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大晦日の明け方のタクシー

大晦日の明け方、京都でDJ仕事を終えホテルへ帰るタクシーに乗り込んだ。

まだ少し酔いが残ってはいるが頭はスッキリしていた僕は、運転手に朝まで飲み明かした客と思われたくなかったのか、珍しく
「冷えますね」と話しかけた。
5〜6分の距離なので何を話すにせよそんなに長くならないと判断した事もあった。

それに気を良くしたのか、運転手氏は返事もそこそこに自分の話をしだしたのだ。

「いや実はね、今さっきすごく嫌なことがあって」

そうなんですね?どうされたんですか?

「祇園で若い水商売風(実際はもっと限定した職業の名前を口にしたのだが、ここでは控えておく)の男性客を乗せたんです。でね、目的地着いたら、派手な長財布を僕のほうに投げつけてきて おい!オッサンその中から勝手に金抜けや!金いんねやろ? 
て言うて来よったんですわ」


えー?めちゃくちゃですやん、と僕
同時に、この話果たしてホテル着くまでに終わるだろうかと心配になった。

で、どうなったんですか?

「こっちも客商売でっしゃろ?お金もうてなんぼの商売ではあるんですけどね、言うてやりました。
おい若ぞう、お金もらうまではワシには客とちゃうからな!さっさと降りんかいボケ!て言うておろしましたんや」

ツッコミどころは多数あるのだけど、ひとまずは最悪の事態にならない顛末で良かったなと思った。

と同時にその若造がもともと無賃乗車を狙ってそういう態度をとったのではないことを祈った。

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