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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2017年8月の記事一覧

八月の雨よ、この町を濡らせ

八月の雨よ、この町を濡らせ

土砂降りの雨をホームから眺めている
メッセージが届いた午後
みんなの残りの時間が刻まれている
からだを通過していくものが
心でとまればいいのに
誰もが小走りになって建物のなかへ
稲妻さえ見えない空の下で

なんて素敵な世界なんだろう

なんて素敵な世界なんだろう

終電が西の闇に溶け込んでいく
うつむきながらホームを掃き清める
憂鬱な影も揺れている
聖者の眠りのように
ベンチに横たわるひとの寝息が聴こえる

交番前の横断歩道を渡ると
居酒屋から出て来た賑やかな一群
大切なことは見えないんだ
だれかが嬉しそうに叫んでいる
鞄の奥にしまい込んだ青い光を
今夜は封印しているんだね

冬のビルの一室に繋がれた
罅がはいった月が見えただろうか
始まりの物語を

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