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移住失敗の2大要因:行政による移住誘致PRの罠と揃わない家族対話


移住はやっぱり難しく諦め組が多発する

2020年4月〜5月から「移住」トレンドが上がるという予測が建てられて、自治体やら国やらは予算を突っ込みはじめている。しかし、よくよく調べてみると移住そのものの「失敗」論が聞こえてくる。

コロナで地方移住 、結局進まない理由 テレワークに悲鳴  都心マンションへ回帰 https://www.47news.jp/47reporters/5407536.html

そんなの、もう予想の範囲内すぎて、当然である。

そもそも行政の移住誘致の多くが、ハード面や制度面への投資ではなく、PR面ばかりで結局広告代理店にだけお金がいく仕組みとなっており、PRにつられて移住した人たちが「こんなんじゃなかった」とヒイヒイ言う、という流れが顕著になりはじめている。

自治体が大手の広告代理店やらコンサルをぶち込んでPRしている地域は、むしろ怪しいぞ、くらいに思った方がいい。中間マージンが半分以上取られて、地道なハード面、社会福祉面、制度面、コミュニティ面にはまったく手が行き届いていないことばかり。これには既視感があって、なんだろうと思ったら、途上国の地域開発における開発コンサル構造となんら変わらなかった。(途上国では、私の知る時代の開発事業に関しては、開発コンサルに40-60%の資金が流れていく仕組みだった。)


行政人が頭を使わず地域システムに投資しない

なぜならPRはわかりやすいし、資金投下が代理店など一本化しやすいから。でも一方で、先述のハード面、社会福祉面、制度面、コミュニティ面などの中身を整えるという作業は、綿綿と地道な地域との対話や地域の中のエコシステムを理解する行為が必要だ。

本当なら、自分たちが行政サービスを提供している地域に、誰がいて、誰がどうおもしろいのか、誰にどんなスキルがあるのか、誰がどんなことを起こしているかを把握し、それを伴走する気構えがなければ、地域の経済の勃興の可能性についてなんて話す権利すらない。

だけど自治体の中でそういう人に出会うことが少ないのは、そこまで本気で地域に変わって欲しいって思っている地方公務員なんてそもそも少ないのかもしれない。(私はラッキーにも、そうではない地方公務員に塩尻市では出会えましたけど、あれはかなりレアだった模様。)細かい一つ一つではなく、資金を大投下して解決、という方法を取るところが殆どなのだ。

最近、私が出入りする地方都市で、代理店に金を突っ込んでいく自治体にため息をついている地元住民の声を多々聞く。「信じられない、あの人たち何考えてるんだよ。この状態で迎え入れてどうするんだよ。ちゃんと環境整えることに使ってよ。」と言っている。皆、移住でおもしろい人たちがくるのはウェルカムだけど、自治体のやり方が本当に「無思考」すぎて、開いた口が塞がらない、というのが現状だ。

だからそういう行政先に移住するのは要注意だ。こうやって天邪鬼的にいろいろ疑ってかかることから始まって、地方創生交付金やらお金の動きに目を配り、自分が住もうとする自治体の素質については、必ず移住する前に知る必要がある。


移住を能動的に仮説検証すればエネルギーを使うのは確か

前回の記事で私たちがした移住について、5年以上の年月をかけて試行錯誤した経緯を書いたら、たくさんの方からいろいろな声を聞いた。
「あれだけの年月かけて試行錯誤するんですね」とか
「あんなに何段階も仮説検証しているんですね」と驚かれることが多かった。

私たちは「ここで失敗してもいい」という気持ちを20%くらいは持って移動しているので、常に予防線を貼っていると言っても過言ではない。ただし「ここで失敗したから東京に戻る」という選択肢ではなく「じゃあ次はどこだ」という気持ちで移動している。なぜなら東京は、私たちにとって一回「失敗」している場所だから。

パートナーは20回以上人生で引っ越しているし、それは国を跨ぐものもあった。だから私たちも次、なんらかの形で国ごと引っ越すかも、とも思っている。子どもが北欧の学校に行きたいと言ったら引っ越すかもしれないし、自分たちがアフリカの事業をうまくやれたら引っ越すかもしれないし、ひょんなきっかけでどこかの国の海辺の家を手に入れたら引っ越すかもしれない。(山に住んだから、次あるとしたら海かも、という話をしている 笑)つまり、試行錯誤はまだ続いている。

「そんなにいろいろ社会の仕組みや裏側をリサーチしながら、試行錯誤が続くのは疲れる」と思う人がいると思うんだけど、そういう人には向いていないと思う。だけど「試行錯誤がたのしすぎ!大好物!」という人には向いている。ただ、それだけのことなのかもしれない。


パートナーと基本が一致するのを確認してから

仮説検証の過程で、一番頭を悩ませるのが「教育はどう考えてるの?」というところだと思う。私もパートナーもその点において、2人ともとことん話し合いをしたものの、もともと非常に近い発想からスタートしているので、あまりブレることがなかったのだと思う。

基本的に、日本の公教育を信じていない(または「教育」とされるもの全般を信じていないのかも)とか、誰かに子どもの教育を全面的にアウトソースする気がないとか、自分たちが受けて面白かったなあと記憶に残っている教育の要素が明確にあったりして、お互いの概念が形成されている。そういうものをさんざん話し合った。

基本方針が一致していない時点で、移住はまったく勧めない。まずしなければならないのは家族の対話。それをすっ飛ばして、移住は難しいと思う。ただ移住ということが契機で、パートナーと家族観を言語化することになるならば、それはよい機会だ。うまく言語化できない、と言って、相手に伝えることを怠ってきたなら、そのツケが巡ってきてしまうかもしれないが・・・。


準備ができていないのは、原風景を話し合っていないせい

要は「チームがオンボードされていない」のだ。つまり、チームとは、パートナーや子どもたち、という意味だ。チームに納得感がなければ、生産性の高い自発的な行動はみられないわけだが、移住でも同様。移住準備のすべてのタスクが、正当に配分されていない気持ちがあったら、多分チームが形成できていない証拠だ。

私が一番重要だと思ったのは、共有できる「原風景」をパートナーが持っているか、ということだ。そこへと自分たちの生活を向かわせて行こうとする原動力を、シェアしていないと、おそらくすべてにおいて細かい選択の一つ一つで、衝突し続ける。

前も書いた通り、これは「プロジェクト」なので、「プロジェクトの船」に乗船することを心に決めた者どうしは、WHY(なぜ)このプロジェクトをしたいか、が明確に共有されていなければならない。逆に言えばそれさえ同じなら、全く不安なく、移住が楽しいプロセスになる。というか、多分、パートナーシップそのものが、不安のないプロジェクトになりうる。


未来像が一致しないなら根本を考え直すべき

正直なところ、移住云々の前に、パートナーシップの問題が浮上しているケースも多い気がしている。コロナだね、家が狭いね、引っ越そう、という段階になって始めて、「ああ、パートナーってこういう人だったんだ」と気付くような会話が生まれている家族もあるのではないか。もしかしたら、「自分が何を望んでいるか」自体も気づいてなかった人も多い。

移住の失敗の多くは、「家族が納得しなかった」「家族がついてこなかった」など。私たちの土地の隣を買ったおじさんも、10年前に土地を買って開墾を続けているのに、「家族は川崎にいて、彼らはついてこなかった」と言っている。この土地、どうするんだろう?と思って、みている。(だがもう買ってしまった手前や家族の反発の手前、もう引き下がれないみたい)

拘泥したり硬直したりしている関係性が顕わになる絶好のタイミングであり、その時に、移住に踏み切る前に、今一度、足元を見直すべきかもしれない。意外と、いい精算方法に出会えてしまうかも。


ということで、今回は失敗しない移住のためには、移住先行政のお金の使い方を確認してね、ということと、パートナーと対話の準備を数年前から始めましょう、というお話でした。

次は「移住の際の教育の考え方」について書く予定です!

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