マーケターのする昔話は話半分に聞いたほうがよい
すこし昔の話をしよう
ぼくがいまの会社にジョイン(わー、マーケターっぽいー)したのはちょうど2年前。今日とおなじように、朝方まで冷たい雨がしずかに街をおおっていた、そんな冬の日だ。
ぢごくのまーけたー、しんいつです。
天気なんて、おぼえてねえよ、そんなの。丸2年たったのは本当です。
アスタミューゼは人材事業もおこなっていて研究者や専門職向けに特化した「○○転職ナビ」という求人サイトをいくつか運営しています。○○の部分には職種名とか技術キーワードとかが入ります。
たとえば
だったり、
とか、
とか。
わりと広めのところからマニアックなところまで、こういう「○○転職ナビ」が、ぼくが入ったときはだいたい350サイトくらいありました。
もう一度いうけど、350サイトです。
しかもぜんぶ別ドメインです。350ドメインで350サイトです。
(※現在、ドメイン統合をすすめているので当時の話です)
GoogleとYahooをメインにweb広告をやっていたんですが、このアカウントもサイト別に作られていました。Googleのアカウントが350。Yahooサーチで350、YDNで350。
ドメインがちがうので、とうぜんGoogleAnalyticsもサイト別にアカウントがあります。350アカウントです。SearchConsoleもそう。350アカウントです。
ほかにもindeedとかCriteoとかあったけど、これはサイト別にキャンペーンが切られてたけど、アカウントとしてはある程度まとまってました。
あ、GoogleとYahooのサーチは古式ゆかしい「1広告グループ1キーワード」なアカウント設計でした。わびさびー。
おれはもう考えるのをやめた
「あれあれー、転職したつもりがカラマーゾフ家に養子に入ったのかなー???」って思うよね。スメルジャコフの仕事だって、もうちょっと秩序があったと思うんだよ。
まずなにをやったかというと、タグマネージャを導入しました。
うん、タグマネージャ入ってなかったんだよ。サイトは自社製のCMSで作られていたから、厳密にはハードコーディングってわけではないんだけど、それぞれの媒体のそれぞれのアカウントのコンバージョンタグとリターゲティングタグと計測タグがそれぞれのサイトに直に設置されていた。
なにが入っていてなにが入っていないのかは、わからなかった。ドキュメントはなかったし、もちろん引き継ぎもなかった。サイトのソースを見ながらアカウントのひもづけと設定を確認しつつ、状況の把握につとめた。タグ見て「あ、この広告媒体使ってたんだ……」みたいな気づきもありました。
こつこつチェックしたところ、タグはだいたい正しく設置されていたし、アカウントの設定もだいたいあっていた。もちろんそうではないアカウントもあった。けっこうあった。どうせなら、ぜんぶ正しいか、逆にぜんぶまちがっていてほしかった。絵に描いて額に入れて美術館のいちばん奥にかざったかのようなTHE混沌である。
バーチャル九龍城砦
もうなんかそんな感じ。この廊下の先がどこにつながってるのかとかよくわかんない。だれが住んでいてなにをやっているかとか。使われていない部屋があったり、かってに住みついているひとがいたり、だれも存在に気づいていない部屋があったり、わくわくがとまらない。毎日がアドベンチャー。
そうやって自分を鼓舞しながらタグマネでタグを設置し、アカウントやキャンペーンを統廃合し、GoogleAnalyticsもきちんと設定して、なんとか最低限の数字が把握できるようになるだけで3か月くらいかかった。マジがんばった。
そんなミステリー
でもね、不思議なことに、そうやって環境をいざ整備して、いざやるぞ! ってなったら急に数字が悪くなったんですよ。悪化したキャンペーン閉じたり、過去にある程度コンバージョンが出ていたけどなぜか停止しているキャンペーンを再開したり、なんかよくわからないまま対処療法的に運用しているよりも数字が悪くなった。そんなことある!?
アカウントやタグを統廃合したことで、一部の学習データがリセットされたっていうネガティブ要因はたしかにあった。でも、それだけでこんなに下がる? ってくらい下がった。
もうカラマーゾフ家だの九龍城砦だの言ってる場合じゃない。キーワード精査したり(ちなみにGoogleに登録されていたキーワードは、1回以上表示されたやつだけ抽出しても32万行あった。全体のキーワードレポートはいくら待っても落ちてこないのでダウンロードをあきらめた)、忍法HAGAKUREでアカウント構成大改造したり、あたらしい広告媒体に手を出したり、サイト側もあれこれ手を入れて、なんとか持ち直せた。それもちょうど3か月くらいかかった。
もともとwebマーケティング以外もあれこれマーケティングしたくて転職したのに、けっきょくがっつりwebマーケティングに向き合った半年間だった。
得られた教訓
この経験でぼくが得た教訓は、ひじょうにありきたりではあるが貴重なものだ。
すなわち「金の卵を生むニワトリを殺すな」ということにつきる。
さいわい、広告アカウントとしてのパフォーマンスは当時よりもいまのほうがあきらかに良い。流入数や獲得数は予算変動や季節要因もあるので単純な比較はできないが、CPAで見ると半分から3分の1くらいになっている。
瀕死のニワトリの手術がぎりぎり間に合ったわけだ。だが、次もそうだとはかぎらない。
これは広告運用にかぎった話ではなく、世間一般に広くうけいれられている常識とちがい、「考えるのをやめる」ことが正解の場合もある。
世の中、むずかしい。
マーケティングの本質その7
考えるか考えないかをまず考えるんだ
次回予告
マーケターとして転職したいひとに言っておきたいことがある
悪いことは言わない。やめておけ!