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投球のしくみ・運動連鎖

投球する時に身体がどのような動きをしているのか選手に指導している時に自分の経験と感覚で教えて投球の仕組みや動作を理解していない方が多いです。そこで投球のポイントとなることを書いていきたいと思います。
投球の良い悪いは意外と素人が見てもなんとなくわかるものです。
フォームがキレイ・力強い・かっこいい・フォームがカッコ悪い・全力で投げている割に球が遅い・投げ方が変だなど、すべてが正しいわけではないですがけっこう的を得ています。
ただそこで何が・どこが良い悪いを説明や指導することは専門的な知識がないとできません!
しかし、投球のポイントを理解するとわかるようになっていきます。

運動の連鎖として投球時のエネルギー伝達は下肢・体幹・上肢と続いていきます。もう少しいうと肩・腕・手を続きます。

例えば投球に必要な力が100だとします。そして下肢・体幹・上肢に必要な力が下肢40・体幹30・上肢30で合わせて100だとします。
肘や肩の障害を考える時に今書いた数値を元に考えていくと、何かしらの原因で下肢・体幹の機能やパフォーマンが低下して下肢・体幹合わせて60の力しか出せなかったとします。すると投球に必要な残りが40になり上肢が30+10の力を出して100にしようとします。この足りない10の力が上肢への負担の増大になります。
投球の運動連鎖・フォーム不良により下肢・体幹の力をうまく使えないと下肢・体幹の力を合わせた70を上肢に伝えられずに60までしか伝わらずに足りない分を上肢が補おうとして肩や肘への負担が増大します。
例えていうと下肢や体幹の回旋の不足により肩が通常よりも多く外旋運動を行う・肘が外反するです。

投球動作は開始から終わりまで約2秒ほどの短い時間で行われます。そして投球フェーズの時間に対する割合がワインドアップ30%・コッキング期50%・加速期8%・フォロースルー期12%です。
コッキング期が一番長く50%でワインドアップと合わせると80%にもなります。そのためワインドアップの足を上げた時から足が着きトップを作るコッキング期までがかなり重要でありここが崩れてしまうと様々な障害を生じてしまうといってもいいかもしれません。

投球動作の開始から終わりまで(右投げ)

まずワインドアップ期の構えて足を上げます。膝をヘソの高さ又はそれより上に膝を上げ位置エネルギーをつかえるようにします。次にコッキング期で並進運動を行い投球方向に徐々に体を移動させますが体幹をやや投球側(右手側に)に回旋させ体を開かないようにして股関節(骨盤)を内旋させて内に締めます。そのまま軸足(右足)に荷重を残し投球方向に身体は投球方向に移動(傾いて)していきます。左足が地面に着地し並進運動をこの後に回転運動に変換していきます。この左足が地面に着いた時の肘の位置をトップといいます。次に加速期に移り並進運動を骨盤を前傾させながら左の股関節に体重を移して乗せていき骨盤を回転させて並進運動を回転運動に変換していきます。この時に体幹の回転を左手(グラブ側)の運動(引き)により体幹の回転をリードさせていきます。回転運動により体幹から肩・腕・手へと力が伝わり肘の伸展運動と前腕の回内運動がおこなわれリリースされます。最後にフォロースルー期に入り身体の前方の移動や右腕の減速などにより力を逃がして投球動作が終了します。

投球動作の動きを大きく分けると並進運動と回転運動になります。
足を上げて(ワインドアップ)地面に接地するまで(コッキング)の投球方向に体重移動をする並進運動
接地後に踏み込み脚を中心に骨盤と体幹を回転させ(加速)リリース・フォロースルまでの回転運動
これをいかに効率よく行うかが大切になります。

並進運動で重要になるのがコッキング期での体重移動になります。この時に軸足で身体を開かずに骨盤と体幹の開きを抑えるかが重要になります。
そのためには始めのワインドアップの足を上げた所からが重要になっていきます。

ワインドアップ期

軸足の膝・股関節が伸展し上げた膝・股関節が屈曲して骨盤より上にあがっているか・身体が前後左右にブレていないかを見ます。この時に僕がよく言っている後方荷重があると不安定になりコッキング期で身体が開いてしまいます。

コッキング期

一番大事なのが右股関節をにタメを作れるかです。
これは股関節が屈曲し上体がやや前傾になります。股関節が内旋(骨盤を使い股関節を内旋させる)し股(股関節と骨盤)締めます。すると右足に荷重が乗り身体が突っ込む事を防ぎタメを作れます。
次に重要になるのが左の股関節です。左の股関節を内旋することで上体・骨盤・膝を開くこと防ぎしっかりとしたヒップファーストを作ることができ身体の突っ込みと開きを抑える事が出来ます。左の股関節が外旋し開いてしまうと膝が開いてしまい骨盤と上体も開いてしまいます。するとヒップファーストを作ることができず右足にタメを残すことができずに身体が突っ込んでしまいます。
左右の股関節をちゃんと締める事ができれば上体と骨盤が投球側(右手側)にやや回旋した状態になります。簡単に例えると上体・骨盤が真横からやや右手側に入ります。
ただこの時に肘を背中側に引く選手だと入りすぎてしまうことがあるので注意が必要です。
ここまでが足を上げた最高点から足が着地するまでの体重移動(並進運動)をしているフェーズ(コッキング初期)です。
これからが着地して体重移動を回転運動にしていくフェーズ(コッキング後期)になります。
ここで大事なポイントが肘の位置!いわゆるトップの位置と左股関節です。
左足が地面に接地した時の肘の位置をトップと言います。この時に肘の位置が両肩を結んだラインと同じ位置か少し高い位置になければなりません。両肩のラインよりも低いことを肘が下がるといいます。肘が下がると加速期に肘と肩が前に出て来ない・上腕骨頭が前上方に突き上げられる・肩の外旋が少なくなり肘の外反が強くなるなどが起こり負担が強くなります。
肘が下がることをボールを持った側の肘をよくいいますが、グラブ側の肘が下がることもよくないです。グラブ側の肘が下がると左肩も下がりSSEが崩れる・上体が突っ込む原因になります。あと、グラブ側の肘が下がると加速期に肘の引きが甘くなりやすく身体の回転力不足になりやすいです。両肩と肘の位置関係をSSE(shoulder shoulder elbow)と表されます。SSEはトップからリリースまでこの位置関係が崩れることがありません!リリース時のSSEをゼロポジションとよく言われます。あとトップを作った時に肘が90度以上曲がっている事が重要になります。90度以上曲がっていないと加速期に入った時に手(ボール)が身体から離れた(遠い)軌道を通ってしまい身体の回転に遅れてしまい肩や肘が遅れでてきてしまい負担が強くなってしまいます。
次に左足が地面に接地した時に骨盤の前傾・股関節の内旋・内転がしっかりできている必要があります。
コッキング初期で体重移動(並進運動)してきたものをコッキング後期で並進運動を回転運動に変換していきます。変換するのに必要なのが骨盤の前傾・股関節の内旋・内転です。並進運動で体重移動してきたものを左の股関節で回転運動に変換するため骨盤が前傾して股関節が内旋・内転して力を受け止める必要があります。骨盤が前傾できないと並進運動してきたものにブレーキがかかってしまいます。股関節が内旋・内転ができずに外旋・外転してしまった場合、並進運動から回転運動に変わった力を受け止められずに力が逃げてしまいます。
コッキング期が一番長く重要なので説明も長くなってしまいました。

加速期・リリース

ここからはワインドアップ・コッキング期の結果があらわれることになります時間にして0.1秒0.2秒の世界なので意識てどうこうするものではありませんそのため加速期に身体がどのように動いているかを見ていき、問題があればコッキング期までの動きや身体の機能低下などを修正・改善していく必要があります。
1つは左股関節で回転運動がちゃんと行われているか、コッキング期で書いた左股関節の屈曲・内転・内旋・骨盤の前傾ができているか。
投球の回転運動とは縦(斜め)の回転になります!
右股関節は伸展しているか、右の股関節が屈曲してしまうと身体がCの字を作るしなりを作れません。あと股関節・骨盤を締める事ができずに回転が横になってしまいます。
左股関節屈曲・内転・内旋・右股関節の伸展と内旋・骨盤の回旋・前傾ができていれば右足が後ろに上がりますし。右足のスパイクの跡がやや内方向と投球方向に行き最後に外側に跡が着きます
これができないと右足が外側(サード側)に足が開き身体が横に回転します
スパイクの後も外側に流れます
リリース時にSSE又はゼロポジションになっているかを見ます。そして肩の入れ替えができているか?これはトップポジションの両肩の位置が左右入れ替わることで簡単にいうと180度回転しているかを見ます。
左肘の引きや体幹の回旋・股関節の可動域不足などがあると肩の入れ替えがしっかりできなくなります。

フォロースルー期

あまり重要ではないように思われるかもしれませんが、投球フォームの結果があらわれる場所でもありリリース後に身体を減速させて力を逃がす大切なフェーズでもあります。
フォロースルー時に身体が投球方向に向かっているか。リリース後も身体は投球方向に進んでいきます。これが止まっている場合は股関節がうまく動いていなくブレーキがかかってしまっている。身体が横回転している。多いのが背中側(ファースト側)に身体が倒れる・流れる選手です。
僕が個人的に一番重要だと思うのが腕を最後まで振ることです。僕が尊敬するPTの方に教わったのがリリースしたらフォロースルーの最後まで腕を振り左の肩甲骨をたたくくらい最後まで振りなさいと教わりました。多いのがリリース後に腕の動きを止める選手ですが急ブレーキがかかるの負担が多くなります。車を止める時に距離を長く取った方が負担が少なく止められるのと一緒です。腕も一緒です!
腕を最後まで振ると肩の入れ替えや身体の回旋をしっかりできるのもメリットだと思います。
シャドウピッチングをしているとフォームがいいと背中をタオルで叩けます!しかもけっこう痛い!これができないのはフォームや投球動作がうまくいっていないのでフォームチャックに役立ちます!

ここまで投球の動きを書いてきました。細かい事や感覚はどうしても文章では伝えれないことが多いですが、ポイントを知っていると知らないのでは自分が投げた時や選手のフォームを見る時・指導する時にかなり違ってくるはずです。しかも自分が間違った投げ方・指導をしているかもしてないことの参考になります。

投球を見る時は必ずビデオ撮影をしてください。選手に見せることはもちろんですがスローやコマ送りなどをして見ないと正直わかりません

投手で2秒ほど野手だともっと早く一瞬の世界ですが奥が深く難しいです。




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