【海外不動産投資詐欺】悪徳不動産紹介屋の手口と対処方法 元上場企業社長コラムVo.2
UAEで常に横行している日本人が日本人を騙す不動産詐欺行為。また、詐欺ではないが詐欺のような手法で、悪い取引を行っている『不動産紹介屋』が後を絶たない。
ではなぜ、日本市場では少ない詐欺や詐欺手法がUAEで横行しているのか?
実際に被害に遭われた方の証言を元に、その原因を紐解き、対処方をお伝えしたい。
『不動産業者』と『不動産紹介屋』
まず日本の場合、不動産会社は宅建業法に基づき『宅地建物取引業免許』を取得する。大手デベロッパーも町場の仲介業者も、賃貸売買問わず、全ての『不動産業者』が保有している。
その一方、不動産業者免許を取得せず、物件や顧客の紹介のみを行い、取引時に免許を保有している会社の名義で取引を行い、裏で業務委託料や紹介料等の名目で手数料の一部を受け取っている『不動産紹介屋』(日本では俗にブローカーと呼ばれる)が存在する。
日本では契約前に『宅建業法第35条』で定める『重要事項説明書』を宅建業免許を保有する業者が発行し、宅地建物取引士が説明をしなければならない。よって、ここで取引関係者がどこの誰であるのか、物件の詳細全てが理解できる。
説明を受けた後に疑問が生じ、解決できない問題であれば、このタイミングでも当然契約を断ることができる。
仮に怪しい『不動産紹介屋』の紹介であっても、宅建業者免許を保有する会社の責任で行われる取引であり、日本の法律に守られながら取引を行うことで、詐欺に会う可能性が極めて少ない。
UAEはどうか?
日本と同様に『不動産業者』と『不動産紹介屋』が存在するが、この『不動産紹介屋』が非常に厄介である。
そもそも、日本のように契約前に行われる『重要事項説明書』が存在しない。物件の詳細は契約書に記載されているのだか、日本のように『宅建業者』つまり、ライセンスを保有する企業の情報の記載や、印鑑やサインが必要とされていない。
日本では、全ての契約行為に『宅建業者』の責任が問われるが、UAEはデベロッパーである売主と購入する買主にのみ責任が依存する。
ここが大きなポイントである。
つまり、買主である一般顧客は、不動産業者の社名が契約書に記載されないことで、どこの誰がライセンスを保有しているのか、若しくはライセンスを保有していないのか分からないことになる。
自身で調べることはできるが、まさか不動産を紹介してきた人間がライセンスを保有していない、若しくはライセンスを借りている等と言う考えに至らないことの方が多い。
さらに、ライセンスはデジタル発行であることで、適当に偽造している『不動産紹介屋』も存在している。
一般的な流れを簡単に説明する。
①まず、UAE現地でライセンスを保有している企業は、デベロッパー(売主)と代理契約を結び、物件情報を取得する。
②ライセンス保有企業は、独自の広告やネットワークを使い顧客に物件を紹介する。
③顧客が購入意思表示を示すと、デベロッパーに対しKYC等の個人情報を送り、申込金を支払う。
④その後、SPAと呼ばれる書面にサインを行い契約が成立する。
ここで、②番について詳しく掘り下げたい。
説明にある『独自のネットワーク』に『不動産紹介屋』が含まれることになる。
ライセンスを保有している企業は、顧客を抱える企業若しくは顧客に物件を紹介してくれる個人に協力を求める。そして、制約に至った場合はデベロッパーから受領する手数料の一部を報酬として支払う。
このように、契約書にライセンス企業の情報を記載する義務がない事で、ライセンスを保有しなくても、ライセンスがあるかのように振る舞い、不動産の紹介から売却まで行うことが可能になっている。
このライセンスを保有しない『不動産紹介屋』が多くの詐欺や詐欺まがいの取引を行い、UAE(ドバイ・アブダビ)の不動産市場全体のイメージを悪化させている。
『悪質不動産紹介屋』の手口
そして次に、詐欺の手口と詐欺まがいの行為について解説する。
最近発覚した、詐欺ではないが簡易情報のみでセミナーを開催する『悪徳不動産紹介屋』の手口について。
この『悪徳不動産紹介屋』はアブダビ不動産の新プロジェクトが公開される事前情報を、現地ライセンス保有企業から紹介を受け、11月7日にウェビナーを開催していた。
セミナーの内容はひどいもので、現地通貨も間違え、ネットにある情報をあたかも自社の知識のように語っていた。アブダビのリアルな情報や不動産の知識がなく、聞いていて恥ずかしさすら覚える内容であった。
この会社は日本人女性が代表を務めるオーストラリア法人のK社で、当然アブダビ法人のライセンスを保有しない『不動産紹介屋』である。
さらに、セミナーの集客を担当している日本法人2社。謎の海外不動産イベントを日本で毎年開催して集客をする法人P社と、新宿にあるコンサル会社A社。この3社共同でのセミナーであった。
前述に記載した通り、アブダビの通貨やビザの条件等、説明していた情報の多くに間違いがあった。問題なのは、顧客がこの嘘情報を信じて購入したとしても、この3社は責任を問われないこと。
なぜなら物件を紹介しただけで、契約行為に責任が生じないから、現地ライセンス保有会社から一部手数料を受け取る、全くリスクのない、コストのかからない『不動産紹介屋』だからである。
更に、この日本法人から多額の手数料を徴収される可能性すらある。実際にサポート費用の名目で契約後に手数料を請求されたケースも多く存在している。
セミナーに参加した当社スタッフが、『御社はライセンスを保有していますか?現地で不動産の他の取引を行えますか?』とセミナー中に質問を投げ掛けた。すると、この女性社長は悪びれることもなく、『現地のライセンス保有会社と提携しているので問題ありません』と回答した。
何がどう問題ないのか全く理解ができない。
確かに、物件を紹介し契約を成立させる事はできる。がしかし、問題は契約後の完成までのフォローや完成後の賃貸サポート、管理、若しくは転売等、不動産に関わる全ての業務はアブダビライセンスを保有していないとできない。
恐らく質問をすると、また『現地のライセンス保有業者と提携しているから大丈夫です』と答えるだろう。
全く大丈夫ではない。
では、その現地不動産業者が倒産したり、連絡が取れなくなった場合はどうするのだろうか。別のライセンス保有業者を見つけ、そのコストを適当な理由を付けて、顧客に請求するのだろうか。
つまり『ライセンスを保有していない』と言うことは、売却時の目先の利益のみを優先し、契約後の事は一切考えていないと説明ができる。
現地の不動産業者も日本法人ではなく、その後のサポートまで約束しているとは思えない。日本のように重要事項説明書や契約書の特約条項に記載することができないのだから。
詐欺ではないものの、間違った情報を顧客に伝え物件を購入させることは、詐欺まがいの悪質行為である。
この11月7日に行われたウェビナーで説明をしていた『マンダリンオリエンタルレジデンス』はまだ情報公開すらされていない。
セミナー募集に使用された写真も他のものが使用され、説明した内容にも偽りがあり『マンダリンオリエンタルホテル』のレジデンスであると言う物件の魅力だけで、適当な内容でアブダビ情報を紹介する行為に、かなり憤りを感じる。
集客側のP社(プ…株式会社)からは、『イベントを開催しているだけで、取引には携わっていないので詳細は分からない』と回答があった。が、しかし制約時の手数料を受け取るのであろう。A社(株式会社ア…社)も同様である。
セミナーに何名の方が参加したか分からないが、この3社がタッグを組み、アブダビの間違った情報で偽りの紹介行為を行っている。この『マンダリンオリエンタルレジデンス』は11月20日頃に公開予定で、アブダビ法人の我々ですら資料や詳細も把握していない。もう間もなくプロジェクトが公開されるという情報だけである。
アブダビ不動産を紹介するのであれば、正確な情報を勉強し、正確な情報を伝えて頂きたい。このセミナー動画をスタッフが録画し確認したのだが、情報が間違いだらけで、英語が話せるだけの、ただの素人である。
このように、今回のアブダビ不動産に限らず、ドバイでも同様な手口で様々な取引が行われている。その殆どが『ライセンスを保有していない不動産紹介屋』の仕業である。
ライセンスを保有していない紹介屋は、不動産を紹介し購入サポートはできるが、売却後のサポートが一切できない。
偽りの情報で嘘を重ねても、日本の法律のような縛りがない。また、日本人だとしても日本の法律で取り締まることができない。
お金を持ち逃げした、偽のデベロッパーと契約をされられた、などの明らかな犯罪行為はUAEの法律で取り締まることができる。ただこのような嘘の情報や、詐欺のような行為に関してはデベロッパーと契約が成立している以上、UAEの法律では何もできない。また日本で勧誘を受けていたとしても、日本の宅建業法は適用されない。
関連記事
さらに、最近ドバイであった悪質行為を紹介する。これはこの被害に遭われた顧客から最近相談があった事件である。
この顧客は『不動産紹介屋』から物件の紹介を受けてドバイに来ることになった。当然ライセンスを保有しているものと認識していたが、提携している『不動産業者』を紹介されたことで『不動産紹介屋』であることを知る。不動産紹介屋と不動産業者3人に囲まれて、半ば強引に物件の案内をされ、デベロッパーのオフィスに連れて行かれたのだか、顧客は豊富な日本の不動産知識があり、色々な違和感を覚えていた。
契約書を出されたのだが、不動産業者と紹介屋にライセンスの確認と契約書の日本語での説明を求めた。ところが、その場所に不在の、会ったこともない人のライセンスを提示され、明らかに契約書の内容より短い日本語の説明文章が出された。
申込金の50,000AED(約200万)を支払う約束でオフィスに行ったものの、内容の確認ができないことで『一旦全てを確認したい』と伝えた。ところがその不動産紹介屋と不動産業者は、『次の予定があるから時間がない』とよくわからない言葉を発して、顧客のクレジットカードから無断で決済をかけた。顧客は、契約の説明もなく勝手にクレジットカードで決済をされ、色々な恐怖に襲われ混乱してしまう。
さらに、『日本に帰国したら不動産購入サポート契約として5%の手数料約150万円必要です』と契約書を出された。
さらに混乱した顧客は、恐怖に襲われその場を離れることになる。
不安と憤りと様々な感情で困っていたこの顧客から、我々に対し相談の連絡が入った。
『不動産紹介屋』と『不動産業者』に対し、白紙撤回と返金を求め連絡をしたが、『契約はデベロッパーと成立しているから解除はできない』と言われどうしたら良いのかわからないと。
最初に紹介した3社の嘘情報の悪質行為とは少し状況が異なるが、本質的には同じである。
『デベロッパーと顧客の契約』であり、不動産業者及び不動産紹介屋に責任が生じないことで、このような悪質な行為が行われている。
我々からの提案として、デベロッパーに直接事情を説明することをおすすめした。
悪質業者とも言えど、違法行為をしていることがデベロッパーの耳に入ることで、今後の取引に支障が生じる。場合によっては白紙解約として返金される可能性もある。現在進行中の事でまだ結果は出ていないが、『不動産業者』と『不動産紹介屋』から未だ返信がない状態が続いている。
他にも多くの手口が存在しているが、圧倒的にこの『不動産紹介屋』が関わっているものが多い。
・日本のように重要事項説明や契約書の説明義務がなく、法律が厳しくない。
・ライセンスが無くても不動産の紹介から契約まで成立させることができる。
・契約はデベロッパーと顧客のみの責任に問われる。
この3点の原因により『UAE不動産』は参入障壁が低く、誰でも『不動産業者』になりすますことが可能になっている。
不動産デベロッパーや不動産業者は多くの海外投資家に物件を販売したい。それぞれ企業の営業マンも自分の利益のために数を販売したい。
そこで、ライセンスを持たない顧客を抱える『不動産紹介屋』と組むことになる。
不動産業者も、嘘や偽りで勧誘し契約を成立させているとは思っていないだろうが、グルになって偽りの情報で勧誘をしたり、多額の手数料を請求したり、詐欺のような手法で取引を行っている『日本人が日本人を騙す行為』が多発し続けている。
対処方法
1. 法人及び個人ライセンスの確認
まず、相手方がUAEで正式にライセンスを取得しているか確認する。
UAEは法人ライセンスの他に宅建士のような個人ライセンスも存在する。その両方のライセンスを確認し、もし保有していない『不動産紹介屋』の場合は取引を控えて頂きたい。
2. 会社役員の個人情報確認
次に、ライセンス確認後、会社の役員情報の確認をする。日本や他国で犯罪行為を行ってUAEに滞在している人や、何らかの事情で出国できない言わば、コンプライアンス上の問題を抱える人が多く存在する。ネット情報や口コミサイトを確認し、経歴の情報がなく怪しい記事等を見つけた場合、取引を控えて頂きたい。
UAEにはUAEで詐欺被害に遭われた方が書き込みをする『ドバイコンプラ』と言う匿名サイトが存在するので、こちらも参考までに。
3. 独自の情報収集
セミナーや説明会で提供された情報だけでなく、公式な情報を独自に調査し自身で信頼性を確かめる。不明点があれば質問し、怪しい回答や間違った回答をされた場合は取引を控えて頂きたい。
この3つはあくまで最低限気ををつける行為として、不動産投資は全て自己責任であること、その上でご自身の判断で良い不動産業者を見極めて頂くしか方法はない。
現地には現地に滞在しないと分からない多くの情報も存在する。我々はアブダビを好み、アブダビに夢中な『アブダビマニア』である。我々以上にアブダビを知る日系企業は他にない。
アブダビの良さを広げる目的で事業を行っているからこそ、上っ面だけの浅い知識で不動産を取り扱うような『悪徳不動産紹介屋』にかなりの憤りを感じている。
この『悪徳不動産紹介屋』を撲滅するには、騙される人が存在しなくなるように働き掛けるしかない。アブダビに限らず、その都市を愛し魅力を伝える為に、様々な活動で尽力している方々が多く存在している。
目先の利益の為に顧客を騙し誘導する行為、顧客の利益やその都市の魅力を奪い、暴騰する輩を撲滅しUAE全体が『健全な市場』になるよう切に願う。
BITEXについて
アブダビ不動産市場での新たな価値提供
日系企業として初めてアブダビで不動産ライセンスを取得したBITEX社は、アルダー・プロパティーズとの業務提携を通じて、アブダビの不動産市場において重要な役割を担っています。
この提携により、BITEX社はアブダビおよびUAE全体の日本人投資家や企業に対して、信頼性の高い不動産サービスを提供し、UAE不動産市場へのアクセスを容易にしています。
BITEX社が提供する付加価値
日本語によるサポート体制
日本人投資家に向けて、契約手続きや物件選定のアドバイスなどを日本語で提供し、UAE不動産市場での円滑な取引をサポートします。
市場に出回らない物件情報の提供
アルダーとの提携により、一般には公開されない希少なキャンセル物件や投資物件の情報を優先的に提供します。
投資戦略のコンサルティング
UAEの不動産市場における最新のトレンドや投資リスクを把握し、投資家にとって最適な物件選定や購入タイミングをアドバイスします。
アフターサポート
購入後の物件管理やリースサポート、売却時のコンサルティングまで、一貫したサポートを提供します。
アブダビ市場への影響と今後の展望
アブダビの不動産市場は、非石油セクターの経済成長とともに急速に拡大しており、特に外国人投資家にとって魅力的な投資先となっています。アルダーとBITEX社の提携は、日系企業や日本人投資家にとって、これまで以上に不動産市場へのアクセスを容易にし、投資の幅を広げる大きなチャンスです。
今後、BITEX社はアルダー社との協力関係をさらに強化し、より多くの日本人投資家や企業に向けて、アブダビのプレミアム不動産情報や投資機会を提供していく予定です。これにより、アブダビの不動産市場における日系企業の存在感を一層高めて参ります。
関連記事