ブダペスト2

中堅サッカークラブで最高のファン体験を作るには 〜②スタジアムへのエンゲージメント〜

こんにちは!ESSMAサミットレポート第二弾です。第一弾はコペンハーゲンのビジネスモデルチェンジについてなので、こちらも宜しければご参照ください。

サッカークラブ経営ってむずい

突然ですが、仮にクラブがビジネスとしてファンに提供できる価値が何も無かったらこんな感じで経営が追い詰められます。

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サッカーは得点が少ししか入らないので、大数の法則が働きにくくメジャースポーツの中でもっともジャイアントキリングが起きやすいスポーツとなっています。(サッカーデータ革命という本に詳しく乗っています)

なので、選手や監督にかけた予算に対して必ず結果が返って来るとは限りません。かけた投資に見合うリターンがでるかと言うと、必ずそうではないのが企業経営の常ですが、サッカーは拍車を掛けて運要素が大きいということです。

因果でいうと結果はコントロールしづらいです。ただそれで試合の結果に全てを委ねてしまうのは経営の怠慢なので、せめて原因をコントロールできるように努めます。

サッカークラブの収入は移籍金を除くと90-95%くらいが以下の3つに分類されます。割合は違いますが大体この3つです。
1. スタジアム収益(チケットがほとんど)
2. 広告収入(スポンサーなど)
3. 放映権(大体リーグで契約して再分配されます)
そうすると、ビジネスサイドとしてコントロールできそうな領域が決まってきます。

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クラブがファン体験を最大化する方向性としては以下の通りになります。ROIと書いてますが、ファン体験が良いとお金が儲かるのでストレートにそう書いてます。重要なのは試合以外の部分にもベットすることです。

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お前・・・総合商社で何学んだんだよって感じのグラフですみません。
今回はスタジアム収益の部分にフォーカスした話を書きたいと思います。

偉い人達が感じた限界

The Hoopsの愛称で親しまれる、140年の伝統を持つ青と白がチームカラーのクラブと言えば?

そう!皆さんご存知QPR(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)です!!!
QPRのホーム、The Loftは100年以上前に起工され、毎試合15,000人近くの観客が訪れます。

最近QPRのCEO、Lee Hoos氏がThe Loftに関してこんな発言をして話題になりました。

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『ホームスタジアム大好きだけど、小さいし古いし、試合の日以外は使えないのはプロクラブとして持続性低いんですよね』

また、NFLの強豪ダラス・カウボーイズのオーナーであるJerry Jones氏も、スタジアムの提供価値に関して以下の様なコメントをしています。

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『スタジアムビジネスはテレビが一番の競争相手だけど、ライブ観戦やソーシャル体験には特別な魅力がある』

シンプルな言葉ですが様々なインサイトが隠されていて、純粋に『気軽に試合を観る』為のスタジアムという存在はテレビやDAZNなどストリーミングサービスの登場で既に時代遅れになってきているということです。

なので、試合日にはファンに特別な体験をしてもらうことはもちろん、試合日以外も利用できるエンタメ空間としてスタジアムビジネスを位置付けることが重要になってきます。

商業不動産としての空港

LEGENDSというスポーツ業界のコンサルティングを行う会社が、航空業界についてのインサイトを例に説明しています。

一言で言うと、空港って飛行機に乗る以外の目的で行っても結構楽しいよね、ということです。

美味しいご飯は食べられるし、世界各国のお土産は買えるし、免税店があったり、家電を売っていたり、文化体験のコーナーなんかも増えています。

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私は羽田空港が結構好きで、何回かフライト前の友達に会いにご飯食べに行きました。残念ながら公式な数字は発表されてないですが、飛行機に乗る目的以外でも、羽田空港に来る人はそこそこいそうです。

消費行動が多様化しているので商業不動産の価値として、究極的には消費者が何でもできることを求められると思っています。

田舎ではイオンに行くと週末が完結するのと同じで、映画館やスーパーなどワンストップソリューション型の商業不動産が増えており、多様化したニーズどんと来い!と言う構えです。最近は屋上にフットサル場までついてます。

スポーツ施設は一方で、目的に特化しているのである程度設計が決定されちゃいますよね。なのでどうしてもスポーツを中心に考える必要があるのですが、それでも試合日以外に色々な使い方をしている例もあります。

たのしいクラブ、たのしいスタジアム

スイスのヤングボーイズはデータ分析の上子供達にフォーカスして、スタジアム周辺でマーケティング活動をしています。

まずは試合の無い日。子供専用のファンクラブを作ったり、スタジアムでお誕生日会を開いたりしています。スタジアム内の会議室に教室を作って、地域の小学校にクラブチームができる社会貢献のブレストをしたり、スタジアム近郊でキャンプしたりします。

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クラブもスタジアムも身近に感じますし親はありがたいと思います。これ草の根活動のように感じるかもしれませんが、子供達はユニークIDをそれぞれ持っていて、参加したイベントは全てDBに保存されています。

イベント参加率の高い子供達ほど、両親を連れて試合に来てくれます。

試合日もかなり楽しそうなアクティビティが満載です。

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これもうやりたいですね。みなさんもやりたくないですか?フットボールビリヤードとか。お父さんとして良いところ見せたいです。

テクノロジーを使った例で行くとAT&Tスタジアムには選手と写真が撮れるARボードが置いてあります。SNSバイラルも生みそうな設計ですよね。

他にも大規模開発をする例ですと、ブリストルシティのホームスタジアムであるAshton Gateは複合施設として生まれ変わる計画を立てました。

年間でサッカー26試合、ラグビー18試合で44日/365日しか稼働していないので、もはやスタジアムは商業不動産エリアの一環として位置付けてしまい、ホテルやビジネスコンプレックスを中に作って行こうという大改造計画です。

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ここで得られた営業CFを最大化して、スポーツサイド(監督や選手)に再投資して不安定なサッカークラブ経営の安定化を図ろうとする計画です。つまり、たのしいアクションのみならず雇用やコミュニティを創出し、クラブが街そのものと一体化する形ですね。

これ実は愛するスパーズが最高な形でやっているので、良ければこちらもご覧下さい。

まとめ

お伝えしたいのは、試合日のスタジアムにばかりフォーカスしても上手く行かないですね、ということです。非試合日、かつスタジアムの外から既にマーケティングは始まっています。

本来もうちょっと複雑ですが、大体以下のようなステップを踏んでファンエンゲージメントは高まると思います。

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SNSや屋外アクティビティで潜在層と繋がりを持ったり、スタジアム周辺で働いている、飲食店があるなどで身近な気になる存在になります。

スタジアムに来た後も、試合結果以外の満足ポイントを作っていかないといけません。

トッテナムのスタジアムはハッシュタグ付でインスタ投稿するとモニターに映るチャンスがあります。

本当に細かい施策から大規模な投資まで紹介しましたが、我がクラブも試合結果に左右されない経営体制を作って行きたいと思います。トッテナムのステマ気味ですみません。w

それではまた。

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