきまで突き出ていた竿が見えない。荷物はそのままなのに竿だけが、最初から無かったかのように忽然と消えていた。

もしやと思い堤防からテトラを見下ろすと、テトラの隙間に竿が逆さまに突き刺さっていた。

慌てて飛び降り、竿を回収したが魚は付いていなかった。仕掛けを回収しようとリールを巻いたが、そこで糸が根元から切られていることに気付いた。綺麗にプッツンといっている。根ズレで切れたのではない、純粋に力負けした時の切れ方だった。

こんな切れ方は滅多に見たことがない。


風で竿が落ちただけなら、糸が切れるはずが無い。何か途方もない大物が掛かったのだ。
PEはサーフでイナダを釣るようなlbだ。ドラグを緩めていなかったとはいえこんなことは初めてだ。

震える指で、仕掛けを作り直す。牡蠣を縫い刺しにして、今度は見逃さないように持ち場を離れず監視する。つもりだった。

仕掛けを投入して15分が経過した頃、何も変化しない海を眺めるのに飽きて持参したSwitchライトでスマブラを始める男の姿がそこにあった。
我ながら油断しすぎである。いつもならさすがにもう少し自制できるのだが、テストのプレッシャーから開放された反動だろうか。

ドンキーコングで華麗にメテオを決めるはずが、CPのMr.ゲームウォッチに2回連続で崖メテオを決められて頭が沸騰しそうになっていると、「ガシャカシャン!!」という音がした。目をやると、竿が海に向かってカッ飛んでいた。ズルズルと引きずられる、とかではなく本当ににカッ飛んでいったのだ。

急いでテトラに降りると、竿は先程と同じように突き刺さっていた。そして、先程と異なり割と先の方で糸が切られていた。ドラグは緩めたので根ズレだろう。それにしてもこう一瞬で切られるとは思わなかった。
「カンダイの一伸し」という言葉が脳裏を過った。瀬戸内地方の釣り人はコブダイのことをカンダイと呼び、みな口を揃えて「最初の突っ込みが本当に強い」と言うのだ。

これはもう本命に違いない。目の前で竿が飛んでいくのを見たのは初めてなので信じられないような思いではあるが、実際に見たのだから仕方がない。再び仕掛けを作り直し投入。起き竿にこそするが今度は一時も目を離さない。

投入して20分ほどだろうか、魚影は見えなかったが竿が「ズズズッ」と引きずられた。急いで合わせを入れると抵抗はあるが想定よりかなり軽い。「これは…?」と思ううちにもう上がってきた。真っ黒いチヌだ。40センチはありそうだが、その割に引きが貧弱だ。水温が低いからだろうか。

取り込みには多少てこずったが、仕掛けがオーバースペックだったようで拍子抜けしてしまった。このサイズのチヌを釣るのは初めてなので、写真を撮り記念に持ち帰って夕飯に頂くことにした。

いぶし銀の魚体がカッコイイ。


と、すると先程のカッ飛んだ竿もコブダイではなくチヌなのだろうか。一応牡蠣もあと2つ残っている。残りでもう1匹2匹釣れれば万々歳だ。そう思い、餌だけ変えて仕掛けを同じ場所に入れた。



10分後、竿が再び空を翔けた。直ぐにテトラに降り、竿を手に取ってゴリゴリと巻くと「グググ〜ッ」と魚が根に潜っていく感触がした。竿が完全に弓なりに曲がっている。さっきのチヌとは天と地ほども違う引きだ。「これはヤバい」そう思い、ユルユルにしていたらドラグを強く締め、巻いたがテトラの下に入ってしまったようでジリジリとラインが擦れる嫌な感触がする。

道糸に使っているPEラインは同じ細さのほかの糸より遥かに強靭だ。しかし、反面極端に根ズレに弱いという欠点もある。つまりテトラと擦れると、非常にまずいのだ。
本気でゴリ巻きすることができず、竿が弓なりに曲がったままで膠着状態に入ってしまった。こうなるともう我慢比べだ。

魚なんかに負けるか、そう思いながら踏ん張って10分ほど経った。足が痺れてつりそうだ。これ以上はキツい。そう思った瞬間ほんの少しだけ、魚の動いた気配がした。今しかない。念の為ドラグはそのままで、グッと力を込めると、魚が根から抜け出し身を翻すのが見えた。間違いない、コブダイだ。

根から抜け出したらあとはこっちのものだ。再び根に潜ろうとするコブダイを強引にこちらに巻き寄せる。浮かされたコブダイは何度か潜ろうとしたものの、観念したのかさしたる抵抗もなく網に入った。

顔ゴッツイ。


ずっと釣りたいと思っていた魚のひとつを釣ることができた嬉しさが込み上げた。家族へ写真を送り、仕掛けを片付けて帰路についた。


47センチもあった。


帰って測定をすると、意外と大きくて驚いた。
コブダイは大きさによって性転換をするのでこの大きさなら、雄になりかけの雌だろうか。
捌くのには一苦労だったが、プリプリで美味しい刺身だった。少し漬け込んで、漬け海鮮丼にして食した。


漬け丼と刺身。


美味!!
貧乏大学生には贅沢すぎる夕食となった。試験勉強で睡眠時間が足りていなかったためか、かなり粗の目立つ釣行だったが、いいポイントを見つけられた上に念願の魚まで釣り上げて満足だった。また来週にでも行こうと思う。

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