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映画『ジョジョ・ラビット』が早くも今年No1の傑作だったので語ります。

ジョジョラビットポスター画像①

1月17日から公開された『ジョジョ・ラビット』
先週の土曜日に観てきたが、今年観た映画の中で一番と呼べるほど素晴らしかったので、この場を借りてネタバレ無しで、その魅力を語ろうと思う。

【アカデミー賞常連!安定のFOX SEARCHLIGHT製作!!】

FOXサーチライトライトロゴ

最初に、今作に関しては正直、鑑賞前からある程度クオリティが高いのは分かっていた。
それはアカデミー賞6部門ノミネートという情報は勿論だが、それよりもこの作品がFOX SEARCHLIGHT製作という事の方が大きい。
FOX SEARCHLIGHTといえば、映画好きならば一度は聞いたことのある名前だろう。
『スリー・ビルボード』(2017年)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)のアカデミーを受賞作品をはじめ、『ギフテッド』(2017年)、『犬ヶ島』(2018年)、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年)など、「名作」、「傑作」と呼ばれる作品を続々と生み出してきた映画製作会社だ。FOX SEARCHLIGHTが手掛けたというだけで、この作品の面白さは約束されていたともいえる。

【戦争×ボーイミーツガール!絶妙なバランスで成り立った脚本が素晴らしい】

ジョジョラビット⑥

この作品の魅力の一つは、タイカ・ワイティティ監督による絶妙な脚本だ
タイカ・ワイティティといえば、ヴァンパイアの奇妙な共同生活をユーモラスに描いた『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014年)で一部の映画好きを虜にし、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年)の高評価で、名実ともに世界中で知られるようになった監督。その物語は、軽快なポップさと笑いが物語に散りばめられているのが特徴だ。

シャアハウスウィズヴァンパイア

さて、それでは今作はどうだったかというと、シリアスとコメディのバランス加減が絶妙で素晴らしかった!
通常、戦争を舞台にした作品はどうしてもテーマ的に重く暗くなりがちだ。しかし「深刻な話ほど明るく話そう!」と言わんばかりにタイカ・ワイティティはポップなマジックを作品に振りかけている。

筆者が感心したのは、まずその舞台設定。主人公がヒトラーを信奉する少年という設定も面白いが、第二次大戦下のドイツ軍側の人々が、愛らしくチャーミングに描かれてる事が何よりも意外だったし感心した。
ヒトラーとドイツ軍、というと、作品によっては人間味のない非情な集団として描かれがちだ。だが、今作は彼らを人間味溢れる1人の人間として描くことで、彼らが我々と何ら変わらない市井の人々なのだと気付かさせてくれる(また連合軍側の描き方を見ると、タイカ・ワイティティのどちらかに肩入れしないフェアな視点を感じ取ることができる)

ジョジョラビット場面写真②

戦争映画は、色合いも暗く重めになりがちだが、今作は色合いもとてもカラフル。映画冒頭の場面なんかはウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズキングダム』(2012年)が脳裏をかすめた。

ムーンライズキングダム場面写真①

そして、悲惨な戦争を身をもって経験するのが10歳の少年という点もこの作品が素晴らしい理由の一つ。物語は少年ジョジョが青少年団人ヒトラユーゲントの合宿に参加する所から始まる。
ジョジョはヒトラーに信奉し、ゆくゆくはヒトラーの親友になることを目指す立派なナチス信奉者。物語は、そんな彼が、劇中内で様々な経験をしていくことで戦争の悲惨さを身をもって知る事になるストーリーだ。それを体験するのが10歳の少年というのが素晴らしい。ジョジョは、劇中内で様々な経験をしていくことで戦争の悲惨さを身をもって知る事になるが、子供が理解できるという事は、当然大人にも理解できる。つまり今作は、誰が観ようとも作品の持つメッセージが伝わるからだ。
少しネタバレになってしまうが、後半のある場面、とてもショッキングな事が起きるが、個人的にはあの場面こそが、この映画の素晴らしいところだと思う。それまでのどこかのほほんとしたファンタジックな雰囲気から一転、この作品の舞台が戦争だという事を強烈に観客に見せつける。そして、あの場面をあんな風に撮る監督の手腕にも脱帽した。
そしてラストの何と素晴らしいことか!この作品は戦争映画であるとともに、ジョジョの成長を描く青春映画ともなっているのだ。本当に今作は脚本が素晴らしい。

【監督がヒトラー役!?それぞれのキャストの存在感が素晴らしい】

ジョジョラビット場面写真②

今作を引き立てている魅力の一つがキャスティングの素晴らしさ。まず主人公ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイビスが素晴らしい。彼の父親はアカデミー賞を受賞した『スリービルボード』(2017年)の製作を手掛けたベン・デイビス。本作と同じFOX SEARCHLIGHT製作だ。驚いたのは何と今作がプロとしては映画初出演という事。周りの名だたるキャストに何ら遜色を取らない素晴らしい演技を発揮している。

ジョジョラビット⑦

母親を演じるのは、『アベンジャーズ』シリーズのブラックウィドウ役をはじめ、リュック・ベッソン監督の『LUCY』(2014年)や攻殻機動隊を実写化した『ゴースト・イン・ザシェル』(2017年)が出演作のスカーレット・ヨハンソン。最近ではNetflix製作の『マリッジストーリー』(2019年)の離婚に向かう夫婦を演じた事でも話題になっている。

ジョジョラビット⑧

青少年団人ヒトラユーゲントの教官を務めるクレンツェンドルフ大尉を演じるのは、サム・ロックウェル。『アイアンマン2』(2010年)から『月に囚われた男』(2009年)などメジャーからインディペンデント作品まで幅広く出演し、『スリービルボード』(2017年)では、アカデミー賞だけでなく、ゴールデングローブ賞、全米俳優組合賞などの助演男優賞を受賞している。
今作では軍人でありながら、戦況を察知しどこか達観した様子もある人物を演じている。

ジョジョラビット⑨

そして、ジョジョのイマジナリーフレンドであるヒトラー役を演じるのは何と、タイカ・ワイティティ監督本人!!実はタイカ・ワイティティ、監督だけでなく俳優兼コメディアンとしても活動している。自身の監督作『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014年)にも監督だけでなく出演している。コメディアンらしく、非常に愉快なヒトラーを演じていて、笑いを誘ってくれる。

ジョジョラビット場面写真④

ジョジョの家に匿われることになるユダヤ人の少女エルサを演じるのは、ニュージーランド出身のトーマシン・マッケンジー。Netflix製作の『キング』(2019年)で、今をときめくティモシー・シャラメと共演、今後も新作が控えてる新進気鋭の若手女優だ。
他にも『ピッチパーフェクト』シリーズで主人公の親友を演じたレベル・ウィルソン。クレンツェンドルフ大尉の側近を務めるアルフィー・アレンなどが遺憾なく存在感を発揮している。
このキャスト陣の中でもとくに観る者の印象に残るであろうのが、主人公の唯一の親友ともいえるヨーキーを演じるアーチーイェーツ
この作品内において、どんな時でも変わらない癒しとして存在感を発揮している。ジョジョとヨーキーが出会うたびにハグをするのも凄くキュート!

ジョジョラビット場面写真③

【サントラが欲しくなる、音楽センスがお見事】

劇中に挿入される音楽の数々も素晴らしかった。
面白いのは、選曲はビートルズ、デビットボウイなど時代を敢えて無視したセレクトにしている所だ。これらの曲によって、戦争下が舞台ながら映画全体の雰囲気をポップに仕上げてるのに一役買っている。観終わったらサントラも欲しくなってしまった。

ジョジョラビット⑩

さて、いかがだっただろうか。冒頭でも述べたが、筆者は今年観た作品の中で一番、この作品が胸に刺さった。一月にして、今年のベストに喰い込んでくるのは間違いないと思う。もし、これを読んでる貴方がまだこの作品を観てなくて、観るのを迷ってるなら是非観に行ってほしい!観て後悔しない作品だと自信をもってお薦めする。
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