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熾す人05_ダイアローグ|石川 泰宏 さん

下妻で出会った人たちと、私 大竹との対話の記録を公開します。
この街で、どんなことを考えて、どんなことを想って、どんな活動をしている方々がいらっしゃるのか。
変に飾らないそのままの部分を残したくて、対話(ダイアローグ)のまま記録していく試みです。
協力隊となった私 大竹との対話の様子を通じて、下妻に暮らす人、関わる人たちの姿と共に、下妻の雰囲気が少しでも伝わると良いな、と思います。


今回の話し手
石川 泰宏さん(45歳)
ミズベリングしもつま」と「みんなの社会力を育む会めぐりあい(通称:めぐりあい高道祖)」の立ち上げ・運営に携わる。(大竹は、SHIMOTSUMA DESIGN MEERINGで石川さんに初めてお会いしている)


0.ダイアローグ開始

大竹:じゃあ、まず年齢お伺いしても良いですか?
石川:45です。
大竹:石川さんが関わってらっしゃる活動は…。
石川:「ミズベリングしもつま」と、高道祖(たかさい)の「みんなの社会力を育む会めぐりあい」っていう長い名前の。
大竹:ああ!「めぐりあい高道祖」。
石川:そうそう、拠点の名前でもあるんだよね。

大竹:下妻のご出身ですよね。
石川:そうです。今は高道祖小学校学区に住んでるんですけど、元々の出身は下妻小学校学区だったんですよ。
大竹:駅あたり?
石川:駅よりももっと東側かな。下子町(げごまち)っていうんですけど。
大竹:ずっと下妻ですか?小・中・高?
石川:小・中が下妻で、高校がつくば市ですね。卒業して今の仕事についてから、2年くらいつくばに住んだことがあって、また戻ってきたって感じかな。
大竹:本当に下妻近辺でずっと暮らしてこられたんですね。

1.下妻市出身者でも「アウェー」

大竹:活動期間で言うと、高道祖の方が長いんですか?
石川:設立当時からですね。
大竹:何年前ですか?
石川:設立は2年前ですね。
大竹:そうなんですか!皆さんいろんな活動されているから、もうちょっと長いのかな、と思ってましたが。
石川:2019年ですよ。
大竹:じゃあそれまでは、地域の活動はあんまり関わってこられなかった?
石川:うーん、表立っての市民活動ではなくって、子供会とか、PTAとか、その辺で活動していて。高道祖で知り合った仲間が「コミュニティースクール」というものを立ち上げたいという話があった。PTAとは関係ない地域の活動だから。内容がすごく良かったので「じゃあ、やろうか!」と始めたのがきっかけかな。だから厳密に言うと2018年の秋口だったから、設立はそこになんのか。
大竹:なるほど、2018年時点では計画があったんですね。
石川:で、実際行事を始めたのが、2019年の2月だな。
大竹:そうなんですね。今まではPTA、学校区の中の関係でやってらっしゃったのが、それより大きな地域の枠でやる様になるというのは、結構大変だと思うんですけど。
石川:うん、地域枠になると、学校から「外側」になってくるじゃないですか。そうすると、なんて言うのかな、どこの誰に声をかけて、地域に引っ張り込んだらいいのか、とっかかりの部分が凄い苦労して。自分は元々高道祖ではなくて、下妻の中心部出身だから、アウェーなんだよね。だから「石川です。」って言っても「おめぇ、誰だぁ?どこのもんだぁ?」ってなっちゃう(笑)
大竹:えぇ!そうなんですか。
石川:昔からあるエリアで、昔ながらの考え方を持った方が多いから、巻き込むのが難しいですよね。
大竹:そういう特性の強い地域というのは前から分かってらっしゃたんですか?
石川:ああ、それは分かってた、分かってた(笑)
大竹:それでも、あえてやってみよう、ということですか。それは、何でですか?(笑)
石川:それは、やっぱり、普通だったら面倒臭くて、自分の殻というか、自分の家だけで生活できてれば良いって思うかもしれないけど、結局、自分は実家を出て高道祖に根を下ろしたんですよね。それは「終の住処」になるわけなのよ。そういうスタンスでその場所にずっといるのに、人間って一人で生きていけないじゃない。となると、自分も助けてもらわなくちゃならないし、逆に助けないといけない場面も出てくると思うんですよ。そんな時に閉じこもってたら、実際その場になった時に、さっきの話じゃないけど「おめぇ、誰だぁ?」って、もしかしたらなっちゃうんで
大竹:そうなったら困りますよね。なるほど。

2.一番のきっかけとなった東日本大震災

石川:そういったことに備えて、自分を地域に「売り込む」じゃないけど、知ってもらいつつ、自分も地域を知りたい、みたいな思いがあったんですよ。そのきっかけっていうのが、東日本大震災だったわけ。
大竹:そうだったんですか。10年前ですね。
石川:自分が住んでいる高道祖の地域は、外から来た新しい人が集まっている分譲地なの。自分なんかは、実家に住んでる頃から、町内会とか、そう言ったものを親がやってるのを見て育ってるから。町内会とかに入って活動するのが当たり前だと思ってたんだけど、自分が根を下ろした場所が、そういう考えではなかったんですよ。
大竹:そうですね、いろんなところから来ていらっしゃると。
石川:一応、町内会ではないんだけど、街路灯とかを管理する管理組合があって、その総会で、何人かやっぱり、同じ思いの人たちがいて、その人たちと「町内会作りませんか?」って意見出したら、「いやぁ、そこまでは…」っていう人も結構居て。町内会を作るまでには至らなかったけど、同じ思いを持つ人たちとは交流が始まりました。その何年後かに、例の大震災が起きたんです。地震の後、やっと夜中に家に帰ったら、普段から交流してたその人たちが「大丈夫か!」ってライト持って、真っ暗なのに来てくれていたんですよ。
大竹:へぇー!
石川:うちはその時、私も妻も遠くの勤務地だったから。小山だった時、私は。妻が谷田部の方だったので。
大竹:うわー…それは遠いですよね。
石川:めちゃめちゃ遠くて、3倍も、4倍も時間がかかったから。その時は帰るのが夜中になっちゃって。それで来てくれたんですよ。その時に「ああ、地域のつながりってこれだよなぁ。」と思って。それだけじゃないんですけど、そういうのを経験して、地域のつながりっていうのは非常に大切だなと、ものすごくその時に感じたんですね。「じゃあもうこれは、黙っているわけにはいかないな。各家庭の『個人プレイ』を変えるしかない。」っていう思いに至り。ただ、そうは言ってもどういう風に活動したら良いか。活動するためのプラットフォームもないわけですよ。だから、まずは、仲良しになったご近所さんを、変な話、巻き込んで、「まず、回覧板を始めようか」というところから、やっていって。そしたら今の仲間とも小学校で、子供たちが一緒だから出会って。
大竹:その頃まではお知り合いではなかったんですね。
石川:全然、全然。小学校に子供たちが上がってからだね。その当時は子供たちは保育園生だったんで。それから知り合って、話してみたら「ああ、こういう人も近くにいるんだな」と。地域とのつながりを作ろうと思って一生懸命やろうとしている人がいるんだなぁ、というのが分かって、連絡を取る様になって、活動していた中で、「コミュニテイスクールを作りたい」ていう。要は学校の先生を助ける地域の活動なんだけど。自分の子供たちのためにもなるし、地域でも、言い方が適切かわからないけど「余ったリソース」を活用できるんじゃないか、と。それで地域の繋がりも出てくるから、一石二鳥どころの話ではないから、「もう、やっちまうか!」となって、「めぐりあい」を立ち上げた、というのが経緯だったんですよ。
大竹:ずっとやりたいな、と思ってたことが、この数年でわっと形になったんですね。ちなみに「めぐりあい」って市民団体になったんですっけ?
石川:これはまだ任意団体なんです。ミズベリングも任意団体。
大竹:NPOを目指してらっしゃるのがミズベリング?
石川:NPOか一般社団法人を目指しているのがミズベリングで、立ち上げやすいのは一社かなぁと、いうところまで話が来ています。「めぐりあい」も同じく、一社かなと。

3.2つの違う活動の目指す先

大竹:ミズベリングしもつまは、「めぐりあい高道祖」の活動の軸は違いますか?
石川:そうですね、軸は違いますけど、行き着く先は同じですね。結局、地元の人とのつながりを作って盛り上げましょうっていう話なんですよ。ミズベリングも。ミズベリングの入り口は、砂沼とか小貝川とかを活用して、アクティビティを行って、そこからつながりを作って、地域を活性化しよう、という切り口なんですね。だけど、「めぐりあい」は、学校教育を何とかしながら、地域の人を巻き込んで、という切り口なので。入り口は違うんだけど、目指す先は、地域の活性化や、地域を「最適化する」ことを目指しているので。ゴールは同じだと思うんですよ
大竹:地域の外の人、中の人も含めて、人材とか近しい興味を持った人が集まれる様な場所と、一緒に何か活動できる様な拠点をつくるということで2つやってらっしゃるんですね。
石川:そうです。
大竹:今何人ぐらいそれぞれいらっしゃるんですか?
石川:めぐりあいは…11名かな。まだ11名しかないんですけど。
大竹:おお、結構いらっしゃると思いますよ。
石川:ミズベリングは、6名かな。

4.砂沼でSUPの経緯

大竹:ミズベリングしもつまの設立はいつですか?
石川:ミズベリングは今年の3月です。
大竹:構想はいつからあったんですか?
石川:それは去年の10月。
大竹:何で「水辺」の活動が始まったんですか?
石川:きっかけが「砂沼未来会議」なんです私もメンバーって訳じゃないけど、チラッと参加した時に、この水辺なんか利用できないかな、ていう話があって。その時ちょうど、「SHIMOTSUMA DESIGN MEETIGN」があって、それにも私、ちょうど出てたんで。それで、「まずは水辺で何かできることを考えようか」と話して。「SUP(スタンド・アップ・パドル)」というところに行きついて、しかも、SUPだったら、下妻市内に指導できる方がいるから、やりやすいんじゃないの?って。いくら素人の俺らで「SUPやろう!」って言ったって、指導はできないから。それで始めたんですよ。で、10月に、トライアルでちょっとやってみたところ、結構見学者が集まったり、市民の興味、公園に来ていた人たちの反応が結構よかったんですよ
大竹:橋から見ていた人たちも多かったですよね。
石川:そうそう、みんな聞いてくるですよ「何やってんの?」「砂沼ってこんなことできんの?」って。感触が良かったんで「これはいけるかな?」ってところです。
大竹:なるほど!動きが早いですね!
石川:早かったと思う。
大竹:ずっと砂沼に対して興味関心が強かったんですか?
石川:それはやっぱり、自分は下妻で育ってるから、物心ついた時から砂沼っていうのはあったし、砂沼には自分の故郷の拠り所というのがありました。今は高道祖ですけど、生まれ育ったところは砂沼が近かったから、小さい時は、父親の自転車の後ろに乗せてもらって一周してもらった記憶もあるし。昔は山菜も生えてて、タラノメとかもぎって、家帰って食べたりとか。
大竹:砂沼に山菜もはえてたんですね!素敵な思い出ですね。
石川:そういう良い思い出が、根底にはありますよ。なので、砂沼未来会議も興味があったんですよね。

5.下妻に帰った理由、高道祖の魅力

大竹:高校でつくばに出て、卒業後も2年ほどつくばにお住みになったっておっしゃってましたけど、「下妻を離れようかな」と考えたことはなかったんですか?
石川:つくばに一瞬だけ、2年だけ住んだっていうのは、よくあるじゃないですか、若い人が「違う世界を見てみたい」みたいなね(笑)。
大竹:ありますね(笑)。
石川:当時住んでたところはそんなに都会いっぽいところではなかったけど(笑)、下妻からすれば、つくばって都会でしょ。それで、一回出たんだけど…うーん…出てみて、外国の方もいて、触れ合えて、面白かったりするんだけど…やっぱり生まれ育った場所の自然というか、原風景が、当然ながらつくばにはないんですよね。ない、ってなった時に「やっぱりここじゃねえな。やっぱし、俺がいるべきなのは下妻で、そこでいろんな人と繋がって、自分の街だから、下妻を盛り上げなくちゃいけねぇかな。」と思ったんだよね。
大竹:うーん、凄いですね…!ご結婚も下妻戻ってからですか?
石川:いや、つくばにいる時にしてます。
大竹:下妻に帰りたいんだけど、となった時はご夫婦で自然と決断できたんですか?
石川:そうねぇ、妻は元々福島出身でこっちに出てきてた人だったから。
大竹:賛成してくださったんですね。
石川:あとはほら、下妻に帰ればじいちゃんばあちゃんもいる訳ですよ。自分の親ですけど。行く行先、子どもができた時に安心だな、と。
大竹:頼れますしね。それでもご実家周辺じゃなくて、高道祖を選ばれたのは新興住宅地だったから?
石川:土地が空いてなかったってのもあるかなぁ。結構キツキツだし。いくら田舎の下妻といったって、中心地は意外にそんなに「緑」がないしね。あとは、「つくばじゃねぇなぁ」と思いつつも、つくばってブランドだから(笑)、「つくばに近い方が色々遊びに行けっかな?」と思って選んだのが高道祖だった。実は高道祖という地域に特別思い入れがあったのではないんだよね。
大竹:周辺環境とか、交通の便とかですね。確かに私も移住の時、高道祖は候補の一つでした。
石川:でも、住んでみれば、「住めば都」ってのは正にで、自然も豊かだし、人も。最初はとっつきにくいんですよ、高道祖の人って。昔ながらの考えだから、よそ者は受け付けない雰囲気があったりするんだけど、だけど、一度仲良くなっちゃうと「うっとおしいぐれぇ」(笑)、言ってきてくれるんですよね。
大竹:何かと気にかけてくださるんですね(笑)。
石川:ハートが熱い人が多いかなぁ。
大竹:茨城の方々恥ずかしがり屋と言われたりしますよね。あんまり自分から積極的に行ったりはしないけど、優しい。
石川:今は、あそこを選んでよかったなぁ、と思ってますよ。うちの実家までもすぐだし。
大竹:子どもの頃のいい思い出があったり、町内会との良い関わりも見てきてらっしゃったから、そういう繋がりを自分でも作りたい、という想いが強いんですかね?
石川:そうですね。さっきも話した様に、自分の住んでいる地区は「新しい人とのつながりを持ちたくない」という人が逆に多いが故に、そういう考えも「アリ」なんだけど、私は何かやっぱり違うなっていうのがあって、今奮闘している最中、ってところかな。

6.現代に合わせてアップデートする「地域とのつながり」

大竹:新興住宅地の中で、回覧板回したりする仲間は増えたんですか?
石川:それは増えています。やっぱり、関わり持ちたいって思ってる人はいるから、声をかければ。
大竹:私は町内会が無くなっている地域に住んだ経験の方が多いのですが、そういう人からすると、どれくらい大変な仕事がでてくるんだろうと想像がつかなくて、逆に怖い、という気持ちはあるかもしれないな、と思いました。
石川:昔ながらの町内会、「常会(じょうかい)」とも言いますけど、そう言ったところって、「うっとおしいぐれぇ」その過程に入り込んでくる事柄って多いんですよね。お葬式の話なんかもとれば、昔は、家でお葬式をやっていたから、まかないも作ったりするから、近所の人がわーっと集まってきて、がさがさーっとやっていったりするから。そういうイメージがまだ、あるんでしょうね。でも、今は時代が違うんで、そんなのはほんとんどないんですよ。
大竹:そうですね、式場などで済ませますからね。
石川:そうなんですよ。結構簡単な仕組みになりつつあるんですよね。自治体や市役所から通知が来たり、回覧板も回せるし、他にもメリットもあるとは思うんだけど、関わりを持ちたくない人も多くて…何でかなぁって。
大竹:うーん…イメージ…「トラウマ」ですかね?
石川:町内会とか、自治会の悪いイメージが、刷り込まれてるのかな。
大竹:親以上の世代を見てきて、とかですかね。
石川:「それが嫌だったからここに来たんだ」って方もいますからね。
大竹:そうでしょうね。
石川:昭和の時代は地域の人たちが、地域の子どもを育ててきて、「あそこのおじちゃんにぶっとばされちったよ、怒られっちったよ。」なんて話も、結構あったんだけど…(笑)。でも今はそれどころか、下手すると「こんにちは」って言っただけで不審者扱いされちゃうんですよ。何でこんな世の中になっちゃったのかなって、それがやっぱり、人のつながりが希薄になってきてるってのもあるし。個人情報やプライバシーの部分で、ネガティブな方向で過敏になり過ぎてるのかな。
大竹:簡単に情報が漏れて、個人が特定されたり、悪用されたりされやすくなってしまった、という情報化社会になったのはあるかもしれないですね。
石川:昔だったら、おおらかな時代で、近所の人が、自分の子どもじゃなくても面倒みたり、道端で子どもが一人でいたら、「どうしたぁ?何やってんだぁ?」って心配して声かけてくれたりした時代があった。我々世代はそういう時代、人とのつながりの中で育ってきてたから。人とのつながりが希薄になってきてる今、学校教育もだいぶ変わってきちゃってて、子どもにとってマイナスな部分もでてきちゃってるんですよね。だから、地域のコミュニティスクールを作って、学校に地域が積極的に関わっていくような教育をしましょうっていうのが文科省からも言われていて、地域の力を発揮する時だと。原点回帰みたいなものですよね。地域で子供を育てていきましょう、地域を盛り上げていきましょうという流れになりつつあるので。ミズベリングにしても「めぐりあい」にしても、地域の人たちをつなげる時期なのかな。昔みたいに戻ることはないと思うんですけど、昔に戻すっていうんじゃなくて、昔の要素を取り入れて、さらにアップデートするっていうのかな…イメージで今しゃべっていますけど、そういうのが必要なのか、という思いがあって。地域を盛り上げるための活動に参加しているというのが、今の私の考え方ですね。だからデザインミーティングにも申し込んで、全部参加してみたんですけど、あれはよかったです。あれは具現化できたら、もう最高ですよね。

7.ゆっくりだけど押しつけにならない関係づくり

大竹:この考え方や意識って、お子さんが生まれたとか、お家を購入したのを境に変わりましたか?
石川:子どもが生まれてすぐはそんなに意識は変わってないけども、子どもが外に出て遊ぶ様になった時に、やっぱり、子どもの安全とか、地域の見守りが、結局今はないに等しいじゃないですか。そうなった時に「ああ、地域のつながりがないと、子育てするのに不安かな」っていうのはありますよね。考え方の違いで、自分なんかは近所のじいちゃんばあちゃんに「なぁにやってんだぁ!」って怒られる環境は良いと思ってるんです。だけど、それを「良し」としない人にとっては嫌なんですよね。地域の人とのつながりの良さというのを分かってもらわないと、こういった類の話は進まないのかな、と。何で地域とのつながりを断ち切りたいのか、という、この「何で」を知りたい。「面倒くさい」「できない」という言葉は聞くけど、そうじゃなくてその言葉の根本には別の何かがあるんじゃないかな、っていうのは個人的には思っていて。それを掘り下げたいな、と思ってるんですよ。
大竹:お話を聞いていると、石川さんは圧倒的にポジティブな現経験を持ってらっしゃるな、と思いました。地域のつながりとか、田舎的なコミュニティに対しての良い経験があって。ご両親や周りの方の姿から、適当な「いなし方」も何となく身についてらっしゃるのかもしれないな、と思ったり。つながりがなかったところからすると、どうしたら良いか分からなくてストレス、っていうのがあるかもしれないです。
石川:うーん、なるほどなぁ…。自分なんかは生まれた時からどっぷり田舎ですからねぇ。
大竹:本当に良い経験をされてきたんだなぁ、と思いました(笑)。
石川:もう、それは本当に。「あの子は、どこそこの子だ」とか、逆に子どもの方からしても「あのオヤジは、どこ家のオヤジだ」っていうのも、こういう風にすると怒られるっていうところまで分かってたから、目を掻い潜って悪戯したりってのもあったけど(笑)。
大竹:(笑)私の過去の経験はそういうあったかい感じではなかったんだよなぁ…。後ろ指刺されるから気をつけなきゃっていう感じで。「怖い」なのかな。
石川:どういう風にそういう人たちに対してアプローチしたら良いのかな?っていうのがまだ読めなくて。あんまりこちらからずけずけ行っても拒否反応示されちゃうだろうし。
大竹:信頼してもらうしかないのかな…。
石川:高道祖やっているイベントは、「ここでいつ何時からこういうイベントをやりますよ、来れる人は覗いてみてね」くらいの軽い募集にしています。それに関して「見に行くだけでも良いんだったら」と何人かは顔を出してくれましたね。来た方にはしつこくなんない程度に「次はここでやるから来てみてね!」と営業活動して、「友達も連れてきて良いよ」って押しつけになんない様にすれば、スピードは遅いけど、広がるかな?と思ってるんですよ。これはスピード感持ってはできないと思うんですよ。じっくりと腰据えてやる事しかできない。というところまで、もうコミュニティが壊れちゃってますよね。あんなに田舎な高道祖でさえそうですから。
大竹:なるほどなぁ。
石川:それを打開するきっかけとして、「めぐりあい」を立ち上げてみたりとか。デザインミーティングに入ってみたりとか、試行錯誤してみたりしています。まだ全然、我々が目指す状態には程遠いですよね。
大竹:ゆっくり時間のかかる事だろうな、と。「友達」という表現が適切かわかりませんけど、人間関係・信頼関係の構築ですよね、やってらっしゃることは。だから、サービスというか、ビジネスライクというよりかは、「風の谷のナウシカ」でキツネリスに「怖くないよ」ってやる感じ(笑)
石川:はいはいはい!そうそうそう(笑)。そんなイメージだよね、正に。

8.コロナ禍でも頼れるメンバーと活動し続ける

大竹:腹を割って相談できる相手というのは、それぞれのメンバーでいらっしゃいますか?
石川:いますよ。良い仲間ですね!もう曝け出してしまいますよね(笑)「え!そんなこと思ってたの?意外と気ぃちっちゃかったんだね〜」とか「意外と石川さん面倒くさかったんだねぇ〜」とか言われて「うるせぇ!(笑)」と返せる様な。こちらも本音で言っているから、向こうも本音で返してくれて、その返しがとっても嬉しい。ガンッと言えば、向こうからもガツンと言ってくれるし。
大竹:良いですね(笑)。そんな仲間とだったらきっと形になりますね。
石川:形にしたいですね。
大竹:これからずっとこの活動はやっていこうと考えてらっしゃるんですよね。
石川:そうですね、これは継続していこうと思っています。
大竹:生涯かけて?
石川:今45でこれを初めて、何歳で形になるか…。60かもしれないし、70かもしれないし。でもまぁ、生きてるうちには形にしたいなぁと。そこに追い討ちをかけたのは今回のコロナですよ。コロナは、人とのつながりを断ち切りますよね。会っちゃいけないから。これは我々の活動からすると本当に痛いですよね。ZOOMとかありますけど、所詮それは、仮想空間なんですよ、リアルに会ってる訳じゃないので。コロナがあったせいでって言うのは変だけど、ゴールに到達するスピードはさらに落ちたと思います。ただ、コロナだからって辞めちゃうのは簡単で。コロナの中でもできることを継続しないと、この活動は止まっちゃうな、と意識はしっかり持たないと、と思っていて。だから、ミズベリングにしても「めぐりあい」にしても、活動はできる範囲で続けてます。「めぐりあい」も味噌づくりやったり、SUPも4月にこの前やって。5月にもやろうと思ったんだけど…今回のは中止せざるを得なくて。県がダメだって言ってるのにやっちゃうと、協力してくださっている機関に迷惑がかかっちゃうので。そうすると今後の活動も難しくなってきてしまうから。
大竹:それはそうですね。
石川:今回は結構SUPに申し込みあったんですよ。
大竹:おお〜、やっぱり、4月、さんぽの駅の横でやったのよかったですよね。通りすがりでもできそうな、ちょうど良い距離感にテントと乗り付き場があって。
石川:だから痛いんですよ、5月中止になったのは。でも、さっきもメンバーと打ち合わせして、12日が期限だから、それが伸びなければ、それ以降でもう一回計画しようと。6月以降の計画もできてて、例えば毎週木曜日の夕方の時間に「サンセットSUP」ということで。続けないと定着しないよね、と。それで今調整をしています。
大竹:じゃあ、メンバーの皆さん、お仕事終わった後、水着に着替えて(笑)
石川:そうだね(笑)コロナだから人が集まっちゃうと良くない部分はあるけど、人が集まれば、地域の方にお弁当とか出店してもらうこともできるし。小さいかもしれないけど。我々がSUPやって楽しかった!だけではなくて、周りの人にもちょっと良い思いをしてもらえると、さらに良んじゃないの?っていう。それが地域の活性化にもつながれば良いな。

9.コミュニティ支援活動は生業になるのか?

大竹:活動の中で大変だったこと、辛かったことは何ですか?先ほどコロナの話もありましたけど。
石川:まずコロナでしょ。後は…資金ですよね。何だかんだ、綺麗事言っても、先立つものがないと活動できないじゃないですか。資金集めの部分は辛いよね。と言っても、一軒一軒回って募金集めてっていうのもなかなかできないし。使える補助金を申請してみたり。「めぐりあい」の味噌づくりもあるけど、「それを売れば良いじゃない」っていうのもあるけど、いろんな法律に引っかかっちゃってできなかったりするジレンマがある。食品衛生法とか。資金集めは苦労してますね。いつまでも自腹ってわけにもいかないし。営利目的ではないといっても、自腹を続けることは違うから。それもあって法人化の話が出てくるんですよ。法人化してちゃんとした組織から資金を引っ張れる様な体力をつけないといけないと。法人化も結構お金もかかるし。最初はやってる人間で出すしかないんだろうけど。法人化するための下準備も意外と、色々調べたり、知っている人に聞いたり、勉強するのも大変かな。知識になるのは面白いんだけど、「金欠病」が大変かな。
大竹:それは1、2年活動続けてらっしゃったから余計に、色々やってくる中で、継続化させる中で、ってことですよね。
石川:それ以外の、対人間の関わりが大変だ、というのは、そういうのは特にはないけどね。
大竹:どう組織として維持していくかは、どこでも課題ですね。
石川:今は使える補助金でとりあえず凌いで、という感じですけど。あとは、困ったことは、我々の活動のコンセプトを、他者に理解してもらうっていうのが大変だなと。
大竹:賛同を得るために?
石川:そうですね、宣伝をどうしていこうか、というのがあって。ネットもあるけど、中々そういったプラットフォームも使いきれてないな、と思うよね。
大竹:プレーヤーとしてやってると、なかなか手が回らないところではありますよね。
石川:一つの案として、ミズベリングに限って言えば、砂沼未来会議を大元の組織にして、未来会議が砂沼利用の許認可や広報を担って、ミズベリングがそこにぶら下がるアクティビティ班みたいな組織づくりも今案が上がっていて。だから試行錯誤中ではあるけど。「めぐりあい」も単独だと大変であれば、「夢100」の外郭団体みたいな形にするとやりやすいのかなと、考えたり。
大竹:私も「しもつま3高」の会長をやらせていただいているので、組織運営と情報発信と活動、一般利用と、どう仕分けしたら皆やりやすいのかな、と悩んでますけど、整理するの難しいですよね。
石川:難しいよねぇ。そうは言っても、止まるのは簡単なんだけど、もう一回歩み出すときのパワーって、結構使うから。どんな形であれ、今の活動の状態を継続しつつ、組織改革じゃないけど、そうした部分は同時並行でやってくしかないのかな。
大竹:完全停止して再スタートするのは大変ですからね。縮小しても続けた方が確かに良いんだろうな、と思います。
石川:やっぱり、地域のつながりを復活させたい、復活すれば、自分たちの子供たちのためになるって思いもあるけど、何より自分が一番楽しいよね。
大竹:だから、フルタイムで働かれていても、続けられそう、と思ってらっしゃるんですね。
石川:そうです。本当は、ミズベリングや高道祖の活動だけ、専属でできたら良いけど、それで生業にはなる訳ではないので。
大竹:もどかしいですか?本当は専属で作り込みたい?
石川:中途半端になっちゃうんだよね。それでいつの間にか消えちゃったみたいな…それだけは避けたいんですよ。そうは言ってもなかなか…
大竹:働き方は増えているから、複数職業持つ中で、そういうコミュニティ運営の仕事をするのかな、という感じなんですかね。
石川:日本の企業でも、兼業認めないところはまだまだあるし。
大竹:最近、公務員でも兼業OKになったりしてますから、いつかどんな職業でもできる様になるかも。
石川:日本の社会構造や雇用形態を見ていて、難しいところはあるかもしれないけど、それでも、何とかしたいから今の活動はやりたいよね。
大竹:情熱を持ってできることを下妻でできてると感じてらっしゃるから、充実感がありますか?活動を始める前後で充実度も変わりましたか?
石川:やることが増えてるから、忙しいっちゃ忙しいですよね。1週間なんかあっという間に過ぎてっちゃうけど。うん、楽しいよね。他の人がどう思って良いが関係なくって。充実してますよ、活動始める前に比べれば。

大竹:すごく良いお話を聞けました。
石川:こんなんで大丈夫だったかな(笑)
大竹:はい!完璧です!あと、写真撮らなきゃ。
石川:撮られるの慣れてないからなぁ、緊張しちゃうな(笑)。 

(終)

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