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【コメディ】激闘!銀行強盗vs同級生

銀行の窓口事務をしている由莉奈の銀行が、ある日強盗に襲われます。
強盗の脅しに震えながらもお客様の安全を守らねばと銀行員としての職務を果たそうとする由莉奈。
そんな時、彼女の前に現れる怪しい女性、美里。
高校の同級生だというのですが、由莉奈は思い出せません。
そればかりか、美里が口にした言葉が由莉奈は信じられません。
なんでこんな時にそんな話を聞かなくちゃいけないの?
銀行強盗と同級生に翻弄される由莉奈の孤独な闘いの行く末を見届けてください!

*************
▶ジャンル:コメディ

▶出演

  • 由莉奈:山岡明日香(東北新社)

  • 美里:池尾麻里(東北新社/OND°)

  • 強盗:稲村忠憲(オムニバス・ジャパン)

▶スタッフ

  • 作/演出:山本憲司(東北新社/OND°)

  • プロジェクトマネージャー:大屋光子(東北新社)

  • プロデュース:田中見希子(東北新社)

  • 音効協力:小林地香子

  • 収録協力:オムニバス・ジャパン

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『激闘!銀行強盗vs同級生』シナリオ

登場人物
 檜木田ひのきだ由莉奈ゆりな(30)銀行員
 田端美里みさと(30)
 銀行強盗

   銃声!
   男女の悲鳴。
強盗「全員そこの隅に固まって座れ!」
由莉奈「みなさま、落ち着いてください。すぐに救助が来ますので!」
強盗「勝手に喋ってんじゃねえ!」
由莉奈「す、すいません!(小声)みなさま、大丈夫です。警察には自動的に通報されておりますので間もなく助けが──」
美里「あの……」
由莉奈「はい、どうされました?」
美里「檜木田……さん?」
由莉奈「はい。わたくし当行の窓口事務を担当しております、檜木田由莉奈です」
美里「私、田端。田端美里」
由莉奈「あ、えーと、いつも当行をご利用いただきありがとうございます」
美里「じゃなくて」
由莉奈「はい?」
美里「私、港北第一」
由莉奈「そうですか。わざわざ当支店までいらしていただいたのに銀行強盗なんかにねえ……申し訳ありま──」
美里「じゃなくて高校」
由莉奈「高校? 私も港北第一です! 同じ高校の方がいてくださるなんて心強いです」
美里「じゃなくてー」
由莉奈「はい?」
美里「檜木田さん、三十九期でしょ?」
由莉奈「……すいません。何期だったかまでは……」
美里「震災の年でしょ? 卒業」
由莉奈「はい! そうです! え、お客様も?」
美里「覚えてないもんか。高校の同級生なんて」
由莉奈「同級生!? あの失礼ですが」
美里「だから田端だって」
由莉奈「田端さん? えーと……ごめんなさい」
美里「いいですいいです」
由莉奈「あ、わかった! ダンスが得意な仁美ちゃん?」
美里「違います」
由莉奈「あ、バスケ部の実希ちゃん?」
美里「違います」
由莉奈「すいません……」
美里「覚えてなくて当然。あなた、いじめてた側だからねー」
由莉奈「え?」
美里「あなたはいじめてたほう。私はいじめられてたほう」
由莉奈「いじめてた? 私が?」
美里「まあいじめる側なんてそんなもんでしょね」
由莉奈「いえそんな……あ、思い出しました」
美里「ほう。じゃあ言ってみて」
由莉奈「何を?」
美里「どんなふうに私をいじめてたか。言ってみて」
由莉奈「い、今? ここで?」
美里「覚えてるんでしょ」
由莉奈「いやー、今ここで言わなくても」
美里「ね、覚えてない」
由莉奈「覚えてますって!」
美里「じゃあ何?」
由莉奈「例えばー……」
美里「例えば?」
由莉奈「下駄箱に……」
美里「下駄箱に?」
由莉奈「画鋲入れた、とか?」
美里「とか?」
由莉奈「……違うな」
美里「そんな小学生のいたずらみたいなとこする? 高校生が」
由莉奈「ですよねー」
美里「きっと自分がいじめてるって意識もなかったんだね」
由莉奈「そんなこと……意識ありましたよ。すんごくありました!」
美里「すんごくあったの」
由莉奈「すんごくは違うか。ある程度」
美里「おかげで私、二学期の途中から学校行けなくなったんだよ」
由莉奈「あ、じゃあ覚えてなくても」
美里「開き直った」
由莉奈「いや、だって後半学校来てないんでしょ?」
美里「行かなくなったあともライングループで私を追い詰めたのは誰!」
由莉奈「え、学校来てないのに?」
美里「ほら覚えてない。ダンスの得意な仁美と、バスケ部の実希とグルでね!」
由莉奈「ラインなんて……十年以上前のことでしょ、残してないし」
美里「私はすべてスクショしてます」
由莉奈「こっわっ」
美里「どっちだよ怖いのは」
   銃声!
強盗「お前ら静かにしろっつってんだろ。ぶっ殺すぞ! おいお前!」
由莉奈「ひえええ」
強盗「そこのお前!」
由莉奈「わわわ私ですか……?」
強盗「今喋ってたな!」
由莉奈「い、いいえ!」
強盗「お前じゃなかったら誰だよ!」
由莉奈「それは……」
美里「しゃ、喋りました!」
由莉奈「田端さん!」
強盗「てめえか!」
美里「はい……」
強盗「喋るなっつっただろ、わかんねえのか」
美里「ちょっと場所を詰めてもらえないかって」
強盗「理由なんか聞いてねえ。喋んなっつったら喋んな!」
美里「はい」
強盗「お前ら生きて帰れると思ってるかもしんねえけどな、警察次第なんだからな。お前らはただの交渉材料だ。命なんかいつでも奪えるんだからな!」
美里「静かにしてますから。ですから早く警察と交渉してください」
強盗「ふん、お前いい度胸してんじゃねえか。何者だ?」
美里「別に何者でも」
   携帯鳴る。
強盗「おう、警察か。いいか、条件を言う──(離れる)」
由莉奈「(小声)田端さんすごい。勇気あるねー」
美里「は?」
由莉奈「私のせいにされるかと思ってたー」
美里「せいもなにも私たち喋ってたじゃん」
由莉奈「いやまあそうなんだけど。なんか売られるのかなーって、私が」
美里「売る?」
由莉奈「いやだから、いじめてたんでしょ? 私が」
美里「それを恨んでると?」
由莉奈「そうなんでしょ?」
美里「あのねえ」
   銃声!
強盗「いいか、これからお前らの中から一人生贄になってもらう」
二人「え?」
強盗「警察は俺の条件を飲みたくないらしい。それならそれでこっちの覚悟を見せてやろうってことよ」
由莉奈「そんな……」
強盗「生贄になるってやつは立て。さあ!」
全員「……」
強盗「上等だ。そんならこっちの端から立ってもらうまでよ」
全員「悲鳴」
美里「あの、すいません!」
由莉奈「え?」
美里「て、提案が!」
強盗「提案だと?」
美里「あのですね……」
由莉奈「田端さん」
美里「この……」
由莉奈「この人がなるって言ってます!」
美里「は?」
由莉奈「この人が生贄になりたいって言ってます」
美里「何言ってんの!」
由莉奈「どうせ私を売ろうとしたんでょ」
美里「なわけないでしょ!」
由莉奈「じゃ提案って? 私のこと売ろうとしたんでしょ。私のこと恨んでるから」
美里「売ろうとなんてしてないって」
由莉奈「私を恨んでる気持ちがあるんだからそうでしょ」
美里「決めつけないでしょ。私そんな人間じゃないよ」
由莉奈「信じろって言うの?」
美里「あなたよりはまともな人間だよ」
由莉奈「私だって昔とは違うの」
美里「人間なんて根っこは変わるわけないんだよ」
由莉奈「ほーら本音出た」
強盗「お前らごちゃごちゃうるせんだよ!」
美里「うるせえってなによ!」
強盗「んだと!」
美里「私の提案聞いて!」
強盗「だからなんだよ提案って!」
美里「(冷静に)この人を縛ってください」
由莉奈「は?」
強盗「え?」
由莉奈「ちょっと、やっぱりそうじゃん! あんたさあ!」
美里「何よ」
由莉奈「一生許さないからね!」
美里「許さない? ふん!」
強盗「どうなってんだお前ら」
美里「この人、スキを狙ってなんか企んでたっぽいので縛ったほうがいいかなって」
強盗「おう、そりゃありがと」
由莉奈「ちょっと待ってよ!」
強盗「おい、立て!」
由莉奈「キャッ! やめて! 痛いって!」
強盗「うるせえ!」
由莉奈「あんた許さないからね! 昔みたいにいじめてやるー!」
美里「檜木田さん、それだよ!」
由莉奈「は?」
美里「どうやっていじめてた? 私を!」
由莉奈「どうやって……?」
由莉奈M「その時私ははっきりと思い出した。私はたしかに田端さんをいじめてた。その方法は……!」
強盗「え?」
由莉奈「ハーッ!」
強盗「うおぉ!」
由莉奈M「私は後ろ手に縛られかけていた手を返し、仰向けにして右腕を首に巻き付けた!」
強盗「いてて!」
由莉奈「アナコンダバイス!」
強盗「いてててててっ!」
由莉奈「田端さん、ごめん、思い出した!」
美里「それだよ、檜木田さん!」
強盗「いてー! いてーって!」
由莉奈M「プロレス技をかけまくってたあの日々!」
強盗「いてーよっ!」
由莉奈M「腕を頭の後ろに極めて首も同時に締め、アナコンダに極められるがごとく締めつけるアナコンダバイス!」
強盗「ぐ、ぐるじい……」
由莉奈「いじめの話したのはそういうわけだったのね、田端さん!」
強盗「ギブ、ギブ!」
美里「銃持ってる右手首をもっとねじる!」
由莉奈「うおーりゃぁぁぁぁっ」
強盗「こ、降参だよ!」
   銃が落ちる。
美里「蹴って!」
由莉奈「はい!」
   シャーッと銃がすべる。
美里「取った!」
   突入の爆発音!
警官「警察だーッ!」
   ×     ×     ×
   パトカーが去っていく。
由莉奈「みなさま、今日は大変ご迷惑をおかけしました。こちらつまらないものですがお納めいたただければ」
美里「銀行員も大変だね」
由莉奈「田端さん! 今日はありがと」
美里「別に」
由莉奈「ごめんね。誤解してた。私を売ると見せかけてあんなこと考えてたなんて」
美里「檜木田さんの技なら行けると思っただけ」
由莉奈「私、あんな絞め技……いつも田端さんにしてたんだね……ひどいよね。最悪だ……」
美里「そ。じゃ」
由莉奈「あ、あのー!」
美里「なに?」
由莉奈「……これから私たち……お友達になれるかな」
美里「さあ、どうかな」
由莉奈「そのー、高校の時のことは水に流して、今の銀行員の私と、あ、そういえば田端さんは何してる人?」
美里「私? 私は動物園の飼育員。ライオンとかの猛獣を手なずけるのが得意なの」
由莉奈「え……?」
美里「割引券あげるよ。今度デートででもどうぞ」
由莉奈「ライオン……」
美里「餌やり体験もできて楽しいよ」
由莉奈「手なずける……」
美里「じゃ」
由莉奈「うん……」
                              〈終〉

シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。
無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。
このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。
ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)
【脚本:山本憲司】
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*番組紹介*
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