インザスカイの話
■あなおそろしや、千葉雄大
まあ今回はとにかく、千葉雄大くんおそろしいよねって話をさ。
まずはさせてくださいや。
そろそろすんごい恋愛ものとか観たいですねえ、千葉くんの。
30歳のわりに幼い顔立ちのぶん、息の長い役者になるだろうなと思っていたけど………
年齢相応の色気、ばっちりありますねえ。
待てねえ。今すぐ観たい。
色気がやばい千葉雄大を、大人の恋愛に堕ちる千葉雄大を観せてくださいえらい人。
千葉プロの通り名に恥じない、貪欲で気骨ある役者さんだと思う。
とにかく表現が豊かだし、陽も陰も、二枚目も三枚目も似合う。というか、似合うように自分を操ることができる。
「応えること」を大事にしている役者さんなんじゃないかな。
■成瀬がいてよかった
今作唯一といっていいほど、成瀬の心だけは揺らがなかったじゃないですか。
シノさんに恋をして。
春田の気持ちに応えられない姿勢も示した。
春田への感謝を、言葉にして伝えられる成長まで見せた。
飛行機への愛も変わらない。
だからですね、やはり中盤からは成瀬の幸せを祈り始めた私がいたわけです。
逆に言うと、成瀬以外は何を考えどこに向かっているのかが分かりにくかったから。
唯一、感情移入できたキャラクターだったんですね。
もし成瀬がシノさんと幸せになれないのなら、私が引き取ろうではないか、ぜひ引き取らせてくださいと。
それくらいの想いを彼には抱いていました。(ガチやないか)
最終話。
シノさんも春田への想いを断ち切って、前を向く姿勢を見せていた。
私は思いました。
これ、成瀬ワンチャンあるなと。
ワンチャンあるなと思ってたらば、距離の詰め方えぐかったっすね。
シノさん。
成瀬に向き合おうとしたら、とたんに堕とされてしまった。
そんなかんじ。
■男性同士だからこそ成立した稀有なシーン
あのシーン、どちらも男の顔を見せるのがうまい。
(分かりやすくあえて男性、女性っていいますね)
成瀬のアプローチも、男がするそれで。
いくら可愛い顔をしているからって、成瀬が女性だったならあのシーンはあれほどときめかない。
たぶん成立しないかな。
『どこがいいのかな?』と、誘うような目。
距離のつめかた。
たまに出る、男っぽくラフな口調。
さりげなく肩に触れた手。
どれも、男性が好きな相手にするアプローチとして描かれてきた王道。
その仕草や瞳にシノさんがクラッとくること、不思議なほどなんの違和感もない。
一瞬、キスしようとして躊躇うシノさんの表情もいい。
「男の顔」だ。
その一瞬を見逃さず、自らいく成瀬もまた、男の顔をしている。
『キスしようとしてたでしょ』
実に小悪魔的だが、日本のドラマではまだまだこういう役割やセリフは男性のものといえる。
スタンダードでテンプレ的な「男」同士の恋。
誰もがときめくものとして表現することはきっとまだまだ難しい世の中で、実によくできたシーンだったと思う。
萌えに頼りすぎない、しっかりとしたラブストーリーのワンシーンだった。
千葉雄大すごい。
戸次重幸すごい。
視聴者である私が女だから、成瀬やシノさんの表情、仕草にギュンギュンするだけだろ、と言ってしまえばそうかもしれない。
けれど、ひとつの恋が始まる瞬間として、この上なく美しく自然だったと思う。
心のベストシーンに刻んでおきたいですね。
■リアリティとラブコメディのどっちつかず感
ここからは余談です。
ラブストーリーには、出会いのきっかけと恋に落ちるきっかけが必要。
ミステリやサスペンスは、事件を起こす動機が重要。
それはテッパンの話。
でも、我々が生きる世界は必ずしもそうじゃなくて、
気付いたら好きだったり、なんとなく結婚したり、
わけもなくひとをころすなんてこともある。
だから本当は、小説もマンガも、ドラマも映画も、あれこれ「理由」にあふれる必要はないのかもしれない。
リアリティを求めるならね。
でも、我々は作品という非日常に飛び込みたいわけだから。
「キャラクター」という、自分ではない人間を生きたり、好きになったり、応援したりしたいからさ。
だから「作品」を観る。
違う世界にのめりこみたくて、引き込まれたくて。
キャラクターには命がある。そう思えるほど入り込める作品はおもしろい。
人生の宝になる。
そうした作品は、総じて「理由」に優れている。
起こる出来事にすべて意味がある。
キャラクターの感情や行動が変わるには、おおげさなくらいの理由がなければ、なかなか観る者はついていけない。
だってフィクションなのだから。
あえて多くを語らず「視聴者の想像力にまかせる」という手法ももちろんある。
名作になればなるほど、ほんの一瞬の端役にまで想いを馳せることもある。
たとえば医療ものの患者役とかもそうだし、
『タイタニック』の、死を待つことをきめた人々。ああいうのもそうかな。
でもかなり難しい。
優れた描写が必要だし、そのシーンに目を向けさせるための工夫は計り知れない。
本作は、いろいろとどっちつかずだったかもしれないな。
リアリティを求めたいのなら求めてほしかった。
それは、この上ない挑戦になったと思う。
世界観の異なる優しい世界で育まれる、愛や恋が見たかった。
ラブコメディならば、もっと突き抜けても良かったと思う。
おおげさなくらい、恋に堕ちるしかないエピソードで結ばれてほしかった。
■物語を完成させるピースを配り終えないままのラスト
「受け取り手の自由」「察して」という作品、近年増えてきた気がするけど、ならばもう少しヒントがほしい。
そうしたら、自分のなかで咀嚼するから。
物語を完成させるピースのすべてを与えないまま放り投げられたような物語は、少し消化不良を感じてしまう。
なにかと比べる必要はなく、あくまで本作の個人的な感想です。
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