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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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#文学

書肆梓・詩集『その他の廃墟』刊行

書肆梓・詩集『その他の廃墟』刊行

書肆梓の最新刊、詩集『その他の廃墟』。

著者の山内聖一郎さんの第一詩集となります。
著者の山内聖一郎さんは、1958年鹿児島県生まれ。ラ・サール学園中学校入学。この頃から詩作を始め、その後、県立の鹿屋高等学校に。
実は、この高校で、ぼくは彼の同級生で、同じ文芸部に入り、早熟な彼の影響をかなり受けて、詩や、文学の魅力に取り憑かれてしまいました。
その頃の彼のことは、ぼくの第一詩集『ぼくたちはどうし

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いよいよ、コーヒー本、発売へ

いよいよ、コーヒー本、発売へ

9月1日、いよいよ『コーヒーについてぼくと詩が語ること』(書肆梓)が発売になります。
みなさま、お楽しみに!

離れる

離れる

北の花園から
土砂降りの境内まで
血を吐いてみせた
役者の顔も忘れてしまった
きみとの紅色のテント

乳飲み子との別離
声にならない嗚咽の響きは
一篇の詩をなしたのか
なんて遠くまで来てしまった
ちいさな画面のなかで笑ってくれた
その手に触れることもできない
この時代に

抱きしめてあげたい
と、囁いたあなたの声を
胸の揺り籠にいれて
蒼い空へ飛んでいけるかな
鳥ではない
ぼくでも

島の詩

島の詩

空港から二時間ほど走った島の突端
サンセットホテルのバルコニーからは
砂浜につづく道がある
だれもいない浜辺
虫がたくさん死んでいた
笑いながら
野草を煎じる女たち
豚の世話をする男の話を聞いて
陽気な女房の弁当を食べた
夏が終わらない島で
だれもが飽きずに雲を眺めていた
廃校の体育館
わすれ草ゆれる
泣かない島の
サンセットホテルの部屋に
夜明けまえの海風を呼び込んで
眠れないぼくは
からっぽに

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LUCKY

LUCKY

           ハリー・ディーン・スタントンに     

三月最後の月曜日の午後
ぼくは恋人にメッセージを送ると
地下の映画館に降りて行った
痛む右膝と左肩をかかえたままで

眠れない男の
月あかりにうかぶ洗面台で
テキサスのやさしい風が語りかける
ひとはみな生まれるときも
死ぬときも独りなんだ、と

alone
独りの語源は
all one
みんな、独り
ということさ

朝のコーヒー

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『さかまく髪のライオンになって』書肆梓・刊

『さかまく髪のライオンになって』書肆梓・刊

書肆梓 最新刊『さかまく髪のライオンになって』発売開始です。小山伸二の第4詩集になります。

A5定形(148✕210mm)無線綴じ186P、背幅15mm
52篇の詩
本体価格 2,000円+税(送料無料)

ご注文は、こちらから。
shoshi.azusa☆gmail.com ←☆を@にかえて下さい

納涼 書肆梓 夏まつり

納涼 書肆梓 夏まつり

書肆梓、最新刊の寝暮さん漫画、Colonia 最新号など、これまでの既刊本も含めて、ずらりと展示販売いたします。

当日は、寝暮さんはじめ、著者の方々も参加して、皆さんと楽しい午後を過ごせれば、と。

参加予定:
寝暮(『相変わりもせす』)、清水美穂子(『月の本棚』)、小峰慎也(『二体』『いい影響』)、小山伸二(『ぼくたちはどうして哲学するのだろうか。』『雲の時代』)。

会場:古本バル 月よみ堂

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文学b

文学b

秋の声が届いた
図書館で借りた物語のなかで
登場人物は
自分のノートを破り始める
お行儀のいい生活はやめにします
これからは本音で生きたいから

言葉にならない感情を
埃まみれのフラスコのなかでかき混ぜる
ランドセルを背負ったギャングたち
爆発もなければ
煙も出ない
世界なんてウンコだよ
わざと声に出して
はしゃぎながら中央線に飛び乗ってくる

国立五小を卒業した女子が
大人になってドイツで暮らし

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文学a

文学a

大型クレーンが乾燥した冬に立ちならぶ
国立競技場建設現場
編集者は夢中になってシャッターを切っていた
会議室のベランダ
百年の出版社
ぼくは作家の亡霊を眺めている
暗い会議室
いまも
中上健二が
大きな背中を丸めて
小さな文字を書きなぐっている

半島からやってきた物語
大団円を殺せ、と呟いたのだったか
つよい酒をあおって
岬から
船を漕ぎ出した
おおきな翼をつけて
ゆっくりと
海を打ちすえて

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戦後

戦後



蜜柑の山からみえる海
しずまりかえる島を歩く
ひとかげもなく
ひとり戦後の歌をスマホで聴く
若いひとたちのいる場所から離れて

いつかとおい場所に
きみとふたりで行ってみたかった
あかるい街の通路で
ステップ踏んで

本たちも眠る
建物を吹きぬける風を感じるために
いまこそ口ずさむ詩句を懐から出そう
きみの
月のひかりの本棚に並べるために

世界を抽象してみせてよ、と言ったねきみ
新宿の雑踏

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To the Child Born in Summer

It was a summer morning.
As a boomerang thrown high in the sky
made a slashing return to the earth,
you came into this world.
Although we exchanged no words
we somehow communicated with each other.
Al

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