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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2016年8月の記事一覧

なまえ

なまえ

ゆうぐれうつす
雲の名状しがたき
その幾層
あかねいろ
いろさす
そのゆうぐれ

なまえ
それはいやしがたい
問はなく
解はない

ゆうぐれ
しずかに世界がとじる
その名状しがたき時刻
しかしながらやがて名称
はあたえられ
そしてそれと同時に記憶は
全消去

くしゅんと
しろい
くしゅんと
ちいさな
くしゅんと                               
ぶたくさの
花にくし

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夏のランブリング

夏のランブリング

西瓜を食べよう
袖口を甘く濡らしても
砂浜にはほど遠いこの町で
木陰をもとめる犬に
なまぬるい風が吹く
水を置いた食卓
どこかで風鈴がゆれる
きみの寝息をもっと近くで感じたい

本のつづきを読むあいだ
雲の動きが気になってしかたがない
遠い時代を呼んでいる
嵐も近いのだろう
八月の秘匿されている宝物
それを狙う夏の盗賊たち
つくるのではない
気づくだけでいいというルール

この町でなにかが始まって

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ラブロック

ラブロック

雲が映り込んでいるビルディングに
つよいひかり
眩しくて
ラブロック
かたいきずな
やわらかい風に揺れて
ラブロック
きみとぼくのなまえ

いちどしかない人生を
いま生きている
実感してるよ
いまを
ラブロック
しなやかでとかれることのない
むすばれた魂を