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ブラーフィクション #02 Blur Fiction #02

飲み疲れてボロボロになった帰り道、
繁華街に隣接してるのに人気のない高架下
ハザードを点滅させた一台のタクシー、
色は紺。

若い警官とタクシードライバー、
そして中年のスーツ姿の男が話している。
タクシーと客の喧嘩、そしてその仲裁を装い、
それぞれ手にはアイスピックを持っている。
ジャコウネコの香水を気化させ合流する深緑のドレスの女。

手には目を疑うほど磨き上げられた金槌。
僕はここに存在しないかのように
四人で進む世界。

スーツ男がトランクを開け、
中から取り出した大型のラジカセ。
警官がおもむろにスイッチを押す、
マッシヴアタックの「Safe From Harm」
が鳴り出す。

出来損ないのフラッシュモブのように
各々が踊り出しスローモーションの怪しげな腰つきで一斉にこちらに向かってくる。

二拍ループのイントロをきっちり8小節繰り返し、歌が始まる直前に三つのアイスピックが胸を、白金に輝く金槌が僕の左こめかみをヒットした。

痛みはなく、意識は無くならず、
安穏に似た恐怖を一瞬通過したのち、
耳鳴りとともに燃え尽きた炭のような茶色がかった灰色に視界が染まる。


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