プレゼンテーション1

「起業×バックオフィス×社会」をテーマにした「社会起業環境論」はじめます。

私が税理士になって7年、京都市ソーシャルイノベーション研究所のコーディネーターになって3年、バックオフィスで働く人のためのSOU-MUプロジェクトをはじめて1年。

その中でそれぞれの業界のトップクラスの人達と出会えたことは、運が良かったとしかいいようがありません。

税理士になった当初から全国の税理士の中でも「知の巨人」というに相応しい法律のエキスパート達との議論に混ぜてもらったこと。少し調子にのっていた20代に完全に鼻をへし折られた経験は、同時に税務の奥深さや面白さを知る機会になりました。

税理士というのは法律家であるとともに、国家の根幹を担う税に関する専門家であることを改めて認識させてもらい、やはり税の専門家の存在は社会に必要不可欠だと感じています。

もともと経営の支援ができるようになりたいと思っていたので、中小企業診断士という資格もとりました。コンサルタントになって論理的にビジネスを組み立てることができるようになった一方で、「利益追及ばかりがビジネスなのか?」という疑問を抱くようになりました。

そんなときに声をかけてくれた京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)は、ビジネスを直線的、論理的に考えるだけではなく、社会課題の根本的な原因を生み出している社会の関係性に着目し、本質的な課題解決を目指すビジネスを支援する機関でした。

目にするビジネスモデルは、今まで見たことがなかったような新たな市場を切り開くものばかり。

そこで出会う人達は、0から1を生みだして関係性を紡いでいくプロフェッショナルで、フレームワークでビジネスを考える世界とは一線を画す世界。その中で私の得意な領域は、その1を10に成長させていくことだということも認識することができました。

そして、SOU-MUプロジェクトをはじめてから、数多くのバックオフィスの人達との出会いを通じて、企業経営におけるバックオフィスの仕事の重要性をあらためて実感できたことと、一方で多くの企業においてバックオフィスの仕事が軽視されている現実も目の当たりにしました。

私は、それぞれの分野において何か特筆すべき能力を持つ訳ではありませんが、「起業×バックオフィス×社会」これらの視点を合わせ持つ支援者も社会的に珍しい存在なのかもしれないと感じるようになりました。

SILKが設立された2016年に比べ、企業の経営環境は大きく変化しました。企業が社会の持続可能性に目を向けることは当たり前のこと。社会に無関心であることは企業の存続を揺るがす経営リスクとなる時代となりました。

また、SILKの支援する企業はこれまで「ビジネスを通じて社会課題を解決する」企業が中心でしたが、ここ最近は「社会課題を生まないビジネス」が若い起業家にとって当たり前になってきています。

だからこそ、このような社会性の視点をもつ支援者が地域にもっと増えていかなければ、起業を取り巻く環境は良くならないという想いを強くしています。

私は実務家であり、学術的な知見がある訳ではありませんが、今目の前の実務で起きていることをまとめることは、今後社会に価値を生みだしていく起業家にとって一つの参考になると思っています。


今、自由な生き方・働き方を目指す人にとって、とても一歩を踏み出しやすい環境になっています。

人生100年時代に会社に頼りすぎない働き方を推奨されている。地方で移住転職をするにも補助金が出る。パソコン1台で起業できるし、コワーキングスペースでいろんな人と繋がることができる。

その環境自体は10年前に比べ、とても恵まれた環境です。


ただし「自由と責任」や「権利と義務」という言葉が古くから言われているように、自由を得るために学び続けなくてはならないことがあります。

フリーランスになって、税や社会保険料の知識を知らなければ、自分がいくら稼がなければならないかも分からず、そもそもの自分のサービスの対価を決めることができません。

起業相談窓口にいっても、コンサルタントには向き不向きがあり、業務改善のアドバイスが得意でも、SDGsをはじめとした社会の変化についていけない相談員もいるため、最初の一歩の事業戦略を大きく間違えてしまうケースも多く見受けられます。

起業すれば必須になる会計処理に関しても、「税理士に頼まなくてもできる」というような自分にとって耳障りの良い言葉に踊らされ、目も当たられない状況になっている起業家やフリーランスは多い。

税理士は税理士で、ITに全く関心を持たない人も残念ながら一定数おり、税の専門家としての知識は豊富でも、クライアントのバックオフィス業務の生産性の足かせになっている事例も多い。

企業のバックオフィスで働く人も、テクノロジーの力をフル活用して業務を効率化している人、組織開発の学びを生かしてチームの働き方をデザインする人もいる一方で、何かと理由をつけて変化を拒み、業務効率化を妨げる人も多い。

経営者の中にも、バックオフィス人材をコストとしてしか捉えられない人もまだまだたくさんいる。

地方自治体も創業支援に取り組むけれど、「夢を叶える起業」の後押しをする一方で、経営知識が乏しいまま苦労する起業家を量産している。そして優秀な起業家は優秀な支援者を求め、東京や世界に出て行く。


みんな一生懸命やっているのに、何かうまくいっていない起業環境がある。

そう、まさにこんな感じ。

プレゼンテーション2

こんな起業家が好きです。

起業環境にまつわる「起業×バックオフィス×社会」のテーマに焦点を合わせて普段感じていることを書いていくので、それぞれのプレイヤーが新たな取り組みを行う際のヒントになればと思います。

イラスト:たくまのりこ



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