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創造と破壊(詞、短文、フィクション)

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主に詩や短文、フィクションなど書き連ねています
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#音楽

FLASHBACK〜夢のかけら

ジブンのなかの何かが終わったり、死んだりする感覚は初めてじゃないしこれからもジブン自身が失くなってしまうまで何度もやってくるんだと思う。 音楽は他の芸術に実は似ていなくて、イチバン近いのは「匂い」だと考えていて、記憶との密接な関係や手にとってフィジカルな意味で可視化出来ないところも共通する。 思春期をとおしてある程度歪んだ趣向の音楽やアート、映画、文学などに触れた。それらの記憶のなかにほぼ言語化できない郷愁感と帰巣願望を今も胸の奥深くに抱えている。 「あの日に帰りたい」

Underwater Boy

特に関連するような理由があるわけでもなくセンチメンタルな気分になって特定の曲にたどり着く。 音楽は匂いに似て記憶との連動性が強く、数十年前の出来事が鮮明にしかし曖昧に編集されて見たいヴィジョンを映し出す。 17歳、思春期真っ只中でこの曲を聞いて原体験ではないノスタルジーを感じ取った。 80年代半ば、耳を疑うほど歪んで尖った音楽や映画そしてアートを叩き込んでくれた友人はもうこの世にいない。 少し楽器が演奏出来るという情報だけで5歳年下のオレを強引に「既存の価値観で測れな

HAKAI  SHODO

叩き壊す 持てる限りの力を一点に集めて 部分的でもかまわない、完全に破壊する 視界の大部分にモザイクかませ、一点めがけて クレイジーと気狂いの差を思い知る 全てまやかしの世界では、夢が現実 醒めないならそれは夢じゃない 数え切れない悪夢の夜を超え、 飼いならされた狂気に別れを告げて 本来住むべき場所へもどるだけのこと 芸術の庭は唯一暴力が安全に存在出来る場所なんだ

タイトルなんてつけれるずないだろ

泣きながら大声で叫び 音楽を鳴らしたことがありますか? 目の前の全てを破壊したい その衝動に駆られたことがありますか? 狂ったように身体をよじらせて 音に身を任せたことがありますか? ドラッグのちからじゃなく 意識が別世界へ行ったことがありますか? 音に溺れて、今なら死ねる そう思ったことはありますか? そんな夜を超えて、燃えカスになって、 人生を疑い、自分自身も疑い、 抜け殻のようになっても 明日は来てしまい、生活がつづく そして僕は死ぬまで死ねない

コルコヴァド Getz/Gilberto

彼女と出会ったのは僕がまだ20代前半、世間で大人と認められて間もない頃。当時働いていたバーの客だった彼女はいつも女友達と二人で飲みにきていた。 僕と同年代に見える彼女達はしかし僕より遥かに精神的に自立をしているのが二人の会話から読んで取れた。同じ大学を出て、同じ化粧品販売の仕事に従事している自他ともに認める親友だった。 はじめから何かしら互いを意識するムードはあったものの、バーなんて商売そんなの日常茶飯事、とりたてて気にも留めなかった。 客とスタッフが頻繁に会話をする類いの

音楽

苦しくて心の軋む音が聞こえるとき 嬉しくてたまらないとき 心の所在が不明なほど平坦なとき 誰にも言えず心の暗闇に居るとき 自分の存在すら疑わしいとき 音楽はだけはすぐそこにある 心を映す鏡のように意味を変化させながら、 でも気づかれないようにそっと寄り添っている

ゴースト

飴玉と引き替えに自由を手放す子供と 100年もの時を傍観者でいる幽霊を 消えてしまう切っ掛けを無くした物たちが囲む 手を伸ばせば届く距離なのに見えない恋人 彼女は物事に意味などないことを受け入れられない 音の中に埋め込まれた伝言は時に反転され、 容易に真意を悟らせない性悪な猫のよう しかしその美しさは決して衰えることなく、 数万年を旅した氷河を溶かし、言葉を超えて人々を癒す。 時はめぐり、弓矢で射られた少女の傍に立ち、 瞬時に時を超えてあの白い柱の前に跼み 間も無く無用

春はトワに目覚める

白い霧はみるみると 金色に変わりだす まばゆい光の矢が さんさんと地肌にそそぐ 頭上には青空 手をつなぐ梢に 白樺の林に敷かれたキンポウゲの黄色 大きな水の音 いずれは河となり それよりも美しい一羽の鳥のさえずり その声を合図に全ての鳥が鳴きしきり あらゆる方角から沸きおこる Polyphony at play 霧のなごりはなく 空はますます青く澄んで 走り抜けてく白い雲 しんとした空気をすう 多分そう イマが長い夢から覚めるとき 多分そう 暗い穴から抜けるとき 多