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花の咲く頃

花の咲く頃は全く散歩に最適な季節だ。
僕は普段からもっぱらこまごまとした住宅地を歩き回ることを専門としているので、散歩道に美しい景色はとくに求めていない。
それでも桜があちらこちらで咲き始めると、嬉しくなって散歩のコースを少し変更して沢山の花の景色を楽しんでいる。

毎年この時期に感じるのは「こんなにいろんな場所に桜があったんだ」という小さな驚きである。残念なくらい植物の知識に乏しい自分には(とても残念だ)、春にならないとどの木がどんな花を咲かせるのかいまいちよくわかっていない。わかっていたとしても、やはり夏の葉が生茂る季節や冬の枝だけになってしまった無骨な姿からは、この春の華やかな姿はあまり浮かんでこない。

「本当にこの木は春になったら花が咲くのだろうか」
いつも冬の寒々しい姿になった木々を見て思うのはこのことである。なんだかもう全身枯れて乾ききってしまったように思えるこの木からは、もう花なんて出てこないのではないか。

しかし、春になればちゃんと出てくる。
気づかないうちに蕾は膨らんで、ある日散歩に繰り出した時に見つけるのだ。ああ、今年も咲いた、と。
そして今年も勝手に嬉しくなるのだ。


さて、この自分から今年もなにか生まれてくるのか。
まだそこまで枯れて乾ききってはいないと思いたいのだが。


目指せ書籍化📓✨ いつかライブ会場のグッズ売り場にエッセイ集を平積みにしたいと思います。