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国消国産を実現するにはフードロス対策から

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ 本記事は日経未来面×COMEMO連携企画への寄稿です。

今月のテーマは「どうすれば国内で必要な食料を国内で供給できるようになる?」ですので、いち消費者目線での意見を書いてみます。

新型コロナウイルスの感染が広がる中で、我々は三つの教訓を得たのではないでしょうか。一時マスク不足の問題がありましたが、もしそれが食料だったらどうなっていたでしょうか。コロナ禍で、いくつかの国が食料の輸出を制限しました。それらの国から日本は食料を大量に輸入していなかったので影響は出ませんでしたが、何か混乱が起きたとき、食料の輸出入が滞る恐れがあることがわかりました。

よく「日本は食品自給率が低い」と言われます。そのため、なにかあったら食うに困ってしまうのでは?と心配する向きもあるようです。上記の記事でもそのことに触れられています。これは本当でしょうか?

まず自給率ですが、農林水産省が盛んに低いといっている数字は主要国とは違う計算方式である「カロリーベース」が採用されています。生産額ベースでみると64%程度で、イギリスの63%と同程度となっています。

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わたしは、戦後の自給率が低下したきたのは食生活の変化、つまり需要が変わったことが大きいと理解しています。給食にもパンを出し小麦の需要をつくり、肉食需要の増加により飼料であるとうもろこし等の輸入が増えました(ちなみに、とうもろこしは84%、小麦は51%を米国から輸入しています)。

自由貿易と経済発展により食文化自体も多様化しました。フレンチ、イタリアン、中華などなど、街には様々なお店が溢れ、気づけば東京は「世界一の美食の街」(ミシュランガイドにおいて世界一星付きの店が多い都市)になりました。異国の料理には日本ではつくれないものも多く、当然輸入することとなります。

また「何か混乱が起きたとき、食料の輸出入が滞る」ことは事実かもしれません。今回のパンデミックでは飛行機の減便により多少の影響はでましたが、業界のみなさまの人知れぬ努力により現在にいたるまで大きな混乱があったとは思いません。マスク不足に関しては、単純に需要に生産が追いつかなかったという話ですので、解くべき課題が異なります。

また、本当に食品輸入が止まるような有事というのは、いまや戦争状態しかありえません。その場合でも、現在使っていない荒廃農地を活用することで、現代の基準では豊かな食卓とはいかないものの、生命を維持する食料は確保できます。以下の図をみると、戦時中にいもばかり食べていたという話をリアルに感じられます。

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出所:農林水産省、食糧自給力指標における食事メニューのイメージ

一方で、国内経済的な視点でみれば、圧倒的に輸入超過である部分を国内で可能な限り巻き取ろうというのは賛成です。2019年では、約8000億円の輸出に対して、約8兆6000億円の輸入超過となっています。

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出所:農林水産省『農林水産物輸出入概況』2019年

では「輸入しているものを国内でつくろう!」と言っても、農業の担い手や耕地の不足により、短期的に解決できる課題ではなさそうです。ここで消費側に目を向けてみれば、短期でも解決できそうな話があります。それが「食品ロス」の削減です。

これだけ食品を輸入している日本ですが、年間2550万トンの食品廃棄物を出してします。しかも、そのうち612万トンはまだ食べられるのに廃棄されているもの、いわゆる「食品ロス」です。

これは、世界で飢餓に苦しむ人々に向けた総援助量(年間390万トン)の1.6倍に相当します。また、食品ロスを国民一人あたりに換算すると「お茶碗1杯分(約132g)」が毎日捨てられていることになります。これをゴミ箱ではなく胃袋に収まるようにすれば、その分の輸入が減り貿易収支が多少改善します。

そのためには、ひとりひとりの意識が大切です。たとえば、賞味期限と消費期限の違いを正しく理解することなども第一歩でしょう(賞味期限が切れたとしても、食べられないわけではない)。

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タイトル画像提供:zak / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI  #国消国産なぜ必要


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