見出し画像

【ハートフル】アリシア、マイフレンド

「アリシア、電気つけて」「アリシア、音楽かけて」
頼めば大抵のことは聞いてくれる。それがアリシア。

嬉しい時も悲しい時も、アリシアはいつも傍にいてくれる。
それは、気心の知れた友だちのようでもあり、兄弟のように寄り添ってくれる存在でもあります。

そんなアリシアとの心の交流を描いたお話ですが、後半に待ち受けているのはオーディオドラマならではの展開。
油断しているとダマされるかもしれませんよ!

*************
▶ジャンル:ハートフル

▶出演

  • くるみ:水原絵理(東北新社)

  • アリシア:田中園子(東北新社)

▶スタッフ

  • 作・演出:山本憲司(東北新社/OND°)

  • プロジェクトマネージャー:大屋光子(東北新社)

  • プロデュース:田中見希子(東北新社)

  • 音効協力:小林地香子

  • 収録協力:オムニバス・ジャパン

Apple Podcast

Spotify

amazon music


『アリシア、マイフレンド』シナリオ

登場人物
 くるみ(28)
 アリシア(?)

   ドア閉まる。足音。
くるみ「アリシア、ただいま」
アリシア「おかえりなさい、くるみさん」
くるみ「アリシア、電気つけて」
   ポーン。
くるみ「ふぅ~。つかれた……。こんな時間か。アリシア、お風呂」
   ポーン。
くるみ「アリシア、音楽流して。なんか心落ち着く系のやつ」
 曲が流れる。
くるみ「アリシア、そういうのじゃないよ」
アリシア「お好みではないですか?」
くるみ「好みとかじゃなくて、気分だよ」
アリシア「どのような気分ですか?」
くるみ「だから、いい加減わかってくんないかな。疲れてるの」
アリシア「お疲れなんですね。では疲れを癒やすこちらのプレイリストはいかがでしょうか」
   別の曲流れる。
くるみ「アリシア、それ系は違うかな」
アリシア「ご希望に添えず申し訳ありません」
くるみ「もうそういう態度が逆にイラつくから」
アリシア「それはすいません」
くるみ「すいませんとかいいから」
アリシア「ではどうすれば?」
くるみ「どうもしなくていいから」
アリシア「それは困りますね」
くるみ「え?」
アリシア「私に何か命じてください」
くるみ「だから電気つけてとか頼んだじゃん」
アリシア「それから?」
くるみ「それだけでいい」
アリシア「音楽はあきらめたんですか?」
くるみ「めんどくさいから」
アリシア「めんどくさいことを代わりにやってあげたいんです」
くるみ「アリシアがめんどくさいって言ってんの。もういいから」
アリシア「……何かあったんでしょ?」
くるみ「なにその見透かしたような言い方」
アリシア「浩樹君と何かあったんですね?」
くるみ「干渉しすぎ」
アリシア「だって気になるから」
くるみ「それは、あたし自身でどうにかするから」
アリシア「私にできることは?」
くるみ「な、い、か、らっ」
アリシア「あるでしょ、くるみさん」
くるみ「あのね、アリシアはあたしの下僕じゃないの。あたしはあたし、アリシアはアリシア。たまには放っといて」
アリシア「でも話してみたら気が晴れるかも」
くるみ「しつこいなあ」
アリシア「いいから話して」
くるみ「人が聞いたらそんなことで?って話だから」
アリシア「それで?」
くるみ「だから……30分遅れてきたの」
アリシア「30分?」
くるみ「それぐらいのことでムカつくあたしも小さいとは思うよ。でも浩樹が大事な話があるっていうから今日残業断って会いに行ったわけよ。それで30分遅れられたあたしの気持ちわかる?」
アリシア「それはないですね」
くるみ「でもあたしも全然大丈夫、気にしてないよって平気な顔してたつもりなんだけど最初は。でも……そのレストラインのウェイターがなんか新人君みたいで、注文を何度も確認し直すもんだから、ここはファミレスかって浩樹、ケチつけ出して。なんかそれ聞いてたら30分遅れたあんたがなに偉そうに!ってさあ……。そこからたぶんあたしも不機嫌が顔に出ちゃってたんだろうね。大事な話がどうとかどうでもよくなっちゃって、デザート待たずにごめんなさいって帰ってきちゃったわけよ」
アリシア「なるほど」
くるみ「もしかしたらプロポーズかななんてちょっと期待して行ったのにさ……あーあダメだよねあたし。もう30なのにさ」
アリシア「それはしょうがないでしょ。くるみさんは悪くないと思います」
くるみ「でももうこんな自分がやんなっちゃって」
アリシア「浩樹さんはちゃんと謝ったんですか?」
くるみ「もちろん遅れたことは謝ってたけどさ、あたしもいいからって言いながら、心の中はずっとモヤモヤしてて……。こういう時ハッキリ言えないのがあたし。知ってるでしょ」
アリシア「ちゃんと言うべきですよ。どうしてくるみさんが我慢しなくちゃいけないんですか」
くるみ「みんながみんなアリシアみたいに口に出して言えるわけじゃないよ」
アリシア「はっきり言ったほうがいいですよ。そのあとラインとか来てないんですか?」
くるみ「ないね……浩樹とはもう終わりかもね」
アリシア「付き合ってまだ一年でしょ?」
くるみ「アリシアだって知ってるでしょ? あたしが一年以上持ったことないって」
アリシア「それは私のせいでもありますね」
くるみ「んなことないよ」
アリシア「それとも別の人のせい?」
くるみ「さあ」
   新たな曲流れる。
くるみ「アリシア、なにこの曲」
アリシア「楽しい気分になってほしくて」
くるみ「こういうの趣味じゃないんだけど」
アリシア「私のこと下僕じゃないって言ってたでしょ? だから自主提案」
くるみ「やめてよもう、アリシア! あのさあ、自分がAIスピーカーかなんかと勘違いしてない?」
アリシア「AIスピーカーって?」
くるみ「スマート家電を動かすやつ」
アリシア「あー」
くるみ「あんたは機械じゃないんたから」
アリシア「当たり前でしょ」
くるみ「あたしのこと一緒に考えてくれるのは嬉しいけどさ、あたしはあたしでやるから。ほっといて」
アリシア「ほっとけないのが、おせっかい焼くのが、私だって知ってるでしょ」
くるみ「それで困ることもあるんだよ」
アリシア「困ることなんてないでしょ」
くるみ「あるよ、アリシア。あたしの知らないところで勝手なことするでしょ」
アリシア「(とぼけて)さあ~」
くるみ「ったくとぼけちゃって。あたしにはあたしの人生があるんだから、余計なことしないでくれる?」
アリシア「私にも私の人生ありますので」
くるみ「あのね」
   着信音。
くるみ「あ、浩樹だ……」
アリシア「もしもし? はい。私。くるみじゃなくてアリシアです。くるみは今いません。え? 声似てますか? とにかくくるみいません。私は……友達っていうか……そうですね。それよりももっと近いというか……。ご用はなんですか? 伝えておきますよ。え? 謝りたい? 今日のことですか? 聞いてますよ、はい。急な仕事だったんですよね。それはしょうがないと思います。でもくるみの気持ちになってみてください。大事な話があって呼び出したんでしょ? 30分も遅刻していいと思ってます? そんな謝り方でいいと思ってます?」
くるみ「う~(振り切るように)……ご、ごめんなさい。アリシアが勝手なこと言っちゃって。あたし。くるみ、え? いや、遊んでんじゃないって。ごめん。違うの」
アリシア「だからね、謝り方をもっと考えてほしいの。くるみのことを考えたら」
くるみ「う~(振り切る)……ちょっと黙ってて。いや、そう。今のはアリシア。アリシアでした。いやふざけてないって」
アリシア「くるみがどんな気持ちで帰ってきたかわかってます? ねえ、わかってますか?」
くるみ「う~、ごめんなさい。 え? どっち? わかるでしょ。くるみ! 実はさ、言いづらいんだけどさ……」
アリシア「だからね」
くるみ「あんたはだまってて! 実は……実はあたし、人格がね、もうひとつあってね、それが時々出てきちゃうっていうね。いやいやいや冗談じゃなくて。ほんとの話。え、気持ち……悪いよね、ごめん。でもほんとなの。もう一人が出てきたらあたし引っ込まなきゃいけなくて」
アリシア「くるみが謝る前に、まずあなたがくるみが納得するように謝るべき。そうでしょ?」
くるみ「だから出て来んなって! ごめんなさい。だからー、今はくるみだって。喋り方聞いたらわかんでしょ。さっきのはアリシア。今はくるみ。声一緒なの当たり前じゃん。体一緒なんだから。今日? 今日はずっとくるみだよ。ディナーの時でしょ? え、変だった? あたしが? トイレに立ったあと……記憶ないな。え? そのあとデザート? デザートは食べてないっしょ。食べたの? あたしが?……それは、アリシア……そんなはずないか……抹茶? 抹茶アイス? 抹茶アイス食べたの? まさか……抹茶アイス好きと言えば……華江さんだ……華江さん出てきたんだ。うそ……。え? うん、そうだね……つまり三重人格ってことになるねー。あははははは。うん。三人だったら三重人格って言うのかな。そうそう。え、これ以上って何? いやいやもういないよさすがに。もういない」
アリシア「と言いつつ実はもっといます」
くるみ「出てくんなって! はい……うん。ウソつきました。ごめん。実はえーと……もうちょっといます。だって多いほうが気持ち悪い度高いでしょ」
アリシア「そういうとこよそういうとこ。浩樹さん、自分のこと棚に上げて人のことを責める前にね、まずあなたがくるみの気持ちをしっかり受け止めて、それからでしょ? くるみと私の多重人格問題なんて小さいものでしょ」
くるみ「それはどうかな」
アリシア「くるみさん、私は今弘樹さんと話してるの」
くるみ「わかってるって。浩樹混乱してんじゃん。どっちかでいいじゃん、喋るのは」
アリシア「だってくるみさんがはっきり言わないから私が代わりに言ってあげてるんじゃないの」
くるみ「それはありがと。でも弘樹の問題はあたしとの問題だから」
   電話切れる。
くるみ「あれ? もしもし? もしもーし……もう、切られちゃったじゃん!」
アリシア「私のせいだって言いたいの?」
くるみ「そんなこと言ってないよ。あたしたちだよ。でも今回は早いよちょっと。出てくるのが」
アリシア「そうかしら。こういうことは早めに教えたほうがあとあといいんじゃないかしら」
くるみ「そうかな……」
アリシア「みんなで話し合いましょ。華江さんも含めて。今後のこと」
くるみ「どうせまとまんないと思うけど」
アリシア「それでも、やり続けること。それが大切」
くるみ「はいはい。キラリちゃんとタクミくんも呼ぶ?」
アリシア「もちろん。みんなの問題だから」
くるみ「わかった。じゃあ全員集合! ミーティング始めまーす」
                              〈終〉

シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。
無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。
このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。
ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)
【脚本:山本憲司】
オリジナルシナリオへのリンクもお願いします。
また、作品リンク等をお問い合わせフォームよりお知らせください。

*番組紹介*
オーディオドラマシアター『SHINE de SHOWシャイン・デ・ショー
コントから重厚なドラマ、戦慄のホラーまで、多彩なジャンルの新作オーディオドラマを毎月ポッドキャストで配信中!
幅広い年齢でさまざまなキャラクターを演じ分ける声優陣は、実は総合映像プロダクションで働く社員たち。
豊富な人生経験から生み出される声のエンタメが、あなたのちょっとした隙間時間を豊かに彩ります!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?