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NEC、楽天と目指す5Gの勝者 「大容量タイプで月額2980円」。楽天が4月中に本格参入する携帯電話事業の主力料金プランが2日に報道で伝わった。これを好感して2日の株式市場で一時7%高まで買われたのが、NEC株だ。NECは楽天と共同で次世代通信規格「5G」の基地局を整備する。NTTドコモなど大手3社の半値とされる料金攻勢をかける楽天携帯事業は、NECの通信事業の明暗も左右する。

「今回の楽天との事業はまたとないチャンス」。NECの通信事業を束ねる渡辺望シニアエグゼクティブは意気込む。従来の4GでNECはNTTドコモの基地局整備に携わってきたが、海外では存在感が乏しい。中国の華為技術(ファーウェイ)、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの3社で市場シェアの8割を握る。NECの世界シェアは1%程度にとどまる。 だがNECは楽天との協業が世界大手の牙城を切り崩すきっかけになり得るとみている。これまでの基地局ビジネスは通信会社が基地局ベンダー1社を選び、その企業が無線機やアンテナ、基地局の制御部分をまとめて提供する場合が多かった。機器同士の親和性が高く、通信の安定性が期待できる一方、開発費が膨らみやすくなり通信会社の資金負担が増す。 これに対して今回の「楽天方式」は制御部分を米国のソフトウェア企業アルティオスター・ネットワークスが手掛け、無線機をNECが担う分担方式だ。海外でもソフト会社が基地局の制御部分を手掛けるのは珍しい。 NECの無線機は小型、省電力、安定性の高さなどが売り。基地局同士を無線で結ぶ技術の高さにも定評がある。NECの渡辺氏は「新規参入を考えている海外企業や、価格を抑えたいと考えている通信メーカーから引き合いが来ている」と話す。国内で楽天の携帯サービスが普及して品質の安定性が確認できれば、一段と需要が高まる可能性がある。 楽天方式の普及はNECの通信部門の先行きも左右する。通信部門は祖業とも言え、2000年前後にはNTTの巨額投資の恩恵を受けて部門利益が年間800億円程度だった時期もある。だが近年は国内投資の先細りに加え、世界3強の台頭で存在感が低下。前期の営業利益は200億円強にとどまる。地域を限定して企業向けに提供する「ローカル5G」とともに、復活のカギを握るのが海外需要の取り込み。渡辺氏は「今後5~10年でグローバルベンダーとして認知されるようになりたい」という。 NECの今期は構造改革効果やウィンドウズの更新に伴うパソコン需要の拡大で、「19年4~12月期の営業利益は期初予想を150億円上回った」(森田隆之最高財務責任者)という。このうち100億円分を20年3月期中に5G関連などの成長のための費用として積み増す。株式市場が成長のけん引役として期待するのは「5Gを通じたネットワークサービスの利益拡大」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の田中秀明シニアアナリスト)。中期経営計画で掲げる21年3月期の営業利益1500億円を達成するカギを握るのも5Gだ。 株価は昨年末比で5%安。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けているものの、10%安の日経平均株価と比べて踏みとどまっている。 楽天は3日に携帯電話事業の料金プランを正式発表する。楽天経済圏を支える裏方として歩み出したNEC。楽天携帯プランの成否は、NECが5G関連銘柄の本命の座を固められるかの分水嶺とも言えそうだ。  

#COMEMO #NIKKEI

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