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魔女トレ~とあるアスリートへのプライベートセッションの内容を大公開〜

画像1

どうも。薬師寺です。

今回もスペシャルゲストライターです。

ご存知の方も多いと思いますが、、

「魔女トレをされてる魔女こと西園さん」


5月に魔女トレのコラボセミナーを愛媛で開催しました。

受講者の方も全員が新しい感覚に触れることで、それぞれが新しい気付きが生まれてました。

競技者でもあり指導者でもある中立的な立ち位置から人間の身体を診ることができる数少ない方なので、このコラムを読むことは購読者の方にとっても価値があるコラムになると思います。

実際にアスリートへのセッション動画や画像もありボリューム満点の内容になってます。教科書レベルです。

是非ご覧下さい。


じゃあ魔女さん(西園さん)にバトンパス👇👇

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始めまして。

舞踊家 西園美彌です。

Twitter上では魔女と呼ばれています。
私はクラシックバレエ・ダンスから学んだ身体の使い方を元に、趣味で行っていた身体能力開発研究によって得られた効果的なストレッチ&トレーニングについてを「魔女トレ」として発信しています。


このたび光栄にもゲストライターにお声をかけていただきました。


どんな内容が良いだろう・・・

感覚的な部分か、理論的な部分か、あんまり抽象的過ぎても読んでいて楽しくないだろうし、せっかくクローズな場所なので普段書いていないような内容にしようか、、どこまでマニアックにしようか、、などかなり迷いました(笑)


日々考えていることはあるため話題には事欠かないのですが、まとまった時間が必要になります。


そうなるとなかなか時間を捻出するのが難しかったのですが、声をかけてくださった薬師寺さんや、熱心なセラピストさんが期待して待っていると思うと、そんな軽い内容にはできないと思ったので少しボリューミーではありますが、良ければ最後まで読んでみてください。


1.自己紹介

<魔女の簡単な略歴>

・福岡県出身

・7歳からクラシックバレエを始める

・なかなか身体が柔らかくならない、上手くなれない、けれど夢はバレリーナ!そのためにできることを寝る時間以外ずっと考え続ける生活を過ごす(小4~中3)

・バレエから離れる(高校生)

・筑波大学体育専門学群入学を機に、ダンス部に所属。モダンダンス・コンテンポラリーダンス・創作ダンスを始める。

・筑波大学・大学院ではスポーツバイオメカニクス研究室(担当教官:阿江通良先生)にてクラシックバレエを力学的に分析・研究・論文作成。

・大学院卒業後、バレエ教師として仕事をする傍ら舞台に呼ばれることが増え、続けていくうちに共演者のレベルが上がり、東京芸術劇場や新国立劇場の舞台に立ち、もっと自分を試してみたいと思いドイツへ留学するも、自宅の事故で脚を骨折する怪我を負う。

・怪我から復帰&帰国後、冨田勲追悼特別公演にて『ドクター・コッペリウス』にて初音ミクのモーションキャプチャダンサーを担当。振付:辻本知彦(日本人初のシルクドソレイユダンサー、米津玄師PVやパプリカ振付等) 三東瑠璃ダンスカンパニー(Co. Ruri Mito)での創作活動・舞台公演に参加、その他大小様々な舞台活動を行う。Hiroto's show「天照道成舞降」NY公演にて主要な役であるアマテラスを担当。

・昨年度(2018年)、帝京大学水泳部指導をきっかけに「魔女」と呼ばれる。
→内容はこちら(「帝京大学水泳部指導〜魔女クリまとめ〜」)

・ダンスの世界では当たり前なことがスポーツ界で当たり前ではないことがあまりに驚きで使命感を感じ、ダンス界にある身体言語・指導言語・身体への認識と使い方やアプローチがもっと広まった方がいいのではと「魔女トレ」活動を始める(今ここ)

魔女トレとは↓↓


Twitterで 「魔女トレ」 と検索していただけると良いかと思いますが、私のプロフィールにあるモーメント(→こちらをクリック )にまとめていますので、具体的なものはそちらをご覧いただけたらと思います。


しかしながら、すでに魔女トレをご覧になっている方も中にはいらっしゃると思いましたし、まだどこにも公開していないものを書かせていただこうと思いました。


それはアスリートへの個人指導の様子についてです。

今回は、9月に大阪で行った十種競技の選手でSASUKEにも出場している伊佐嘉矩選手(@asiasi1313)のプライベートセッションを公開。(本人には掲載許可をいただいています)


読者であるセラピストの方々は個人と向き合うことが多いのではと思います。

その一つの参考にしていただけたらと思います。


2. 身体と動作の解析はまず“足踏み”から


プライベートセッションのスタートは、、

【足踏み動作】

図1

・足首の揺れ具合と再現性
・どの部分に乗っているか、体重のかかり方
・全身を見て、脚をどこで持ち上げているか(太腿?腸腰筋?全体?)
・全身を見て、軸の場所と揺れ方と再現性
・腕振りの左右差 etc.


足踏み動作から選手がどこの筋肉をどのように使っているかをまっさらな目で見ます。そしてそれを元に指導を開始します。


競技特性やその人の特徴や特質もありますので、すぐに良し悪しは判断せず、まず材料として置いておき、徐々に道筋を立てていきます。


動作について・・・

まず美しいか否か。
その次に身体の繋がりはスムーズか。


美しくない場合やスムーズではない場合、なぜそれが発生しているのか、見るときのセンサーを変えてみます。はじめはぼんやりと、、

徐々に筋肉系、骨格、、またぼんやりと見て全体としての軸、、など。


足踏み動作において、足首の揺れが大きい人の動きは“エラー”が大きい傾向があります。しかしそこに自覚がない場合がほとんどです。


魔女トレ~足指ストレッチ~(後ほど動画をあげています)を行ったあとは、足部の力みや沢山の骨の自動調整がなされ、そのエラーが減り、足と下肢、下肢と体幹の繋がりがストン!とハマるような、クリアな足踏みができるようになるといった変化が起きます。


セッションを通して改善させていくのは【動きの“エラー”】です。


“エラー”とは姿勢が歪む瞬間です。

それらはつまり力が抜ける瞬間であり、力が抜けるということは繋がっていた意識や筋肉の協調性が切れることを意味します。

・怪我によって筋肉のバランスが崩れている場合
・意識が弱い場合
・集中力の持続力が弱い場合
・何かしらの恐怖心が起こす場合

などがあります。


それらは選手本人に自覚があるかどうかや怪我受傷歴、日常の過ごし方を聞くなどして考えられる原因を絞り、本人に伝え、与えるトレーニングと合わせてそのエラーに繋がる要因を日常からも取り除いてもらうよう指示します。


ほとんどのエラーは左右差から来ていることが多いです。

左右差は怪我に繋がったりパワフルな力の発揮が阻害されている要因であることも多いため、それを整えるようトレーニングに移ります。

なお、左右差が根深いような場合はその日一回で修正することはできないとはっきり伝えます。


どんな人も左右差はありますが、その度合いを超えているものは改善するのが良いと思っています。


また、負荷の高い競技・ハイレベルの選手になってくるとその歪みも顕著に表れてきます。これも断定することができない領域なので漠然とした具体例は割愛しますが、目指すべきゴールはいつも同じです。


とにかく私は、、

ニュートラル[右と左 表と裏 前と後ろ 内側と外側]を目指します。


3.セッションの内容


今回のプライベートセッションの内容は、、

A. 足指と足首のコンディショニング
B. スクワット姿勢チェック&改善
C. 動作中の基礎力アップ


A. 足指と足首のコンディショニング

図2

・足指ストレッチ(ペア)

1.足首を底屈位にし、足指を丸めないように伸ばしてあげながら甲が伸びるように押す(ゆっくり数えて10~20秒)

2.足首を90度背屈、指もさらに90度背屈、足の真上から押す(〃)

3.指一本一本で同じことをする


・足指足首ストレッチ(セルフ)

1.しゃがみこんで手で踵を抑えつつ、つま先の方へ体重をかけて3方向に足首を曲げていく(中指方向-親指方向-小指方向)

2.足首は底屈位に伸ばし、足指は背屈させ、足指の第一関節第二関節を伸ばす

3.足首は底屈位に伸ばし、足指も底屈させて甲を伸ばす

図3


その様子はこちらです。動画で見た方が早いと思います。


「伊佐選手へのプライベートセッション(足指)」


これを行うだけでも本人の身体の感覚は変化します。

ex)地面が足に吸い付いてくる感覚がある、体が軽い、股関節がハマってるのがわかる、肩の力が抜けた、重心位置が変わった、どっしりと構えられる・安定しているetc.


B. スクワット姿勢チェック&改善

動画を撮っていましたが、あまりの微妙な違いに、これは見ても分からないな・・・と思いましたので割愛。



スクワットは「骨盤(仙骨)がくねくねしない。縦・横・ななめに動かない」のをよしとしています。



それが出来ている=股関節が使えているということになります。


C. 動作中の基礎力アップ

「課題は股関節なんです。」という伊佐選手。

(動画)「伊佐選手の走高跳び動作からの分析」

図4

※最初の方にある私の個人的な遊び(新たな舞踊表現に生かそうとしているw)部分は飛ばしてください。


伊佐選手の動きが美しくて、、

つい自分もやりたくなって、脱線してしまいました…笑


4.見えてきたエラーは背骨の歪み


さて動画では伊佐選手が自分の悩みを話してくれてますが、

その原因はなんなのか・・・と脚を上げてもらい、


見つけたのは動作中の背骨の歪み。


(動画)「伊佐選手の背骨の歪み」

これは洋服を着ていたら見逃す可能性が高いです。伊佐選手は筋肉自体は質の良い柔らかなものでしたので、洋服の上からでは私もすぐには判別できなかっただろうと思います。

(余談ですが、クラシックバレエのレッスンは、基本的に身体のラインを隠す格好はしません。それは指導者と生徒本人が身体の歪みを精密にチェックするためです。クラシックバレエの世界はそれがスタンダード。身体の姿勢は美と直結しますし、基礎の上に技術が成り立つということがこの世界では徹底しているため、そのこだわり方はスポーツの世界だけにいる方にとっては想像できない世界かもしれません。)

図5

その背骨の歪みの原因は伊佐選手自身も言っているようにハムストリングスや股関節まわりの筋肉の硬さも関係していると思いましたが、

その「ハムストリングスや股関節が硬くなる原因となる身体の使い方」を変えなければいつまでも硬くなるままであろうと踏んだ私はその修正すべき身体の使い方を探しました。


背骨の歪みの原因から…

(動画)「伊佐選手の背骨の歪みの改善策」


物理的に「ここ(まっすぐな位置)にいて!(笑)」とまっすぐを強要する私ですが
伊佐選手には感覚がない。汗 ←ふつうはない ふつうは無理


そこで伊佐選手には、

歪みが起きる部位とその様子を動画で見せたり、鏡で見て確認してもったり、自身の背骨を触りながら自分で修正させる方法を提案しました。


私が後ろで背骨を抑え、背骨が良い位置にいるときは、

「左足で床を押せている感覚がある」ということに伊佐選手は気づきました。


このように、人はまっすぐな正しい位置に身を置いたとき、初めて「床を押すとはこういうことか!」と納得します。


今までの床を押す感覚は「なんとなく」くらいだったものが、「強く押す」という鮮明な感覚になります。

図6

その位置で数回軸足の感覚を捉えてもらった後、片足踏切で飛んでみると、

身体が繋がっているため「いい!」という身体に変化したことを伊佐選手本人に感じてもらえました。


私は何度も質問します。

「何が変わった?」「どんな感覚?」「どこが一番変化した気がする?」

選手との対話は欠かすことはできません。選手が理解しているか、どんなことを感じているか、それを把握しながら進みます。一人で先走らないよう、いつも気をつけています。


私が見える変化は上げればキリがないのですが(足裏が地面をとらえた場所、重心位置、地面反力の矢印の向き、股関節のハマり方、膝の向き、体幹の入力、背骨の姿勢、腕の起動、肘の角度など)、


本人が気づいた身体内部の感覚が大事なので

自分からはあえて言わないようにしています。


また、どんなに気をつけていても私自身にも先入観が起きてしまうことはありますので、本人の言葉にはっとすることも多々あります。

そんなときは自分にも学びになります。このように必要な場合には言ったりもしますが、混乱を招いても意味はないので、言い過ぎないようにしています。


大阪にいる伊佐選手を私が何度も見れるわけではなかったですし、今のところ多くのアスリートに向けて私は基本的には問題となる身体の動きと原因を説明し、理解してもらいます。


原因がわかれば、選手は自分自身で修正できたり、身体改善の方向性を自分で導き出すことが可能になるものです。

私は選手本人が“自分で”できるようになることが最も大切と思っています。


「自分を知る、自分と向き合う」ことをしない選手は上にはいけないですからね

もちろん理解のレベルによって変えますが。



私の元に来る方は、どんなレベルの人であっても、たとえ感覚が鈍い人であっても、自分の身体へは興味を持っていただきたいし、

これは才能ではなくトレーニングで鍛えることは可能なので「向き合うこと」「感じるセンサーを発動させる訓練」「気づき」を与えることとそこに向かわせることは常に行っています。


これを指導するにはかなりの忍耐力を要します。
(だからこそこの領域を指導する人が少ないのかなと思う今日この頃)


伊佐選手の感覚の良さを生かし、また競技にも直結する方法として浮かんだのが

「手 ~ からだ(体幹)~ 脚」


身体の繋がりと動作の連動性を高めるトレーニングです。

連結が弱い部分は動きが止まったり、連鎖反応が出ないなどの“エラー”が出ます。


伊佐選手に伝えたポイントは、、

1.末端に意識を持つ
2.脚を上げる側の下腹の引き上げ(ドローインのようなもの)の感覚を持つ


末端に意識が行きにくい場合、手を温めてあげて感覚を目覚めさせます。

手を伸ばして体幹がついてきてほしい、けれどついてきてくれないならば物理的にその部位を持ち上げます。


そして左足を上げるとき骨盤が動きやすい(=不安定)という問題点を見つけたため、次の解決策として左足を下ろすときに重力に任せずコントロールするトレーニングを与えました。


スピードをコントロールして下ろし、なおかつ地面についた後もなにかをぎゅう~っとつぶすように地面に下ろす感覚を練習。


床を押すとはどういう感覚なのか?どうしたら身に付くのか?というと、何かを実際につぶせばいい。


動画では私の足を踏んでもらっています。私はよく自分の身体を使います。

その方が選手にやってほしい力加減を微細に指導できるからです。


<片足を上げる動作で見ているポイント> 

・骨盤が動かずできるか
・背骨を歪まずにできるか
・手と体幹と脚は繋がっているか
・軸足は床を押せているか

伊佐選手は少し発展系を与えた方が伸びていく気がしたので応用トレーニングも加えました。

・片足からつま先立ちができるか(走高跳の踏切りに関係するから)


もしできないなら基礎に戻って原因を修正。

基礎へ、基礎へ、基礎へ、、この繰り返しです。


背骨の歪みを改善させる方法の一つは

「背骨が良い位置(まっすぐ)にあるときの身体感覚を体験させる」こと。


右足を上げ下げするとき、軸になる左足。

動く足よりも軸足の方が大事!


背骨を歪ませないように何度か脚の上げ下げを行ってもらった結果、伊佐選手に感覚の変化が現れました。


(動画)「背骨の歪みを修正後」

最後に、、

今日やったことの復習・確認と、自分でやるときのポイントと方法を伝授して終了。


(動画)「伊佐選手へのプライベートセッションまとめ」

背骨の修正方法に加え、「軸づくり」の方法を伝えています。

ただの足踏みも、片足バランスになるからといって右へ左へと簡単に体重を移していては軸はできないです。


軸、とは一本に集約するのがいいと私は思います。

足は二本ありますが背骨は一本です。軸は背骨でつくりたい。


となると、二本の脚で動いていても背骨にある一本の軸は左右に移動させないという練習は有効だと考えます。


その軸づくりには体幹も、骨盤も、足の裏を使うことも全部大事。

その中でもまず初めに大事なのはやっぱり足指だと思います。


重力下にいて、足の上に立っている以上は。

足から積み上げることだと思います。

図7

伊佐選手のようにすでに高いレベルにいる方は、一度感覚をつかめたらそれをさらに高いものへと求めにいく探求心もあるし、応用も開拓していけると思うので、このような感覚的でマニアックな内容になりました。


動画の中で説明していることで文章にはおこしていない大事なポイントもいくつかありますので、文章だけではなく動画を是非ご覧ください。


魔女トレとプライベートセッションは日々進化しており、大切なお腹づくり(体幹づくり)もあります。

あぁ、お伝えしたいことが山ほどあります、、、が、、、またどこかで!


最後までお読みいただきありがとうございました。


西園美彌 Miya Nishizono

画像7


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図8

図9


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