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在職老齢年金制度が見直される

厚生労働省は働く高齢者の年金を減らす制度である「在職老齢年金」を見直します。


これは消費増税に伴い今年から本格議論されていく社会保障制度改革の一つで、その司令塔とされるのが「全世代型社会保障検討会議」(議長:安倍首相)なのですが、ここで議論されていることと考えるといいでしょう。

今、新聞やニュースなどで「出生数90万人割れ」とか「雇用保険の適用緩和」とか、ちらほらと出てくる高齢者の働き方に関連するニュースは、この会議で議論されて(決定しそうな部分)が見えてきているという認識でいいでしょう。で、今回の「在職老齢年金」もその一つです。

ちなみに、「確定拠出年金の掛け金の拠出期間70歳まで延長」という先日のニュース。

これは厚生労働相の諮問機関で「社会保障審議会」ですが、今(2019年秋)から審議し年末までに改革案としてまとめて、2020年の通常国会で法案を提出するのです。

つまり、今日のニュースも「来年の通常国会を通過するために、今話し合われている内容」と思えばいいわけですね(なので、決定ではない)。

さて、在職老齢年金ですが、「職が在るときの年金」ということですが、60歳を過ぎて働いて社会保険に加入している場合(この場合は特別支給の老齢厚生年金)、年金が「在職老齢年金」という名称に変わると考えるといいでしょう。在職老齢年金になると給与と調整されて減額または支給停止されてしまいますね。

在職老齢年金の仕組みは難しく解説されがちですが、簡単にまとめてみます。

・老齢基礎年金は対象外。老齢厚生年金のみ
・65歳以上と65歳未満で計算仕組みが異なる
・加入年金額は除く

次に、年金が減額される基準となるのは、
・65歳未満は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以上
・65歳以上は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以上


です(なので、65歳未満は合計28万円以下なら年金減額なし。65歳以上なら合計47万円以下なら年金減額なし)。ここからの計算方法が異なりますが、65歳未満のほうが若干複雑です。

上記の部分、65歳以上で47万円を超える月収がある人は年金が減るわけですが、ここが今回の改正で62万円に引き上げていくということです。

難しいので言葉の解説をしておきますと、基本月額とは、老齢厚生年金(65歳未満では「特別支給の老齢厚生年金」になる)を12で割った額のことです。老齢厚生年金は年額なのですね。ここでは加給年金額は除きます。


次に、総報酬月額相当額です。総報酬月額相当額は「標準報酬月額」に、「直近1年間の賞与を12で割った額」を足したものです。ここも難しくなりますが、標準報酬月額とはその人の月給と思えばいいのですが、よく健康保険の保険料額を計算するのに「4・5・6月」の平均の月額が使われるという話がありますね。この数字です。ここに直近1年間の「賞与(ボーナス)」を12で割ったものを足せ、ということです。

65歳未満の場合、「特別支給の老齢厚生年金」の基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以上で減額対象ですが、ここからの計算式は、生命保険文化センターのページが分かりやすいです。


他方、65歳以上の計算方法は簡単です。計算式では(総報酬月額相当額+基本月額-46万円)×1/2とされていますが、基本、「オーバー2分の1カット」と覚えます。

65歳以上の人で「報酬37万円で老齢厚生年金が20万円の場合、合算は57万円」。47万円を10万円オーバー。なので、このオーバー分の半分5万円カット。なので、報酬37万円と15万円の老齢厚生年金(在職老齢年金)。

65歳以上の人で、「報酬47万円で老齢厚生年金が20万円の場合、合算は67万円」。47万円を20万円オーバー。なので、このオーバー分の半分10万円カット。なので、この人は報酬46万円と10万円の老齢厚生年金(在職老齢年金)。

これが今回の改正案で単純に、報酬との合算で62万円を超えているかどうかの計算をするだけだと思いますが、詳細はまだ不明ということで。今後判明してくると思います。

こういう制度を議論するときに、もう少し「自分事」としてお話しできるといいですね。セカンドライフという概念はもはやないと思いますが、いつだって花火を打ち上げられるように。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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