夢との間
小さい頃、
軽い夢遊病だった。
わんわん泣きながら居間に降りてくると、
両親にほっぺをペチペチ叩かれる。
目が覚めると、私は泣いていて、
大丈夫?と言われたり、
起きた?と言われたりして、
じゃトイレ行きなさい、
と、おしっこをすると、
すんなり寝る。
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泣きながら二階の子供部屋から一階の居間へ降りた記憶はわたしにはない。
気づくと泣いていて、ほっぺをペチペチされてる。理由が自分でも全く分からない悲しみの余韻だけが残り、悲しいのに誰も慰めてくれない。むしろペチペチである。
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この夢遊癖は、父譲りらしい。
父も子供の頃、よく寝ながら起きてきて、
トイレに行き、おしっこすると寝てたらしい。
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ここまでは遺伝なのだけど、
風邪引いたりすると、夢と現実の境目が本当に分からなかった。
寝込んでいるときに限って、居間から楽しそうなみんなの笑い声が聞こえる。
熱でボーッとして、階段の上に座り、
おとうさーん!
おかあさーん!
〇〇ー!
と、両親や妹を何回も呼ぶ。
何回も呼んでるのに、すぐそこの居間からは誰も出てきてくれなくて、誰も気づいてくれない。
泣きながら呼び続ける。
誰も、誰も、気づいてくれない。
悲しすぎて寂しすぎてその階段に厚い壁を感じてしまい、更に降りられなくなる。
そしてまた床に戻って眠りについた。
看病に来たお母さんに、
どうして誰も返事してくれなかったの?
と聞くが、
全く聞こえなかったと言われた。
夢なのか現実なのか、
その間だったのか。
今でもはっきりと、
呼び続けた感覚がわたしにはある。
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