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"…But the future is not fixed." YEARS & YEARS オリーのQueerスピーチ

これからボクは自分がゲイであることについて話そうと思う。それをよく思わない人がいることも知っているけど。 ボクは長いこと、自分がゲイでなかったらよかったのに、と思ってきた。自分自身のことを恥じてきたんだ。そんな過去を埋め合わせるために、ボクはここでスピーチをする。

今年の6月、グラストンベリーフェスティバルに行ってきた。何もない牧草地に13万5千人もの人が集まり、ライブやDJ、アートなど多様なコンテンツで楽しみながら、5泊あまりを過ごす、都市規模の壮大な遊びだ。

本当に様々な体験を経て、感動し、ぶっ飛び、疲れ果てて来た。帰国して一ヶ月以上経ち、クッキリと脳裏に残っているシーンがいくつもある。

その一つにYEARS & YEARSのライブがある。ボーカルのオリーのスピーチが素晴らしくて、自然と涙が溢れてきた。今回はそのスピーチを書き起こし、日本語訳してみた。

YEARS & YEARSとは

UK発の3人組エレクトロポップ・バンド。日本でも人気は高く、2018年はフジロックフェスティバルで一番大きなグリーンステージに登場し、2019年3月に東京、大阪で来日公演も行っている。

ボーカルのオリーは、ゲイ。どうやら、デビュー時はカミングアウトしないほうがいいとアドバイスされたそうだが、今では堂々とゲイであることを公言しているし、恋愛に関する歌詞に臆せず「He」を使う。

参考:イヤーズ&イヤーズ「カミングアウトはもはやセンセーショナルではない」  / 【特集】新時代のゲイアイコン「イヤーズ&イヤーズ」の魅力

YEARS & YEARS オリーが語った、静かな怒りと未来への希望

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YEARS & YEARSは、グラストンベリーフェスティバルのメインステージにてライブをした。10万人が収容できると言われている巨大なフロアの後方の日陰で、現地で一緒になった海外フェス好きの日本人5toさんとライブを見始め、後半はフロア前方に移動した。

結構前に歩いてきたなぁというタイミングで、演奏が止まり、オリーは静かに語り始めた。

I talk about being gay.You might have already noticed. Some subtile messaging on the stage. But I’m gay and I talk about being gay kind of a lot.I’m sure some people wish I would shut about it sometimes.

これからボクは自分がゲイであることについて話そうと思う。すでにみなさんは気づいているかもしれないけど、今回のステージにはいくつかのメッセージを込めている。だけど、ボクはあえて話もする。それをよく思わない人がいることも知っているけど。

 But I have my reasons you know and like some of them are personal because I spent such a long time wishing I wasn’t gay. Being ashamed of that, So now it’s like we’re making up for lost time, you know?

ボクは長いこと、自分がゲイでなかったらよかったのに、と思ってきた。自分自身のことを恥じてきたんだ。そんな過去を埋め合わせるために、ボクはここでスピーチをする。

 But what I wanted to say to you guys is the only reason that I’m even able to be up here talking about my gay self is because of all the people that have come before me that have fought for the rights of lesbian, gay, bisexual, and trancegender people.

数多くのレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々が自分たちの権利のために戦ってきたからこそ、今この場で僕はゲイである自身の事をみんなの前で語れる。

 Sometimes we are referred to as the acronym LGBT sometimes LGBTQ+. I personally, I like to use the word Queer.As you can see.

ボクたちは、LGBTとか、LGBTQ+って呼ばれている。個人的には、Queerという言葉が好きなんだ。スクリーンに映し出されているように。

 But lots of people don’t like that word and that’s because the word has a complicated and painful histrory. And whether we like it or not, history, it really matters.

Queerという言葉を多くの人は嫌っている。なぜなら、多くの痛ましい歴史を含む言葉だから。ボクたちが好きだろうと嫌いだろうと、歴史は重要だよね。

 This week, we mark the 50 years since the riots and protests. That happened after the police raided a gay bar in New York city called the Stonewall Inn. .Now you might have heard of the Stonewall riots already. They were riots that were led by black transgender women and people of colour and since that historic event the world has changed so much in 50 years.

ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」に警察のガサ入れが入ったあとに起きた暴動と抗議行動から、今週で50年を迎える。既に君たちはストーンウォール暴動について聞いたことあるかもしれないね。黒人のトランスジェンダーの女性に導かれて、様々な有色人種の人々が参加した暴動は、歴史的な瞬間だったはず。あのあと、世界は50年をかけて大きく変わった。

 But our history is what shapes us into who we are and we have so much of it, we have so many different kinds of history, personal history, family history, cultural history, social, political. So many different kind of history and we make more and more every day.

ボクたちの歴史が、今の自分を構成している。個人的な歴史、家族の歴史、文化、社会、政治…ひとり、ひとり、違う歴史を多く抱えている。そしてたくさんの異なる歴史が日々作られていく。

 The reality is that the lives of LGBT people are as varied and as complex as anybody else’s but they are under a very real threat. Now the fight for equality began before the stonewall riots it continues today and it will go on until tomorrow, into the future.

人々が多様であることと同じくらい、LGBTの人々の生活も多様だけど、彼らは現実的な脅威にさらされている。ストーンウォールの暴動から始まった戦いは、今も続いているし、明日も、その先の未来も続いていく。

 But the future is not fixed. And our histories cannot predict what tomorrow might bring or what we might do with it.

でもね、未来は決まっていないんだ。ボクたちの歴史が、明日のボクたちに何をもたらすのかなんて分からない。これまでの歴史から、明日、何をするのか予測することもできない。

 So there is, I believe that everybody here has the chance to change history. We change history every day and it’s up to each and every one of us if we want to change the world, right?

 だからこそ、誰もが歴史を変えるチャンスを持っている。ボクたちは、歴史を毎日変えていける。世界を変えたいのであれば、ボクたち一人ひとりの行動にかかっているはず。

 So I believe there is no true LGBT equality until the fight against racism is over, against seism is over, against ableism, bigotry, climate change.

人種差別との戦いが終わらなければ、能力主義との戦いが終わらなければ、偏見との戦いが終わらなければ、気候変動との戦いが終わらなければ、真のLGBTの平等はないはず。

 So it’s like a really big ask and I have no idea how we get there but what I do know is that if we want to get anywhere without leaving anybody behind we’re going to have to help each other out.

 どうやってそこにたどり着けばいいのか、正直わからない。でも、誰かを置き去りにせずに社会を変えていくために、みんなが互いに助け合う必要があることは分かっている。そういうことを伝えることが、今、ボクがしなくてはいけないことなんだ。

 And if we care about a future that is kind and more safe for everybody then we need to keep -sorry-.This is why I was so nervous about this speech.

もし、僕たちの未来が安全で優しい未来であってほしいと考えるなら、僕たちは…ごめん。言葉にしずらいけど、これがボクの心をざわつかせる理由なんだ。

 I just wanted to say to you guys because this is a moment in my personal history, because you know we’re playing GLASTONBURY on the Pyramid Stage, and I wanted to say that if we’re respectful and compassionate we can show up for each other.

 ボクたちは、今、グラストンベリーのピラミッドステージでプレイしている。これはボクの経験において、本当に決定的な瞬間。だからこそ、みんなに伝えたかった。ボクとみんなが持っているお互いへの尊敬と思いやりを、世界に示したかった。

 No matter who we are we can support each other and we can listen and if we want the world to be a kind and safer place we have to take the lessons that history teaches us and learn from each other’s because the fight is not over.

ボクたちは、誰であろうともお互いを支え合い、お互いの意見に耳を傾けることができる。世界を優しく安全な場所にしたいなら、歴史から学び合わなきゃいけない。だって、戦いが終わっていないから。

 And I believe that when people believe in something they come together then change can happen and anything is possible.

 たくさんの人が、何かを信じて一緒に行動を起こせば、やがて変化が起こる。実現不可能なことなんてないんだ。ボクは、そう信じている。

※英語の翻訳は、友達に確認してもらったのだけど、なんかミスがあったら教えて下さい。

Special Thanks:須古ねぇさん

多様な価値観の人々に、不意に投げかけられる問題提起

フェスにはたくさんの人が訪れる。フェスに来る・来れるという最初の敷居はあるにしても、来場者は多様だ。

フェスでは、多様な価値観を持つ人々に、不意に問題を投げかけることができる。

フロアにはYEARS&YEARSが好きな人も、たまたま見ていた人も、別のステージに行くために通りががっただけの人もいる。

僕自身、オリーがゲイだって知らなかった。曲は知ってるくらいで、熱烈なファンというわけではない。そんな僕は、涙を流してオリーのスピーチを聞いた。

こういったところにフェスのメディア性がある。来場者は、主催者やアーティストのメッセージを直接体験する。ディスプレイ越しでは、紙を通じては、伝わってこないリアルな体験がそこにある。

オリーは、静かな怒りと、それに勝る未来への希望を語った。人がより良く生きるために、オリーが言わねばならぬメッセージだった。こういった体験一つひとつが「フェスティバルウェルビーイング」だと僕は考えている。

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この日のYEARS & YEARSライブの最後には、レインボーの紙吹雪が舞った。

だから僕は、フェスティバルが好きなんだ。


将来的に「フェスティバルウェルビーイング」の本を書きたいと思っています。そのために、いろんなフェスに行ってみたい。いろんな音楽に触れてみたい。いろんな本を読みたい。そんな将来に向けての資金にさせていただきます。