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日本で一番早い朝ごはん

2009年6月28日、私は北海道で朝ごはんを食べている。
はるか彼方の地平線から燃えるような大きな太陽が昇って‥こない。
なんたって深夜2時である。
もちろん外は真っ暗。
そんな時間に焼き魚やスクランブルエッグなどの和食のバイキング。
50人ほどの老若男女が一心不乱に食べている。

これは何も朝市の風景ではない。
「早起きして行けば鮭がもらえるお得なサービス!」ということで、人々が集まったのではない。
あ、それは「早起きはサーモン(三文)の得」‥。

深夜2時の朝食、それはサロマ湖100㎞ウルトラマラソンの朝であった。
北海道の東側、オホーツク海に面して広がるサロマ湖沿いで行われる100㎞マラソン。
スタートは朝5時。
その出場のためにツアーに参加し、前日に羽田を出発、ホテルに前泊していた。
ちなみに前夜の夕食は夕方5時だった。

15年以上前にジョギングを始めた。
中学時代に毎年行われた10㎞走での地獄の苦しみから、絶対に長距離走はやらないと心に決めていたが、元上司の執拗な誘いを断り切れず始めた。
遅いペースで始めたのが良かったのか、週1回5㎞のジョギングが習慣となり、徐々に回数と距離が増え、とうとう100㎞マラソンに出るまでになった。

ジョギングを始めてから様々な知らなかった風景を見るようになった。
近所にきれいな川が流れていたとか、行列のできるうどん屋があったとか。
封鎖した高速道路や、米軍基地での大会もあり、普段入ることができないところを見ることもできた。
とはいえ、まさか深夜2時の朝ごはんの風景に出くわすことになるとは思わなかった。
まあ、自分もそこで食べてその風景のピースとなっているわけだけど。

それにしてもみんな、よく食べる。
いくら前日の夕食が早かったとはいえ、深夜2時に黙々と白米を平らげている。
しかも半分ぐらいの人はご飯をおかわりしている。
そしてほぼ全員、Tシャツに短パン姿で、食べ終えたらすぐに走り出せる格好だ。
マラソンと縁の無い人が見たら、新興宗教かテロ組織の集団と思うのではないだろうか。

さて、他人事のように書いたけど、私も出場し、そして100㎞を12時間30分で完走した。
初めての100㎞完走であった。
これもひとえに深夜2時の朝ごはんのおかげである。
あの日、日本で一番早く朝ごはんを食べただろうと半分本気で思っている。



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