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金利が上がると、どうしてグロース株が売られるか

今日の話は、ある意味教科書的なものですが、「金利上昇局面(日本を除く先進国)においては、どうしてグロース株が売られるのか」です。アドバイスとなると、変な意味を持つので、あくまで知識としてみていくことにしましょう。
 

昨日2022年8月の米消費者物価指数(CPI)は今年で最も注目された指標だったかもしれません。というのも、昨日まで株価も上昇基調であり、FRB高官たちの意見なども見ても、インフレピークアウトがどのあたりになるのか(もうピークアウトしているのか、まだまだ続くのか)を確かめたいという市場関係者が多かったからです。
 
それが、今回の結果。市場予想8.0%から、8.3%と上昇。コア指数も市場予想6.0%から6.3%と伸びが拡大した。つまり、米インフレはまだまだ続いているということを示したというわけです。
 
となると、9月(20、21日)にある、FOMCで0.75の利上げは確実でしょうし、11月FOMCまで利上げペースは緩めない(緩めないどころか、1.00もあり得るくらいの話も出ている・・・)。となると、日米金利差は開くので、為替は円安ドル高でしょうし、株式は、(株でなく債券にお金が流れるため)下落。
 
そして、ナスダックなどのグロース市場は大きく下げるのです。

では、どうして金利が上がると、グロース株は売られるのでしょうか。

どこから解説すればいいのか悩むところですが、まずは言葉を知りましょう。

 
グロース株というのは、成長株と思うといいでしょう。明確なくくりがあるというわけではなく、売上とか利益の成長率が高くて、将来にわたり大きな株価上昇が期待できる企業のことです。

なので、一例をあげると米国「テスラ、メタ(旧フェイスブック)」などはこのくくりですし、ハイテク株中心に構成されるナスダック総合指数に入るような企業です。日本だと、マザーズ上場銘柄などが該当すると思いますが、日本で解説すると金利の部分で?が出てくる人がいると思うので、今回は日本ではなく、米国中心でみていきます。


他方、バリュー株というのは、割安株です。利益や資産から導かれる「企業価値」と比較して、株価が割安のまま放置されている企業のことを指します。一例をあげると「ビザ、メルク、コカ・コーラ」などはこのくくりでしょう。
 
で、今年に入ってから次々と利上げしているので、ご承知の方も多いと思いますが、今米国金利(10年もの国債金利)は非常に上昇していて、3.474%まで上昇しています。

上昇しているのは、市場の原理原則で決まる代表的な長期金利(10年物)ですが、これが今後どうなっていくかまだわかりませんが、米連邦準備理事会(FRB・米国の中央銀行)がコントロールできるのは、短期金利(FF金利)であって、金融引き締め策としてこの短期金利を上げている。そうすると、それを上回る長期金利も上がっていくので、こうなると(ここから株式相場と連動する話ですが)、株の値上がり益を狙うより、債券の金利のほうがいいという流れになるんですね。そのため、株を売る動きが強くなって、株式相場には悪影響だということです。
 

ここで、株価という数字ですが、これは何を表しているかを考えてみる必要があります。
 
株価というのは、株価=EPS(1株あたり当期純利益)×PER(株価収益率)なんです。

 EPS(1株あたり当期純利益)は、1株あたりの利益ですから、つまり当期の利益を発行済み株数で割ったものです。

PER(株価収益率)は、株価が割安か割高かを見る指標であり、今の株価が1株あたり利益(上記、EPS)の何倍になっているのかを表すものです。一般的に成長の高い会社ほど、将来の収益拡大の期待が株価に織り込まれるので高くなります。
 
つまり、株価というのは、EPS(=今の1株あたりの利益)とPER(=これは市場からの期待値)の掛け算であるということ。なので、私は、株価は「今(EPS)」×「将来期待値(PER)」と覚えていますが、「今と将来」の掛け合わせでなるということです。
 
しかしながら、株価というのはどうやって決まるかというと、結局は受給ということにはなるのですが、株式相場というのは、将来の値上がり(キャピタル)を見込んで仕込むものなので、特にこれから成長していく予感がするグロース株(成長株)は、このPERは期待先行して、大きくなるわけです。

ただ、この期待はあくまで、期待ですから思ったより成長しないリスクがあって、これはハイリスクハイリターンということになる。

で、金利上昇の局面だと(日本は金利は上昇していないのにマザーズは下落しているが)、この期待先行の投資法よりも、確実に利益が見込める債券で金利獲得していくほうがいいという動きになる。これは当然なのです。そして、無理して期待先行のグロース株に行くんじゃなくて、そもそも、バリュー株って割安なんだから、バーゲンセールのようなもの。なので、ここに見直し買いが入る。つまり、「債券で金利収入+バリュー株投資」で行うほうが、リスクリターンが見合っているという投資家が増えるのです。
 
なので、(やっと結論)金利があがると、グロース株が売られるという形が多くなるのですね。
 

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