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ピストン和声 9ピストン「旋律の和声づけ」

ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。

今日は「旋律の和声づけ」についてです。

旋律の和声づけ

旋律の和声づけを行う1つのアプローチとして、調を決めて、和声変化の頻度を決めて、使える和音を考えていく方法があります。

調の決定

調の決定はまずフレーズの終わり方で検討できます。
いろんな終止形や和音がありますが、頻出するⅤーⅠの正格終始とⅤの半終始、3和音のみの条件で考えてみます。

以下のようなフレーズが与えられた時に、考えられる調は、C dur、G dur、e mollの3つになります。

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旋律にシのナチュラルがあるので、フラット系ではありませんし、ドのナチュラルがあり、ファが出てきていないので、#が0個か1個の調に限定されます。そして、最後の終止音にa mollの構成音が含まれていないので、C dur、G dur、e mollが残ります。

和声変化の頻度

調が絞れてくると、次は和声頻度の変化を考えます。
旋律が跳躍している時は、同じ和声を使うことがしばしばあります。ただし、跳躍のうちの1つの音が弱拍にくるなら和声を変えることが多いです。これは一般に2つ目の和音が小節の1拍目にくるようにする和声リズム的な感覚から起こるものです。

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使える和音を考える

次に旋律の各音に対して考えられる潜在的な和音を検討します。
各旋律を根音、第3音、第5音に取る3種類がそれぞれ考えられます。

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最後の和音から考えていきます。ここでは根音位置の配置に限定します。
最後の和音は今回正格終始と半終始に限りますので、ⅥとⅣは削除されます。
正格終始はⅤからの連結ですのでaisの和音づけはⅤになります。ⅦもⅤの代理としてしばしば使用されますが、ここでⅦを選んでしまうと導音が重複してしまうので適切ではありません。
4小節のeでもⅦは後続のⅤと構成音の重複が多く弱い進行なので、ここはⅡかⅣを選ぶ方がより色鮮やかでしょう。
3小節目は旋律が跳躍していることもあるので、ⅠかⅥをで統一した和声づけが良いかもしれません。
2小節目でも頻度の低いⅦと、Ⅱも次のⅠへの平行8度やⅣの場合の弱い進行を防ぐために落とします。
そうすると次のような選択肢が残ります。

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改めて全体をみると、Ⅵを使える機会が3小節目だけであることがわかります。またⅤ−Ⅵの進行は、最後のⅤーⅠと良い対比になりそうです。
そして主和音が最後だけになると調性が緩んでしまうので最初の和音づけをⅠにします。
4小節はⅣとⅡの両方を使えば和声リズムを生み出すことができそうです。その代わり5小節ではⅡを使わずⅤで統一して旋律の跳躍も受け止めましょう。
そうすると最終的には以下のような和声とバスを考えられます。

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あとは内声部は平行5度や8度を気にしながらなるべく滑らかに接続していけばOKです。

対位的なアプローチ

もっと旋律的なアプローチでソプラノ・ラインとバス・ラインを同時に考えて和声づける方法もあります。

根音位置と第1転回形の3和音に限定すると、ソプラノとバスの間で起こりうる音程は、完全8度、完全5度、3度、6度の4種類しかありません。短旋法のⅡやⅢ、Ⅶの根音位置では増減音程も出てきますがかなり稀です。
これらの音程から、可能な和音配置について限定することができます。

ソプラノとバス間が、
5度 → 根音位置
6度 → 第1転回形
8度 → 根音位置か第3音重複の第1転回形
3度 → 根音位置か第1転回形

これを念頭に旋律に対して、いくつかのバス・ラインを考えてみる。

パターンA

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ベースラインは跳躍が多く単調で、根音位置も多そう、主音が5回も使われているので、まさしく2声書法では避けたいバス・ラインです。

パターンB

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主音の回数は減り、それもフレーズの前半だけなので、最後のドミナント和声との対比も効きそうです。2小節目からのベースラインは滑らかですが、ソプラノとの独立性が低く、最後のへ音の反復はⅢーⅤとならざるを得ないので、弱い進行になってしまいます。

パターンC

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2声部の反行も増え、2小節目の跳躍は広がりを与え、そのすぐ後の順次進行でバランスも保てています。

次回

次回は「4−6の和音」に関するお話です。


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