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記事一覧
はじまりのはじまり『黄泉』
黄泉だ、と節子は思った。
茜色ではない、
金色の夕暮れ時。
その時だけ、
節子は母の魂に触れることができた。
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100文字程度の物語のはじまりたち。
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はじまりのはじまり 『キス』
初めてキスした時のこと、覚えてる?
迂闊にも女にそう聞かれた時、
ケンの頭の中では
ずいぶん昔に忘れ去っていた、
亡き妻とのはじめてのキスがフラッシュバックしたのだった。
今更かよ、
まざまざと細胞に蘇る記憶に圧倒されつつも
ケンは自分に呆れた。
何ヶ月も蓋をされていた何かが
間欠泉のように噴き出し
帰り道の雨の中
ケンは膝から崩れ落ちた。
今更かよ。
はじまりのはじまり 『緑の療養所』
またお願いします、
若い女性がすまなそうな笑顔で、
鉢を置き言った。
都心部にあるにも関わらず、
知る人ぞ知る場所。
お洒落な街並みで、
景観を乱さぬよう精一杯頑張った鉢植え達は、
ここに来て療養する。
そうやって都会の鉢植えは、
うまくローテーションを組むのだ。
毎朝、カフェやヘアサロンのスタッフが、誰かしら軽トラでやって来る。
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『秋空』
薄がけを一枚羽織り、
空も夜の寒さに備えた。
#はじまりのはじまり
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はじまりのはじまり 『夢の鯨』
くすぐったいってあるでしょ。
ぼくのお腹に、よくサメ達がいるじゃない。
あそこだけ実はとっても柔らかいんだ。
だからね、
あそこをツンツンされると
くすぐったくて、
その時が、ぼくは動くのが一番早いんだ。
みんなには内緒ね。
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はじまりのはじまり『距離』
流れが変わるのを告げるかのような、
久方の朝焼けだった。
今日はさとしに連絡してみよう。
かなはそう思った。
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はじまりのはじまり 『象の本音』
ぼくたちが逆立ちする感覚っていうのはさ、
からだが固まったら
うーんって伸びするのと
一緒なのよ。
楽しいことしよう、とか
あそぼう、とかじゃなくて、
もっとふつうで
いつものことなんだよね。
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はじまりのはじまり『朝の秘密の物語』
あなたのために、と
薔薇は精一杯背筋を伸ばし
大切にとっておいた
朝露の最後の一粒を
差し出したのだった。
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はじまりのはじまり 『旅人』
長いこと一人で旅をしていた。
朝焼けと共に目覚め
星空と語り
風に励まされた。
そうしているうちに、
旅人には分からなくなってしまった。
自分と世界の境目
どこからが私で
どこからが世界なのか。
どこからが自分で
どこからが他人なのか。
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はじまりのはじまり 『ミツバチじいさん』
背高く空に伸びたバラたちだけは
花弁が空に還って行くんだ、
そりゃおめぇ、
そん時は
ふぁんたすてぃっくってやつだよ!
全ての花が地面に散るって
どこかで決め込んじゃいないかい?
ミツバチじいさんは、
バラ園を一緒に飛びながら
そんな話をしてくれた。
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はじまりのはじまり 『追悼』
そんな日もあるし、
こんな日もあるのよ。
眠れぬ朝を迎えたケンタに、
母は空を見上げながら言った。
この朝焼けは
一生忘れないんだろうな、
ケンタはそう感じた。
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はじまりのはじまり 『一皿目の思い出』
一目見て、
うちの木だと思った。
皿に再現されていた
紅葉のグラデーションは、
私と弟だけの
特別な思い出だったからだ。
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はじまりのはじまり 『パティシエはいかが』
底のベースをね、
チョコレートクッキーにしてみたんだ
食べてみると奇跡の組み合わせだと思った。
付き合うよ、うん、君と付き合います。
クリスマスの昼下がり、
チョコレートクッキーの下地を作る彼に、
私は見事に落ちたのだった。
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