見出し画像

Vol.11 建設業界マクロ動向とスタートアップ

どうも、IDATEN Venturesの坂本です。今回のブログでは、建設業界のマクロ状況とスタートアップ動向についてまとめたいと思います。

建設業と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?私は「未来の街を作る素晴らしい仕事」であると同時に、「非常に厳しい現場仕事」という印象を持ちます。

僕の周りでも、実際に左官職人・鳶職人として現場で働いている方や、設計・企画部門でデザインを考えている方、そして技術職として土木・電装などの設計を行っている方など、幅広い職種が集まっていることが特徴です。

画像6


上記のような事務系・技術系の各業務に紐つく形で現場の施工業務が膨大にあります。膨大さゆえにバリューチェーンが複雑で、協力会社が多層に及びます(1)。(ちなみに実態の是非は別にして、「下請け業者」という言葉はものづくり現場では好まれません。協力会社という表現を使うことが多いと思います。)

このような業界構造に加えて、大量生産ラインを用いる製造業と異なり、一件毎にカスタマイズする場合が多い建築現場は労働集約的な生産活動(2)になりやすい傾向があります。改めて整理すると次の2つが建設業界のもつ特徴であると言えるでしょう。

(1)バリューチェーンが長く、多層請負工事構造になっている
(2)少品種大量生産ラインと異なり、一件工事で労働集約的になりやすい

これを頭に入れながら、社会状況の変化がどのように建設業界を難しくしているのか、そしてそれを解決するためにスタートアップがどういうアプローチをしているかを整理していきましょう。

建設工事の推移

建設工事受注(大手50社) (1)

建設工事は景気の波を大きく受けます。上記グラフは、大手50社の建設会社が受注した工事の金額推移です。平成21年にガクンと落ちているのはリーマンショックの影響です。平成23年には東日本大震災がありました。そこから復興に向けた建設投資やアベノミクスによって順調に受注額が拡大しています。

2017年にはここ10年で最高額の14.8兆円を大手50社で受注しています。平均換算すると、1社あたりおよそ3,000億円。

全国建設投資 (1)

こちらは全国建設投資の金額です。当然のことですが、先ほどの大手50社とトレンドは同じです。全国にはおよそ46万の建設許可業者がいると言われています。平成30年度の投資額61兆円をベースに考えると、1社あたりおよそ1.3億円。大手に受注が集まっていることがわかります。

つまり、特に地方などの非人口集中地域を中心に、零細的な建設業者が多いことが示唆されます。この傾向は、業界の多重構造とマッチします。そして、一次請負・二次請負・三次請負...となる中で中間マージンが抜けて、徐々に受注額が薄まっていきます。これが苦しくなる要因の一つでしょう。

建設業従事者の推移

建設業常時従業者数 事務職 (3)

こちらが事務職の推移です。平成6~15年あたりまで毎年のように減少傾向にありましたが、以降ボトムのようです。ここ10年では4万人がアベレージです。

建設業常時従業者数 技術職 (1)

こちらが技術職です。基本的には事務職と同じトレンドですが、東京オリンピックの影響からか、平成27年頃から微増しています。その背景として、女性技術者の採用や、土木建築専攻以外の学生も採用対象に広げていることが考察されています。また、他業界の影響を受けてDX推進のために人材の多様性を高めていることも関係しているでしょう。

建設業常時従業者数 技能職

そして、最後に技能職です。技能職とは現場で働く方々のことです。こちらも事務職・技術職と同じトレンドです。最近は、とかく「現場で働く人材が不足している」と言われますが、データを見れば、現場で働く人数ばかりが減っているわけではなく、事務職・技術職ともに減少しているというのが正しい理解です。

ただし、事務職・技能職の減少がソフト技術を用いた生産性向上である程度補えるのに対し、技能職の減少はそうはいきません。実は現場で働く人間ほど代替コストが高く、そう簡単にロボットには置き換えられないのが現場です。

その点について、イーロンマスクの言葉が印象的です。2018年にテスラの量産が大幅に未達になりましたが、その原因が「過剰な自動化にあった」と言っています。

建設スタートアップ

建設業界独特の特徴・構造、従業員トレンドについて見てきました。このような背景もあり、少子高齢化や企業格差の拡大によって、生産性向上に対する課題感は高まってきています。

特に米国では近年建設スタートアップが興隆を見せており、日本でも徐々に増えてきています。(Construction Technology=ConTechと表現することがあります。)これらのことを頭に入れながら、今回は国内の建設スタートアップをいくつか見ていきましょう。

建設スタートアップが採っているアプローチは大きく分けて3つあります。それぞれのアプローチに分けて見ていきましょう。

1)マッチングプラットフォーム型
2)プロジェクト管理型
3)マーケットプレイス型

1)マッチングプラットフォーム型

マッチングプラットフォームは大きく分けてBtoC型とBtoB型があります。それぞれのパターンで、解決しようとするペインが異なります。

◇BtoC型
施工主と施工業者をつなぐプラットフォームです。前提となる「負」は施工コストの高さです。その要因は「情報の非対称性」にあります。発注を行う時、「どこが一番安く高品質な工事を行ってくれるのか」という点において施工主は圧倒的に情報弱者です。

とりあえず有名な施工会社が受注し、案件を一次協力会社・二次協力会社へ回していきますが、これによっては施工主はコストが高くなってしまいます。BtoCマッチングプラットフォームはそのペインを解決します。

・SHELFY株式会社

画像10

設  立:2014年
調達資金:1.2億円
サービス:内装建築ドットコム
特  長:内装施工の「歪み」を是正し、正当なコンペで案件落札する場を提供します。クライアントにはPanasonicなど著名な会社も並びます。

・株式会社ローカルワークス
設  立:2014年
調達資金:3.5億円
サービス:リフォマ(toC)、サーチ(toB)
特  長:リフォマでは、修繕からリノベーションまで幅広い施工のマッチングを行います。サーチでは、独自のデータベースを用いて高品質なマッチングを行います。

この領域では中古品売買プラットフォームでメルカリとラクマのような厳しい争いが繰り広げられるように思います。短期ではフォーカスする領域(ex. リフォーム専門、リノベ専門、ビル専門のように)で住み分けが行われても、中長期的には大きなプレイヤーが出てくるのではないかと。


◇BtoB型
施工会社と施工会社、施工会社と職人を結ぶプラットフォームです。前提となる「負」は、建設投資の増加に反比例する「人材不足」と、中小施工会社・職人の案件獲得難です。

建設業界はネットワークが大切な業界だと言われています。何度も仕事をしたことがある会社、先代からお世話になっている会社、など新規リスクの小さな馴染み企業に依頼する傾向があります。

その一方で、中小施工会社は非常に規模が小さく、親方+職人数人しかいないところが非常に多いのが現状です。BtoBプラットフォームは、そうした「閉鎖性」というペインにアタックします。

・株式会社 助太刀

画像9

設  立:2017年
調達資金:13億円
サービス:助太刀
特  長:職人・施工会社と施工会社のマッチングを行います。優れている点は、マッチングプラットフォームとしての機能を着々と備えている点です。ファクタリングサービス、職人への即日報酬支払いサービス、などプレイヤーを集めるための戦略に余念がありません。建設業界のタイミーやペイミーのようなモデルでしょうか。

2)プロジェクト管理型

プロジェクト管理型は、建設工事にかかるあらゆるバックエンド業務を便利にするソフトです。建設会社の案件は足が長く、受発注・契約などの川上業務から、設計・施工管理などの川下業務まで、ターゲットにするペインも幅広くあります。

・ANDPAD

画像8

設  立:2015年
調達資金:41億円
サービス:施工管理サービスANDPAD
特  長:クラウド施工管理サービスで、工程管理・日報作成・コミュニケーション・図面シェアなどを一手に引き受けるSaaSです。一見よくありそうなサービスながら、41億円の調達まで持っていく推進色には目を見張るものがあります。UI/UX、クライアントワーク、機能性など、今後異業界で同じコンセプトのサービスを展開する際にはヒントになりそうです。

・株式会社フォトラクション

画像10

設  立:2016年
調達資金:7.8億円
サービス:施工管理サービスPhotoruction
特  長:建設現場の写真・図面などのデータを共有し生産性向上を支援するサービスです。根気よく現場や管理者の声を聞いてサービスの改善を行ったり、ユーザーが業務にオンボーディングしやすいよう操作説明会を行ったりしてきたことが利用者の拡大の一助になっているようです。

この他にもたくさんのスタートアップがしのぎを削っています。この層が一番多いイメージです。共有するものはさまざまで、写真・図面・ドキュメント・工程・コストなど、それぞれ特化したSaaSが存在します。まだ黎明期に近い状態で、どんどん新しいサービスが出現していますが、最終的にはGoogleのように、カレンダー・ドキュメント・写真などあらゆるデータを共有すつプラットフォームに落ち着くと思います。

建設会社において、バックエンドに回せるリソースが限られる中で、機能ごとにSaaSを切り替えることは考えにくいからです。もちろんバリューチェーンの中で、いくつかのSaaSを併用することはあっても、写真の共有はAサービス、ドキュメントの共有はBサービスとなることは考えにくいです。

3)マーケットプレイス型

建設業務に必要な資機材のマーケットプレイスです。一般的なECと異なる点としては、商材のサイズ・専門性でしょうか。

・モノタロウ
言わずと知れたモノタロウです。以下省略。

・SORABITO

画像11

設  立:2014年
調達資金:18億円
サービス:機械のマーケットプレイスALLSTOCKER
特  長:国内だけでなく、アジアに展開しているサービスです。東アジア・東南アジアにネットワークを持っています。中古機械のオンラインマーケットプレイスとして急速に拡大。商材特性上、単価が300万円程度と非常に高いのが特徴です。経営陣のノウハウに加え、コマツOBを招くなどオペレーションの構築を安定させています。

本丸の施工現場

ご覧のように、ConTechのアプローチはSaaSモデルやプラットフォーム型が主流です。アメリカでもこうした動きはあります。SVFが900億円を投資したKaterraは、設計・生産・組立を1つのプラットフォーム上で完成させ、中間コスト・納期を圧倒的に削減・短縮します。

しかし、もう1つ見逃せない動きがあります。本丸の施工現場の省力化です。先日16億円の大型調達を行ったDeepX。

・Deep X

画像12

設  立:2016年
調達資金:16億円
サービス:機械学習を用いた業務自動化サービス
特  長:ど真ん中のConTechではないかもしれませんが、油圧ショベルの自動操縦化を実現させた技術・実績があります。現場の作業に即したアルゴリズム選択を柔軟に行い、実務に活かせる技術を提供しています。これによって、日夜・気温問わずショベルを動かすことができ、生産性の大きな向上が見込めます。

私はDeepXのような動きがこれから出てくると見ています。柔軟さと反復性を両立できる人間は現場作業において未だ最強の存在であることは間違いありませんが、気温・作業時間・身体リスク・集中力など、人間固有の弱みもあります。これらの点においてはロボットの方が確実に優れています。

少子高齢化・安全性基準の高まり・人件費高騰など、「本丸」である現場作業の改革に対するニーズは年々高まっています。必ず人間に代わってあらゆるコストを低減するロボティクスサービスが出てきます。というのが見立てです。


IDATEN Venturesでは、ソフト・ハード問わず、あるいは両方を掛け合わせた技術・サービスに投資をしています。建設業は今まさに盛り上がっている領域です。次世代の建設のあり方を実現するようなプロダクト・サービスを作っている方はぜひご連絡ください。真剣にお話ししましょう!

ご連絡はnoteへのコメントでも、twitterでも、HPへの問い合わせ、どれでも構いません!今度は海外のConTechの概観を紹介してみようと思います。それではまた!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!よければシェアもお願いします!
4
IDATEN VenturesというVCで、ものづくりや物流を中心とするリアル世界を良くするサービス・技術に投資しています。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。