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たくさんの人生のストーリーに耳を傾けること

Le:selfを立ち上げる前の私は、腎臓内科専属の心理士でした。
これはとても珍しい職域かと。

この領域で、大学院を出た頃の私は、ずっと学んできた認知行動療法を一生懸命使おうと必死だった。でも、うまくいかないことばかり。

たくさん勉強してきたはずなのに、臨床のスキルが自分にはまだまだ足りないことを強く実感し、自信を失う日々。

疾患とともに歩みながら、食事制限などの自己管理に取り組む患者さたちの手助けを、どんなふうにやっていっていいのかが本当にわからなかったし、お手本もなかったし、毎日が手探り状態。

だけど、わたしを採用してくれた腎臓内科の部長先生が、

その人の人生のストーリーを聞いてごらんよ。

とわたしに一言アドバイスをくれたんです。

部長は、患者さんの心理面をとても大切に診療されていて、これは心理士さんが必要だということでわたしを雇ってくださった方。
心理学や哲学をとても勉強されていて、1日に30人近い患者さんたちの話を短時間で聞きながらも、その中に過去の話だったり、生まれた場所だったりそんな対話を取り入れているのが印象的でした。

まずはまねしてみよう…そう思い、わたしは患者さんの幼い頃の話なども面接の中に取り入れていきました。

そうすると、患者さんがぐんと良い方向に変化していくことが格段に増えたんです。

患者さん1人1人にこれまで生きてきたストーリーがあって。

食行動を含めた自己管理の仕方
疾患との向き合い方

すべての答えはそのストーリーの中にあるように思えました。

でも一方で、このストーリーを聞くということがなぜ機能するのかが私は知りたかった。
臨床をまずは感覚でやってみることもときには必要だけど、やっぱりそこに理論や知見が必要だと思うから。プロとして、自信を持ってやるには、臨床と理論の行き来が不可欠だと私は思っていたし、今もそう思ってる。

そのときに出会ったのがAcceptance and Commitment Thrapy(=ACT)という手法だったんです。

避けられない痛みを受け容れながら、
有意義で豊かな人生を切り拓く

このACTの根本の考え方が、腎臓内科の患者さんに非常にフィットしていた。

それに、ストーリーを聞くことで、その人の"価値"が明確になっていたからこそ、不安などの感情との付き合い方や、行動が変化しているのだということも、この理論が理解させてくれた。そして、このやり方でいいんだという自信を私にくれた。

これがわたしとACTとの出会い。

わたしはACTというセラピーは、

人の人生に寄り添った
やさしく、しなやかな強さをもつセラピー

そう説明することが多い。

"価値"を明確にするときは、やはりその人の人生のストーリーに耳を傾けることが、よくあるから。

1人1人にいろんなストーリーがある。
いいもの悪いものなんて決してこちらが勝手に決められないようなストーリーが。

これを一緒に共有させてもらう。
そうすると、自分がよりよく生きることを考えさせられることさえよくある。

セラピストにもクライエントにもACTは働きかけてくる。
そんなセラピーなのだ。

そう思えば、私が腎臓内科に魅了されたのも、何千という人生のストーリーを聞かせていただいたからだと思う。

私の"価値"自体が、

様々な人生のストーリにふれること
そして、より良く生きることの大切さを伝えること

なのだと思う。

だからこそ、ワークショップで、ACTについて話す機会はどれも貴重(たぶん、よく、すごく嬉しそーに話してると思います笑)。

そして、これからも、自分の1つ1つのケースでいろんな人生に丁寧にふれていきたいし、
いろんな事例を聞く機会を持ったりしたいし。

あとは、自分の大切な家族もどう生きていきたいのか。そんなことも知りたいし、尊重したいなと思う、そんな今夜です。




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