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MaaS事業が世界を変える;俯瞰図、Uber, GrabあとGO-JEKとか

自己紹介

こんにちは。 しんご(@KNSG09)です。普段は投資家としてVC、不動産投資、上場株投資など投資機会を探る傍ら、コンサルティング会社など事業を運営しています。大変ありがたいことに素敵なビジネスと触れ合う機会が沢山あり、その中で感じたことなどを書いていきます。
書いていることは一般的な知識ではなく、私見に満ち満ちた内容である点、どうかご了承ください。

はじめに

今回はMaaS(Mobility As a Service;マース)とはどういうビジネスかについて説明をします。「MaaSビジネスって何なの?」「MaaSって何がすごいの?」といったことにご興味のある方に向けて書いています。一般論のしっかりした話が気になる方は、以下なども併せてご覧ください。

MaaSがもたらすモビリティ革命 日本版MaaSの可能性
デロイトトーマツ社

また、最初に俯瞰的にMaaS領域に属するビジネスの説明はしますが、MaaSビジネスとは?を深くご理解いただくため、後段(有料部分)では特に一部の事業に特化して説明していきます。
前段を読めば十分にMaaS事業とはこういうものかとご理解いただけると思いますが、より深くMaaSについて考えたい方はぜひ後段もご覧ください。

MaaS、なにするものぞ?

MaaSとはMobility As a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の頭文字で、「車 (移動)」と「IT/情報通信技術」を組み合わせた事業を指します。
皆さんの周りに「スマート家電」ってありませんか?Alexaなどの「スマートスピーカー」や帰宅前にスマホから遠隔でご飯を炊ける「炊飯器」、ペットのお家での様子を会社から好きなときにスマホで確認できる「見守りカメラ+アプリ」など。一言で言ってしまえば、あれの車版です。車や運転手にITシステムを付与して、ドライバーや乗客をより便利にするサービスです。
ちなみに、国土交通省のこちらの資料では以下の定義で説明されています。

MaaS は、ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を 1 つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念である。利用者はスマートフォンのアプリを用いて、交通手段やルートを検索、利用し、運賃等の決済を行う例が多い。

このMaaSの中には、次のような事業分類が含まれています。

カオスマップ_2020_figure1©Boldright Inc.

【MaaSの事業分類】
・配車/
カープール(相乗り)
・バイク/カーシェア(自転車、電動スクーター含む)
・シェアパーキング
・自動運転
・予測評価
・宅配、輸送、物流
・飲食 x 流通
・地図、ナビゲーション
など

一つずつ簡単に説明しますが、個人的にはこの中に「MaaSか?」と疑わしいものもいくつか含まれていますので、それは以下で言及しつつ弾いていきます。

・配車サービス/カープール(相乗り)

スマホのアプリからタクシーを呼べるサービスです。料金もアプリ上で決済できます(現金払いもできます)。通常のタクシーと違って一般人がドライバーになることも可能で、そのために「ライドシェア」とも呼ばれます。MaaSで一番イメージしやすい事業ではないでしょうか。
海外では、UberwhimGrabなどが有名ですね。日本ではかつてUberが事業展開しましたが規制を乗り越えられず苦戦、Japan Taxiなどがコンセプトを採り入れて同型のアプリを出しています。

カープールはいわゆる相乗りですが、配車サービス事業者が運営することが多く同ジャンルとして説明します。目的地が近い、知らない人同士で一つの車をライドシェアする利用方法であり、当然1人乗りよりも料金が下がります。アプリで各乗客のピックアップ場所と目的地をリアルタイムでマッチングできるようになった結果、とんでもなく便利なサービスになりました。
日本では若干マイナーですが海外では利用率も高く、都市から空港が遠い場合の利用などは非常に便利です(知らない人と出会えることもあり、個人的に大好きなサービスです)。

この事業はMaaSとしての歴史も古く、潤沢な資金によってコングロマリット化し、決済や飲食デリバリー機能も取り込んでいます。事業の方向性として、スーパーアプリ化するサービスが多いのも特徴です。

・バイク/カーシェア(自転車、電動スクーター含む)

こちらもお馴染みのサービス、要するに「レンタカー」です。カーシェアを例に説明を進めますが、レンタカーとの違いは大きく2点:①貸し出す車の持ち主が、法人だけでなく個人であることもある(シェアリング)、② アプリ利用により、分単位など細かい時間での貸出が可能になったことが挙げられます。

ユーザはアプリ上で近くにある車両を予約し、車両が止まっている場所まで行ってカギを開け、利用を開始します。カギの開け方は、アプリでそのまま開錠できるものも、別途キーボックスが用意されたものも様々あります。利用を終了する場合も簡単で、利用時間はアプリで自動管理され、使用時間に応じてアプリ上で自動的に決済されます。

配車サービスに次ぐ歴史を持ち、世界的に事業者も多いです。特に自転車シェアは、中国において一大ブームを巻き起こしました(今は色々あって斜陽産業化しています)。海外の事業者で日本で知名度が高いのはソフトバンクが出資しているgetaround、日本国内でもAnyca(エニカ)などのサービスがあります。

・シェアパーキング

利用されていない駐車場や空き地を、空いている時間に駐車場として貸し出すサービスで、シェアリングエコノミーの一環です。上記バイク/カーシェア同様、法人/個人問わず貸し手になれます。

ユーザはアプリ上で利用したい駐車場と時間帯を選び、予約します。あとは現地に行って駐車するだけですが、現地での管理は管理用ガジェットがあったり人が対応していたりとサービスによって様々です。
具体的な利用シーンとして、休日に車で商業施設に行きたいけど…お祭り会場の近くまで車で行きたいけど…など駐車場に困る場面で大活躍します。日本の都市部のように土地が狭い割には駐車場が多い…という状況では救世主かもしれません。

ただ、これはどちらかと言えば土地活用なので、MaaSじゃなくて不動産シェアエコだと思うんですよね…。日本にはakippaなどがあります。

・自動運転

説明不要、みんな大好き自動運転です。人間が運転せずとも車両が勝手に周囲の状況を読み取って車を動かしてくれる技術ですが、どこまで自動でやっ
てくれるかによってレベルが分かれています。

これもMaaSとして取り扱うべきジャンルではないと思っています。理由は自動運転は「テクノロジーの刷新」だから。
MaaSは技術自体が新しい訳でなく、既存技術の組み合わせによって「新しいビジネスモデル」を作る事業と捉えた方が分かりやすいので、その意味で自動運転はMaaSでないと思うのです。個人的には、自動運転は「Deep Tech」とするのが最も馴染むと考えています。

・予測評価

「フリート」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「フリート(Fleet)」は直訳では「何かの集まり」を意味しますが、車両を扱う企業においては「車両そのもの」を指します。
車両を扱う企業の中には車両をどこに何台駐車/停車/保管するかが事業効率を左右する重要な要素となる業種があり、そういった業種では「フリートマネジメント」という車両の位置などを管理するタスクが存在します(物流会社のトラックなどをイメージするとわかりやすいかもです)。

同じ原理で、配車サービスやカーシェアで重要なのは、車両の位置情報の管理です。予測評価技術では、車両利用データの蓄積と分析によって、リアルタイムでユーザが車両を使いたいと思う時間と場所、また車両がどこに (偏って) 駐車されているかを知ることができます。
例えば配車サービスなどは、この技術の活用によってユーザが欲しいタイミングで、欲しい場所の近くに車両をあらかじめ配置することができるようになり、UXを格段に向上させることができます。これがいかに絶大な効果か、タクシー会社で考えると分かりやすいですね。また、この技術の活用で交通渋滞なども解消できる可能性があります。

これも自動運転と同じ理由で、MaaSとして取り扱いたくないジャンルになります。コア技術であるGPSやセンシング、地図技術は既存技術なのですが、精度の高い予測のためにはAI技術が不可欠なんですよね。その意味で、予測評価も「テクノロジーの刷新」でありDeep Techと考えます。

・宅配、輸送、物流

たとえば商品を運び終えた貨物トラックの空いた荷台を借りて、別の物を運んでもらおうというシェアリングエコノミー。生産管理情報や交通渋滞情報を参考に、適切な時間で適切な配車を行う配車・操車管理サービス。これらがこの分類に含まれます。日本ではハコベルが有名ですね。

これまた、私の理解ではMaaSではありません。というのも、「物流・ロジスティクス」というジャンルはそれだけで一つの市場ができるくらい複雑で巨大なのです。したがって、これをMaaSに含めると途端にMaaSが分かりづらくなります。ちなみに「物流・ロジスティクス」の中には、前述の「新しいビジネスモデル」と「テクノロジーの刷新」の両方の事業タイプが存在します。

・飲食 x 流通

要するにUber Eatsです。米国ではGRUBHUBなどもあり、世界中を席巻しているサービスです。デリバリー機能を持たないレストランに宅配機能を提供することで、ユーザは自宅にいながらにして幾千のレストランの中から好きなものを食べることができます。配達は時間の空いた一般人などが担当することから、シェアリングエコノミーの一環でもあります。
デリバリー以外のビジネス(たとえばテイクアウトなど)も含みますが、基本的な技術や仕組みは配車サービスと同じであることが多いです。

話が脱線するので今回は割愛しますが、実は在庫管理の問題などチェーン店や大規模店舗以外は導入しづらいという側面も持ちます。

・地図、ナビゲーション

Google MapやNAVITIMEが代表例です。MaaSというよりも、MaaSの前提技術になります。
本筋とは若干逸れますが、Google Mapの本当のすごさとは「地図を使った直観的な操作で、単純なワード検索以外でユーザが質問をできるようにしたインターフェース革命」であり、多くのMaaSがこの偉業の上に事業を構築しています。スタートアップの方にはAWSが為した偉業と同じ構造、と言えば伝わるでしょうか。Google Mapなしには、現在のMaaS事業は成立しなかった可能性も高いです。

ここまで、MaaSに含まれる各事業分類について簡単に説明しました。
個人的には、配車/カープール、バイク/カーシェア、飲食 x 流通あたりがMaaSかなと思っていますが、そうして見るとなんとなく共通点というか、MaaSのイメージが湧いてこないでしょうか。それが車とITシステムを掛け合わせるということです(湧かなかったら、ほんとにすみません。。)

これらMaaSの導入により、私たちの「移動」や「ドライブ」は指数関数的に便利に進化していくのは間違いないでしょう。

次章以降では上記分類の中から特に「配車サービス」を例にとり、事業構造についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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