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エレベーターで知らないおじさんに

マンションのエレベーターで知らないおじさんと二人きり、乗るやいなやいきなり話かけられた。

「いやあ世の中たくさん仕事がありますけどね、セメント塗る人いるでしょ…」

いや、初対面の一言目の会話か?
普通、同じマンションの住人同士でする会話は天気の話のみまで!  寒いですね。を枕において、もうちょっとしたら暖かくなるみたいですよ。みたいな話でまとめるのが定石だろ!
「いやあ世の中たくさん仕事がありますけどね」ってなんだよ。「いやあ」も「けどね」も漫才の導入っぽい口ぶりすぎるぞ! そのあとどんな話してくるのか内心ワクワクしちゃったわ。
「セメント塗る人かっこいいでしょ。あれ一回やってみたかったんだよね。ちょっと練習してもいいかな。おれ塗る人やるから、お前セメントやって」とか言われそうすぎる話し方。いや、セメントやってってなんだよ。どう液状化すればいいの。しかものちに固形化するとか。セメントって便利だな! いや、セメントの便利さは今どうでもいい。というかそもそも、この前フリみたいなやつは言われてない。取り乱した。話に戻る。

「いやあ世の中たくさん仕事がありますけどね、セメント塗る人いるでしょ…」

「あ、いますね…」

私はとりあえず相槌をうつ。
相槌以外の選択肢などない。

知らないおっさんは話を続ける。

「玄関でた隣に薬局あるでしょ! そこの店の前でセメント塗ってる人がいたんですよ…!」

「はい(それで…?)」

「……………」

「……………」

…………いや、なによ!!

とりあえず見た事柄全部を親に報告するタイプの子供みたいなおじさんなのか? それかクールポコのせんちゃんなの? 「セメント塗ってる人がいたんですよ…!」「なあにぃ?やっちまったなあ!」って、ならないから。セメント工を超える「男は黙って〇〇」何も思いつかないでしょ! 充分男っぽさあるから。あと餅つく方の人の芸名「小野まじめ」て。響き面白すぎるだろ! なのにせんちゃんだけ知られてて小野まじめの名前誰も知らないのも面白すぎる。いや、小野まじめの話なんてどうでもいいんだよ。

一瞬の沈黙

チーン

エレベーターが知らないおっさんの階に着く

「じゃ、おつかれさまです」


…んあ!! 「じゃ、おつかれさまです」じゃねーよ! どんなつもりで気持ちよく去れるんだ。取り残されたこっちはモヤモヤが肥大化して脳の積載量オーバーでブザーなっちゃってるよ。何この例え、エレベーターとかけてなんか上手いこと言おうとしたけどそこまでうまく言えなくて恥ずいだろ! それはさておき、セメント塗ってる人がいてどう思ったか、そこだけでも教えてくれよ! 寒そうだったな。とか、大変そう。とかだけでもこの話報われるのよ。なぜ事象だけを語る。事象だけ語って気分良さげに帰る話、どういうジャンル? 話が下手すぎて逆に魅力的すぎるからもう、またすぐ会いたくなっちゃってるよ! 知らないおじさん。次会うときはもう知ってるおじさんだよね? 私のこと覚えてるかな? あの話の続きしてくれなきゃヤダ。って言いたいよ。…なんか最後メンヘラみたいになっちゃったよ。
そして特にオチはありません。エレベーターは落ちたら事故になってしまうのでね。などと言って終わらせたいと思います。

さてみなさん、漫才みたいな前フリで話しかけてきた知らないおじさんが、クールポコみたいな前フリをして気持ちよさそうに帰っていった話、いかがでしたでしょうか?
これからも引き続き、デザイナーならではの役に立つテクニックや制作のプロセスなど、みなさんのためになるような情報をnoteに更新していくのでよろしくお願いします。

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