あれは、ぼく

夫婦のベッドで布団かぶって本を読んでいたら、娘が隣、夫がいつも寝ている側にもぐりこんできた。そのうち、寝入ってしまった模様。腹ばいで読み続けていると姿勢が苦しいので、布団の上に座って本を読み続けていたら(ちなみに半村良の「獄門首」)猫が寄ってきたのでひとしきり顔と手で撫で撫でしてると膝の上に落ち着いたので、続きを読んでいると夫が部屋にやってきた。

自分の場所の掛布団が膨らんでるのをみて、
「あれ、これは…ぼく?」
「まあ、あなたの一滴が大きくなったものなので、そうとも言える」
「この場面で、ある小咄を思い出した…」
と話し始めた。

ロシア文化に詳しい方はご存知のように、ロシアは「アネクドート」、小咄の文化。身近な男女関係や酔っ払いの話から社会的なこと、笑いに隠して為政者を批判する政治的なものまで、風刺をきかせればブラックユーモアありの、笑える短い話をお互い語り聞かせるなかなかに奥の深いもの。男性社会では、その場にあった気の利いたアネクドートを話せると、あなたの評価もあがります。

で、夫が語ってくれた小咄。

「酒場で酔っ払い同士が話をはじめてね、ロシアではよくあるように、酔っぱらったら誰でも友達になるから、彼らも友達になった。ひとりが自宅にその友達を連れ帰り、
『ここが玄関、ここが居間、ここがトイレで…』
と家の中を案内しはじめた。
そうして寝室のドアも開け、寝てる頭をさして
「あれが妻で、その隣がぼく」」

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