名盤・KinKi Kids『N album』が3年の時を経てなお三十路のハートをえぐりたおしてくる件
早々に気持ち悪いカミングアウトで申し訳ないのだが、昨年の冬、私には好きな人がいた。神に誓って何も悪いことはしていない。けれど、想ってはいけない相手だった。もうこの恋もあきらめ時だなと思っていた毎日のなか、車に流れていた『N album』。いくつかのフレーズが急にクリアに聴こえた。心とシンクロした。この冬も、昨年を思い出して車に流しては勝手に切なくなっている。
まずは『モノクローム ドリーム』。イントロに騙されてはいけない。はちゃめちゃに切ない曲だ。
ちなみに以前、こちらの記事を書かせていただいた者です。
【歌詞コラム】KinKi Kids「ボクの背中には羽根がある」を令和元年7月に聴く
https://utaten.com/specialArticle/index/3960
■背中合わせだって良かった
『モノクローム ドリーム』は、堂島孝平氏による作詞作曲である。彼は、そのほんわかとしたイメージとは裏腹に、楽曲ではキレキレのリフやスパイシーな転調をかましてくるから油断ならない。
なにより彼の詞に、私は弱い。なんというか、程よい行間がある歌詞だと思う。すべてを言ってしまわない良さがあるし、描写が実に詩的だ。
ずるさを描いても、弱さを描いても、どこか優しさが残る。おそらく、作者自身がもつ生来の優しさが、反映されているのだと思う。
なおかつ、いわゆる「パワーワード」。そういうものを生み出す人だ。
隣り合っていたかった 背中合わせだって良かった
きっと これ以上 追いかけやしないから
≪『モノクローム ドリーム』歌詞より抜粋≫
このフレーズはいまでも泣けてくる。この歌詞をきっかけに『N album』をリピートし始めた。
思わずブレーキを踏んでしまいそうになるほど、クリアに心の奥まで入ってきた。
恋が叶わなくてもよかった。選ばれなくてもいいから、そばにいたいと思った。軽快なメロディに乗せて、こんな切ないこと歌わないで。私の気持ちを代弁しないでよ、堂島さん。
鮮やかだった日々が ため息でモノクロになる
どうせ これ以上 塗り直せないのなら
≪『モノクローム ドリーム』歌詞より抜粋≫
当然、頭からあらためて聴きなおした。『モノクローム ドリーム』の意味はすぐに分かった。
恋をすると世界はバラ色だとか言う。でもひとたび失えば、世界中なにもかもどうでもよくなるような、色も音もないような世界に堕ちてゆく。
もうどうにもならないのなら。“これ以上 塗りなおせないのなら”……その続きが優しいんだ、この曲は。だから、より一層切なくなる。
恋の終わりの優しさほど、切ないものはないから。
■振り向かなくていいから
せめて 夢の中で 会わせてくれやしないか
今でも 君を 抱きしめたいんだ 延々 延々
せめて 夢の中じゃ 悲しい顔はしないで
優しくなくていいから
≪『モノクローム ドリーム』歌詞より抜粋≫
“せめて”って言葉。叶わない想いのときほど、悲しい願いのときほど、強く心に響いて痛い。
聴いているあいだじゅう、好きだった人の顔が、頭に浮かんで離れなかった。夢の中でいいから、会いたいと思った。困らせたいわけじゃなかった。だから、悲しい顔はしないでほしかった。
優しくなくていいから、そして最後には“振り向かなくていいから”と、そう歌ってこの曲は終わる。
でも『N album』は、まだまだ終わらない。この次にはまたとんでもない曲が続く。敬愛する久保田洋司氏の作詞による『星見ル振リ』。萩庭和樹氏の楽曲も最高に美しいんだ。
『無邪気な時間は過ぎやすく』(Sexy Zone)のコンビ。毎回私を泣かせてくるよ。
それにしてもこの曲順考えたのだれだよ天才かよドSかよ天才だよありがとうな!!!(ヤケクソ)
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