見出し画像

【量子化学その1】はじめまして。量子化学をやってみました

はじめまして。新宿で働くOLです。
最近、量子コンピュータに興味を持って調べていました。
パワーポイントとかMacとか得意なのでコンピュータの話は分かるかな、と思ったら、数学の話ばかり出てきてびっくりしています。

量子コンピュータの用途はいくつか考えられていますが、その中で最も期待されているものの一つに量子化学があるみたいです。
どっちも量子だからきっと相性がいいんですね!

高校の頃、化学で、物質は原子から出来ていて、原子がくっついて分子になって、原子や分子の周りには電子がある、というのを習ったと思います。
量子化学は、化学の中でも電子の話を深堀りしていて、molの話とかは出てきません。

分子の周りには、電子が住める「家」があって、その家のことを「軌道」と呼びます。
電子たちはみんな、居心地がいい家に住みたくて、いろいろと引っ越しをします。

量子化学では、電子の気持ちではなくて、不動産屋さんの気持ちを考えます。
電子はいろんな家に住んだり引っ越したり揺れ動きますが、
不動産屋さんからしたら、大体いつも、いい家は埋まっていて、微妙な家は空いているってことになります。
どの家がどれくらい埋まっていて、どの家がどれくらい空いているかを知るのが量子化学の目的です。
つまり、どの軌道に電子が入っているかを知りたいってことですね!

さて。当たり前ですが、1つの家には、1人しか契約ができません。
私の家に知らない人が契約して引っ越してきたらびっくりしてしまいます!
電子の世界でも、1つの軌道には1電子しか入れません、と言いたいのですが、電子の場合は少し事情が異なります。
電子には「スピン」というものがあり、アップスピンとダウンスピン、あるいはαスピンとβスピンという2種類の状態を持ちます。
そして、アップスピンとダウンスピンは、なんと! 同じ家に住めるのです!

それだと話がややこしい場合には、スピンと軌道の組み合わせを「スピン軌道」と呼んで、ひとつのスピン軌道には電子は1つしか住めない、と考えることもあります。

ここまでのまとめ

・量子化学は分子のまわりにいる「電子」が住む家を不動産屋さんの気持ちになって考える学問
・電子が住む家を「軌道」と呼ぶ
・電子にはアップスピンとダウンスピンがある
・どの「軌道」にも、同じスピンの電子は1つしか住めない。スピンが違えば、2つとも同じ軌道に住むことができる
・軌道とスピンを組み合わせて「スピン軌道」と呼ぶ。同じ「スピン軌道」には電子は1つしか住めない

「ひとつのスピン軌道には、ひとつしか電子が住めない」、という話を数式で表してみましょう。

本当は積分とか出てきて難しいのですが、ちょっとそういうのは分からないので省略します。
数式といっても、高校で習うような数学の式みたいなのじゃなくて、変な記号で表します。
記号の並びは、数学的には「掛け算」に対応していますが、どちらかといえば「右にあるものに、何かの操作をする」と考えた方が分かりやすいです。

お客さんがやってきて、家(スピン軌道)を契約しにきたことを表す記号を a† と書きます。

家には、番号をつけておきましょう。例えば3番目の家を契約に来た場合 a†(3) と書くことにします。

不動産屋さんの帳簿を考えます。帳簿の書き方は後で変えるのですが、ここでは、誰も契約していない帳簿を |> と表して、契約が増えるごとに数字を付け加えていくことにします。

例えば、こんな感じです。

お客さんが3人並んでいます。帳簿は空です。

a†(3) a†(1) a†(2) |>

最初に並んでいたお客さんが、2番の家を契約しました。

a†(3) a†(1) |2>

次に並んでいたお客さんが、1番の家を契約しました。

a†(3) |12>

最後に並んでいたお客さんが、3番の家を契約しました。

|312>

帳簿は |312> になりました。

さて。おかしなことが起きました。1番の家は誰かが住んでいるのに、別の人が1番の家を契約しました。

a†(1) |312>

大変です。こんなミスをしてしまったら不動産屋さんはおしまいです! 不動産屋は消えてなくなり、帳簿も全てなくなり、無になりました。
無のことを、数学の世界では0と表すのでした。

a†(1) |312> = 0

0は空の帳簿 |> とは異なりますので、注意してください。

帳簿チェック!

けれど、誰にでもミスはあるものです。後で帳簿を見て、ヤバかったらごめんなさいしましょう。
私も毎日上司に怒られてます。ほんとごめんなさい。今度から気をつけます。

帳簿があったとします。

|121>

これは、1の契約が2つあってヤバいですね。見たらすぐ分かります。
上司に怒られるやつです。「契約前に確認しろと言ってるだろ!」ごめんなさいごめんなさい気をつけます。

けれど、帳簿がデカいと見るのも疲れます。
帳簿が自分で勝手にミスを見つけてくれたらいいのになー。

と、思ってたら、帳簿に変な仕組みがつきました。「反対称性」と呼ばれているものです。
狐につままれたような話ですが。こういうものだと思ってください。

もしかしたら疑問に思った人もいるかもしれませんが。
契約に来る人の順番って、何か関係あるんでしょうか?

例えば、

a†(1) a†(2) |> = |12>

です。

そして、

a†(2) a†(1) |> = |21>

です。

|12> = |21>

となるでしょうか?

ここでは、あえて「ならない」と考えて、

|12> = -|21>

とします。

「え、なんでマイナス? どういうこと?」ってびっくりしますが。
計算の都合上ついてるだけで、どっちも、1の家と2の家が契約されていることには変わらないです。

ここで、ヤバい契約になりそうなパターンを考えます。

a†(1) a†(1) |> = |11>

次の日も、ヤバいパターンになりました。

a†(1) a†(1) |>

けど、この日は、並んでる途中で、最初に並んでいる人が一旦列を抜けて、後ろに並び直しました。

a†(1) a†(1) |>

たしか、順番が入れ替わったら、マイナスを付けるんでしたね。

a†(1) a†(1) |> = -|11>

あれ? 変な感じです。前の日と左辺は同じなのに、右辺にはマイナスがついています。

|11> = -|11>

中学校の数学を思い出してください。

x = -x
移項すると
2x = 0
両辺を2で割ると
x = 0

同じように、帳簿を計算すると

|11> = 0

になります。

アカン帳簿が無になりました!

冒頭のアカン帳簿を持ってきます。

|121>

実は、帳簿の順番も、ひとつ入れ替えるとマイナスを付ける、というルールで入れ替えができます。

まず、一番右と真ん中を入れ替えます。
|121> = -|112>
一番左と真ん中を入れ替えます。
|121> = -|112> = |112>
一番右と真ん中を入れ替えます。
|121> = -|112> = |112> = -|121>
なので、
|121> = -|121>
になって、
|121> = 0
が分かります。

アカン帳簿が無になりました。

試すと分かりますが、
|123>
のような、いい帳簿の場合は、
|123> = -|123>
の形にすることはできません。

帳簿の付け方にこういうルールを導入すると、どういうのがアカン帳簿かを、帳簿自身が知っている、ということになります。

それ、余計に面倒くさくない?って思います。次回以降見ていくと分かるように、実際面倒くさいです。
けれど、帳簿自身にそういう性質を持たせることが重要なのです。

まるで、飲むだけで痩せる薬や、一瞬で素因数分解ができるコンピュータのように胡散臭い話ですが、信じることにしましょう。
次回に続きます。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
8
量子コンピュータと美容に興味があります! アイコンは本人ではありません。
コメント (1)
個人的に好きな話でした。興味深い視点でした。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。