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未来を予測する最善の方法が詰まった意欲的な本『フードテック革命』

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

だれしもが避けては通れない「食事」。地球上の人々が1年間に食事をする回数は、約8兆回あるそうです。いま、この食を再定義し進化させることで新たな産業を生み出そうという動きが起きつつあります。それが「フードテック」です。

2025年までに市場規模が700兆円に達するとの予測もある新産業。とてつもない規模ですが、先に挙げたチャンス(対象、回数)を考えれば夢物語とは言えないでしょう。

日本ではまだ珍しいフードテックについて、具体的かつ包括的にまとめた本が出版されました。以前より興味をいただいていたため、発表された瞬間に予約して楽しみにしていました。トータル400ページという力作!この連休中にじっくりと読むことができましたので、noteにまとめておきます。

わたしは比較的料理をするタイプで、その原点は小学生のときに母親のお菓子作りを手伝うことだったと思います。その後、キャンプなどのアウトドアを通じて料理に親しみ、学生の一人暮らしのときは安価で旨いものを極めようとがんばっていたように記憶しています。それが高じて市場の場外をうろつき、相場の下がった魚を1匹買って1週間食いつなぐなどしていました。

大人になってからは凝った料理や調味料の調合などにハマったり、パンやお菓子づくりもよくしていました。圧力鍋をはじめて使ったときは「これはもしかして革命なのでは!」とひとり興奮したり。最近では低温調理器を手に入れ、さらなる革命を体験したところでした。

コロナ直前にお邪魔したイノベーティブ料理店の本棚に『モダニストキュイジーヌ』原著5冊があるのを見つけ、自分でもその家庭版を入手しました。これがものすごい代物で、興奮冷めやらぬまま書いたのが以下の記事です。

これは私の記事の中でもかなりロングランを続けており、毎月一定のアクセスがある珍しいものです。やはりクックパッドやクラシルを例にあげるまでもなく、料理関連のニーズは高いのでしょう。

さて、本題の『フードテック革命』です。全10章400ページに渡り、新産業「食」がどう進化していくのかが包括的にまとめられています。特に衝撃的だったのが「なぜフードテックなのか」が語られている冒頭において提示された以下の図です。

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※ 『フードテック革命』P26より

世界にはまだ飢えなどの問題が残っているとはいえ、日本をはじめとした多くの国々では「食は豊かになった」はずです。生産から流通まで、関係者の長年の努力により私達は世界中から様々なものを取り寄せ、多様な食を享受しています。ところが、世界のフードシステム全体を見てみると、食べれば食べるほど体の内も外も傷ついていくという事態になっているようなのです。これには正直びっくりしました。

また、生活者の変化による「食の価値の再定義」も、フードテックが注目を集める要因だと本書は指摘しています。

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※ 『フードテック革命』P29より

これまでは時短やいつでもどこでも買える利便性を追い求めてきました。多様化するニーズやウェルビーングを求める生活者にとって、食の価値を再定義する機会が訪れているのです。今年の新型コロナウィルスによる自粛も、ここに火を付けるでしょう。私自身も家で料理をする機会が爆増しましたし、お店で食べられないなら自分でつくってやろう!と、新たなレシピの開拓に余念がありません。

これらの新たな動きの中心になっているのが「スマートキッチンサミット」。2018年に日本で開催された際に、本書の監修でもある外村仁さんが解説した記事がこちらにあります。

「MAKE」というサイトをご存知でしょうか。もともとはDIY工作の専門誌で、小難しい技術をいじくりまくるサイトなのですが、投稿の中に料理が出てきたんですね。

それまで誰も触っていなかった未知の領域に「料理」があったのだと思います。最初は、料理というよりも「食べられる物」をDIYに組み込んだ、というのが正しい表現かも知れません。鍋の温度管理ができる装置を自作して卵をいれたら、温泉卵ができちゃったよ、みたいなノリで始めて、サーモンをジップロックにいれて、こんな温度で温めてみたら、こんな風になったと。すべてDIYの実験の延長でした。ところが、やってみるとフライパンで焼くより、サーモンがずっと美味いとなって。

私もエンジニア出身なのでよくわかりますが、エンジニアと料理の相性はとても良いです。実験系であれば特にかもしれません。なにより、実験がうまくいくと「リアルに旨い」というのは、フィードバックと改善を信条とするエンジニア魂に火をつけます。

なにせボリュームが多くすべてを解説するのは難しいのですが、最近話題の「植物肉&培養肉」や「フードロボット」などの最新情報も、しっかりとした調査により網羅されています。また、章の間に入るインタビューの人選が素晴らしく、味の素や不二製油やユナイテッド・スーパーマーケットHDなどの既存大型プレイヤーはもちろんのこと、史上最短でミシュラン3つ星を取った「HAJIME」オーナーシェフ 米田肇氏や通販のみの人気チーズケーキ田村浩二氏なども網羅。各界のキーパーソンがいまの食をどう捉えているか?を知れるだけでも、価値があるでしょう。

だれもが毎日触れている「食」。本書を通じて、新たな価値を発見できるかもしれません。

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#COMEMO #NIKKEI

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