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自動運転、優勝劣敗の兆し 米ウェイモが2400億円調達 米アルファベット傘下で自動運転技術を開発するウェイモは2日、米投資会社のシルバーレイク・パートナーズなどから22億5000万ドル(約2400億円)を調達したと発表した。自動運転の専業では過去最大規模の資金調達に踏み切った。2009年から進める公道試験の走行距離はすでに3千万キロメートルを突破し、ライバルを圧倒する。自動運転に関連する企業の優勝劣敗が鮮明になる可能性がある。

ウェイモは米グーグルの研究部門が母体で、16年に分離独立し、現在の体制になった。グーグルとは兄弟会社の関係にある。投資家が自動運転や関連するスタートアップ企業に対する選別を強めるなかでの大規模な資金調達になり、優秀な人材の確保や技術開発の加速につなげる考えだ。 投資はシルバーレイクが主導し、同社は取締役を派遣する。カナダの公的年金を運用するカナダ年金制度投資委員会、アブダビの政府系ファンドであるムバダラ開発公社なども出資したほか、業務提携しているカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルや米自動車ディーラー大手オートネーションが増資に応じた。アルファベットは追加出資した。 ウェイモのジョン・クラフチック最高経営責任者(CEO)は2日に声明を出し、「人材や技術、事業運営への投資を強化する」と強調した。同日までに米ウォール・ストリート・ジャーナルの取材にも応じ、調達した資金で自動運転車に活用する最新のセンサー群の導入を広げ、物流分野を強化する方針を示した。新規株式公開(IPO)の可能性も示唆した。 米CBインサイツなどによると、自動運転など次世代自動車関連のスタートアップによる資金調達は、19年1~9月に米国で約40億ドルに達し、すでに過去最高だった18年通年の2倍以上になった。自動運転の領域では、米ゼネラル・モーターズ(GM)系の米GMクルーズが19年、ホンダやソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから11億5000万ドルを調達した。 ただ、自動運転に対しては一部で期待先行との見方も浮上する。19年には米スタンフォード大学の研究者らが設立した米ドライブ・エーアイが身売りし、社員の大半を解雇した。最近ではライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズが上場したものの、株価は低迷している。19年は米国のベンチャー投資が3年ぶりに減少に転じるなど、調達環境そのものが悪化するとの懸念もあった。 ウェイモはグーグルの資金力を生かし、開発体制の拡充で大きくリードした。自動運転車による公道走行の実績は2000万マイル(約3200万キロメートル)を超えた。18年に米アリゾナ州で自動運転車を使ったタクシーサービスを始め、19年には米ミシガン州に車両の改造拠点を設けた。ウェイモはこうした実績により、逆風を跳ね返した格好だ。 自動運転技術の開発では米中のIT(情報技術)企業がしのぎを削っている。中国のネット検索大手、百度(バイドゥ)は17年に自動運転の開発連合「アポロ計画」を立ち上げ、豊富な走行データをもとに、実用的な特許を積み重ねている。 このほか、スタートアップの小馬智行(ポニー・エーアイ)は2月末、トヨタ自動車から4億ドルの出資を受け入れると発表した。ポニーとトヨタは19年に提携済みで、資本提携まで踏み込む。中国は官民一体で開発を急ぎ、先行するウェイモを追い上げる考えだ。 今回のウェイモの資金調達は、長期的な視野に立った投資や研究開発と、短期的な収益の両立を求められているアルファベットにとっても追い風になる。グーグルは15年に持ち株会社のアルファベットを設立し、自動運転技術の開発など中長期の取り組みを「アザーベッツ(その他部門)」としてまとめ、収益を個別に開示している。 アザーベッツは優秀な人材の確保などで効果を上げる一方、投資家は野放図な支出の拡大を懸念しているのが実情だ。外部資金の活用が広がれば負担を軽減できる。19年1月には傘下のライフサイエンス企業、米ベリリーが10億ドルを調達したと発表している。アルファベットのスンダー・ピチャイCEOは「他分野でも同様の可能性を模索する」と表明していた 。

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