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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2016年10月の記事一覧

十月のひと

十月のひと

1
曇り空に飛ぶ鳥の名前は知らない
歩くひとは
読むひとでもあり
待つひとは
考えるひとになる

いくつもの町を渡っていく
ひとは鳥にもなる
種が地面に落ちてからはじまる謎
異国の花を咲かせて
居ないひとの声に耳をすませる鳥になる
だれもがひとりだ

だれもが
それでも
待つことができる
きみを待つ
鳥の影になって
きみを待つことができる


2
重力を感じているきみの秋に
うごきまわって

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九月の地下鉄

九月の地下鉄

喧嘩でもしているのかな
そっぽを向いているふたり
世界はどうなっているんだ
手のひらの機械をいくらいじっても
死者には接続できない
こども時代は終わり
ヒーローだって誰も救いにいけない

どんな危機が迫っているというのだ
確認できない事象
つまりガッジーラということ
女の子が嘯いている
赤坂見附のきついカーブのあたり
もう仲直りして
そっと手まで握りあっている

きみはひとり
読みさしの本を閉

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