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漫画の台詞から考える「自分で仕事をつくること」の難しさと面白さ

絵本屋と言っておきながら、今日は漫画の話から始める。

「仕事」がテーマの漫画は世の中に数あれど、漫画好き女子のはしくれとして、この作品を捨て置いてはおけないだろう。

おかざき真里の『サプリ』


主人公は広告代理店で働く27歳のキャリアウーマン・ミナミ。「働く女性」をテーマにした名作だ。詳しい内容については上に貼った記事をぜひお読みいただければと思うのだが、この記事のタイトル通り、この漫画、とにかく名言の多い作品だ。

中でも私が一番忘れられなかった台詞がこれ。


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「そもそも 自分のやりたい事があらかじめ社会に職業として用意されてるわけないと思いますが?」

主人公が働く会社の新人研修のシーン。
「配属されてからこれは自分のやりたかったことじゃないって思ったことないですか?」
と新入社員に質問されて、ミナミが答えた言葉がこれである。

私はこの言葉を社会人2〜3年目くらいの時に目にして、軽く頭を殴られたような衝撃だった。いろいろな壁にぶつかっていた頃だった。もちろん、「やりたいことができてる」とは言えない状況だった。会社に不満もたくさんあった。でもそれは自分のワガママなのかなあと、モヤモヤモヤモヤしながら日々を送っていた。この言葉の意味を、わかったようなわからないような・・・測りかねてもどかしい自分がいた。



そして10年以上が経ち、私は主婦で母親のフリーランサーとなった。

ここひと月ほど、地元の自治体主催の「創業講座」に通って新たに勉強していたのだが、いろいろ考えていたら、このミナミの台詞が急に脳裏に蘇ってきた。


「自分のやりたいことは職業として世の中に用意されていない」


そうか、そうなのか。私は世の中に用意されてない新しい職業をつくろうとしているんだ。

例えばそれが「ライター」というよく耳にする職業でもあっても、自分しか持ってない自分ブランドを確立するのは、「ライターのしのぶ」という名の新しい職業を作るみたいなものだ。そして、ぶっちゃけ働く時間や、働き方も好きなように、都合よく働きたいと思っている。しかも自分の好きなこと、得意なことを生かして、自分のやりたいように、届けたい人に、届けようとしている。

確かにこれってわがままかもしれない。だからこそ、そんな簡単なことじゃない。だって前例のない職業=「自分ブランド」を世間に認めさせようとしてるのだから。そりゃあハードルも多かろう。


ハードル①「自分で自分の看板を作って背負うこと」

これ、かなり怖い。会社という後盾てなしに「できること」を証明しなければならない。資格も後盾てにはなるが、結局フリーランスは最終的には自分で「私ってこんなことできるんですぅー!」と堂々と表明しなければならない。謙虚が美徳とされて育ってきた日本人にはやたらハードル高い。正直、私にとっては、自分の殻を何枚か破らないとできないことだった。「他人からどう思われるか」を気にしてたら、新しいステージには踏み出せない。まずは自分をどーんと見せる勇気が必要。「稚拙だと思われるかもしれない」と思いつつも、こうやって何かを書いて発信する勇気も、その一つ。


ハードル②「自分を客観視すること」

さらに、その次には徹底した「客側の目線」も必要になる。他人からどう思われるか気にしてたら自分を出せない。自信を持って、「私は良い商品だ」とオススメしなければならない。しかし、伝え方は重要。必要としてくれる人にちゃんと伝わるような言葉やビジュアルを使ってコミュニケーションしなければならない。企業ならば専門の部署がそれなりに考えてくれるが、自分だけの職業なのだから全部自分で用意しなければいけない。「それ、伝わる?」「ちゃんと表現できてる?」常に自問自答。他人のことは客観視できても、自分のことを捉えるのは、なかなか難しい。

ここでだんだん混乱してくる。

大事なのは、自分なの?

他人なの?

セクシーなの?

キュートなの?

どっちが好きなの???

結局、創業講座の最終プレゼンで、私はこの混乱を解消しきれず、松浦亜弥状態で終わったのだった。まあ、恋愛に例えると、相手の好みを見極めきれずにセクシーな網タイツを履きながら、キュートなツインテールにしてしまった・・・ってとこか(そういうの好きな人もいるかもしれんけど。笑)

そしてこの後も、ビジネスモデルとか収益とか言い出したらキリないほどハードルは続くのだろう。


じゃあなんでこんなハードル高いことしてんの?

って話だけど、やっぱり理由のひとつは「面白いから」だろうなあと。もちろん、自分なりの「想い」がベースにあってのことですが。たとえ規模は小さくても、やりたいことをダイレクトに形にできるというのは、難しさ伴いつつも面白い。そして、様々なハードルを乗り越えて、自分の仕事を提供したお客さんが喜んでくれると、毎回涙が出そうになるほど嬉しい。(よく本当に涙ぐんでる) 何より、同じようにやりたいことや目標に向かって頑張る人たちとの出会いや関わりは、とても刺激的で楽しい。その楽しさの渦にいると、生活の中に、愚痴や不満が入ってくる余地がなくなり、前向きなパワーで自分が満たされる気がするのだ。



そういえば、『サプリ』を読んでいた頃の私は、組織の中でカッコよく働くキャリア女子に憧れていた。結果として漫画に出てくるようなカッコいい女にはなれなかったけど、今、周りで夢や目標に向かって頑張るたくさんの素敵な女性たちを見ていると、結婚しようが母親になろうが、いくつになったって、色々チャレンジして楽しくカッコよく生きることはできるんだと分かった。

そういう発見ができただけでも、私の人生かなり面白くなったと思うのだ。


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