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津川恵理─寧波博物館/カルティエ財団現代美術館/輪の家

津川恵理 | ALTEMY (東京都)

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寧波博物館|王澍

王澍は、中国江南地方の古民家の外壁レンガやタイル等を再利用して、この博物館を現代建築へと昇華した。
100万枚を超える瓦礫は、断面部を魅せながら外壁へ敷き詰められ、古来の建築パーツから伝統文化の情報発信フィルターへと変換させられる。設計によるコントロールと施工上生まれた偶然性の境目が想像し難く、ある意味中国の施工精度を上手く利用した建築ともいえる。マッシブなボリュームを定義する絶妙に傾いた外壁ライン、交差する建築内のボリューム/空間構成、ヴェニスビエンナーレでの作品を体現した外壁など、実際に訪れると、王澍の設計に対する凄まじい熱量を感じることができる圧巻の現代建築である。

カルティエ財団現代美術館|Jean Nouvel

敷地と道路の境界に凛として建つ一枚の巨大なガラス壁に、ハッと気付かされたものがある。通常ファサードとは、都市に対峙する建築の面を意味する。美術館の建築と切り離され、一面だけで成立するファサードだけの建築が、虚構/現実、内/外といった、人の認識や感覚に矛盾を引き起こす現象をつくり出す。時間によりその面が映し出す表情は刻刻と変化し、建築を取り巻く環境を可視化するインターフェイスでもある。「Function」としての建築ではなく、「Phenomenon」を作り出す新たな意味を纏った、概念の拡張をおこなう現代建築。

輪の家|TNA

軽井沢の森の中に佇む別荘。タイトルにもなっているこの建築を特徴づける横縞状の外壁は、構造上の要となり梁の機能も果たしている。木造でありながら構造壁を持たず、柱の外側にボルト接合された厚板が、構造力学上の梁の機能を併せ持つため、外壁でありながらラーメン構造となっている。電気設備・機械設備のダクト類やユニットなども、シンプルにまとまった建築に美しく納まっている。構造材と意匠部材が違和感なく融合し、エンジニアとの共生が上手く図られた現代建築といえる。


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